love is 27 | 櫻葉で相櫻な虹のブログ

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胸が締め付けられた。一瞬で。何故今なんだと思うけれど、聞こえてきた声は間違いなく今までのものと同じだった。




幸せだと思った瞬間にまさか聞こえてくるとは思わなかったから驚いているのか。それともその声を聞くのが少し久しぶりだったからなのか。分からないけどいつもよりも鮮明に聞こえたその声が





『守ってやれなくてごめん』





誰のものなのか、何故か今ハッキリと分かってしまった。










『守ってやれなくてごめん。ずっと思ってた。だけどもう翔は大丈夫そうだな』





続いて聞こえてきた声に一気に涙が溢れた。自分の意思とは関係なく。声の主が分かって、なぜ今までわからなかったのかと自分を責めた。




だけどそうか。俺は遮断したんだ。あまりにも辛くて、どうしたら良いのか分からなくて。俺たちを置いて逝ってしまった両親のことを責めることをしたくなかったから。




本当は一番聞きたかった声だったのに。













「翔さんっ??どしたの??大丈夫?どこか痛いの???」




多分俺は声を上げて泣いていたんだろう。起きたばかりの彼の慌て方が尋常じゃない。裸のまま、慌てふためく彼の姿が可笑しくて今度は声を上げて笑う俺の事をきっと気でも狂ったんじゃないかと思っただろう。





「ははっ、何なんだよお前は」



「だって、大人がそんな泣く??大丈夫なの?焦るよ、そりゃ」



「大丈夫じゃねぇな。だけど、大丈夫」




「何それ!意味わかんないよ!痛いとかじゃない??」



「痛てぇよ、体は。お前のせいで」



「え!どこ?どこ痛い??オレのせい?泣くほど痛いの?ごめん!?え??やばい??」



「はは、違う違う。焦りすぎ!痛いのはやり過ぎでって事。だから大丈夫」




「何それ……めちゃくちゃ心配するじゃん。だってそれくらい泣いてるんだよ?翔さん。今も」





この腕に抱きしめられると勘違いしてしまいそうになる。この人は俺の事が大切なんだって。そんな訳ないのに。たまたまお互いに都合の良い相手が見つかっただけなのに。




それでも、そうだとしても全然いい。だって彼とじゃないときっと声の主の事を分かることはなかっただろうから。






「ありがとな」



「??なに?何のお礼?」



「長年の謎が解けたお礼」



「何それ?」



「ははっ!分かんなくて良いよ。とりあえずありがと。お前のおかげで思い出せた」





俺の言葉に、ますます分からないと言う彼に今分かった事を教える必要は無いだろう。重い内容を彼に言っても仕方がない。少しでも言ってしまったら、俺が勝手に背負ってたプレッシャーや、自分で気付かないようにしていた辛さまで全部話してしまいそうで。






「話したくない?」



「そういうわけじゃないけど、聞いてもつまんねぇ話だから」





今なら全部を曝け出してしまいそうで怖いんだ。出会って間もない、友達でも恋人でも無い人間の事を頼ってしまいそうで。





「つまらないかどうかは聞かなきゃ分からない。でも、翔さんが今言いたくないのは何となくわかった」






逸らそうとする俺に、誰にでも言いたくないことはあるもんね、と彼が言う。それはやっぱり思い切り優しくて暖かい。モデルなんだという事以外のほとんどを知らないのに。どうしても包まれていたくなってしまうのは自分が弱いからなのか。





「きっと聞いても困る話だからさ。ってか、そろそろ起きるわ。帰らなきゃさすがにマズイし」




やらなければいけない仕事のことはどうでもよかった。いや、まずいけど。それよりもこの心地の良い空間から離れたくなかった。だけど、俺たちはそんな関係ではない。やったら終わり。





そう思って、ベッドから無理やりに出ようとした俺に





「……重くても大丈夫だからいつか教えて?今じゃなくて良いから。オレのことが信用が出来るやつだって翔さんが思った時にで良いから、さ」





やっぱりものすごく優しく俺をまっすぐに見て言った一言は、初めて「今」以降の俺たちに「次回」があるかもしれないと思える様な言葉だった。