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俺が彼に抱かれているという事をわかった上で抱くなんて。そんな事コイツにできるのか?




今までの弟からはそんな事が可能だとは考えられない。嫉妬深いという言葉が正解かは分からないけれど、俺に誰かの影があるだけで必要の無いヤキモチを焼いてきたのは事実だし。




だから俺が彼にもし、これから先も抱かれることがあるならば、その後で俺の事を普通の感情で抱くなんてコイツには絶対に無理だと思う。











「……とりあえずもう一回言って?」





もう一度聞いたところで今の解釈と変わるとは思えないけれど。それらの話を怒りの感情ではなく淡々と話す事が違和感で。だからもしかしたら俺の捉え方に問題があるのかもしれないと思うのも無理はないだろ。






「別に何回でも言うけどさ。アイツに限らず他の奴に翔くんが抱かれたとしても俺は翔くんの事を抱くのをやめることはしないって話」




「……えー……どーゆー意味?」




「そのままの意味」





随分と落ち着いている姿は今までのコイツからは想像できない。過去、彼のことも含めて俺の事を思う故に熱くなるんだと思っていたのに。





「いや、待て。無理だろ。他のやつに抱かれてんだよ?そんな俺の事お前が抱けるわけねぇだろ」





今の冷静な姿を見て更に思う。多分だけど潔癖な部分があると思う弟に、誰かの次に、なんて無理な話で。今まで女を抱かずに俺だけを抱いてきたのもそれ故だと思うんだけど。






「こないだ抱いたじゃん」




「……そうだけど。あれは別問題って言うか」




「別問題?なに?それじゃ、翔くんはアイツとはヤるけど俺とはもうヤらないって事?抱かせてくんねぇの?それともアイツと切ってくれる?もうしないって言えんの?」






この展開はヤバい。濃くなってきた内容が直ぐに終わるとは思えない。ちゃんと話す必要がある話だからこそ今は





「ごめん、今はマジで時間無いからこの話帰ってきてからでもいい?」





逃げるみたいで申し訳ないと思うけど時間の事は本当で。そしてこの手の事でワガママを言う弟では無いことは分かっている。





「いいよ。じゃ、夜にでも」




「ごめんな」




「いいって」




「遅くなるようなら連絡入れる」




「……アイツの所にいくの?」




「いや、今日はちゃんと帰る。仕事でって意味。……じゃ、行ってくるわ」





ごめんな、ともう一度言ってから慌ただしく出ていく俺を玄関まで見送りに来た弟が





「行ってらっしゃい」




と言って、軽く触れるだけのキスをした。











弟からのキスに動揺してどうする。今まで何回もしたキスはあんなもんじゃなかっただろう。それをあんな軽く唇を付けるだけのキスで動揺するなんて子供じゃあるまいし。





「はぁ……」





エレベーターの中、今されたばかりのキスの事やこの中で彼にされたキスの事など色々と思い出した俺は多分相当な赤面だったと思う。






「おはようございます」





途中乗り込んで来た、顔もほとんど記憶に無いマンションの住民からの挨拶に





「……おはようございます」





小さく挨拶を返すのがやっとだった。