昨日和菓子屋さんの前で柏餅ののぼりを見ました。柏餅の季節です。

 

去年気に入ったチラシ↓

このコピーが素晴らしい\(^o^)/

 

端午の節句のお菓子と言えば柏餅ですが、柏餅について知るほどに、季節限定ではなく1年中あればいいのに、と考えています。

 

それはなぜか?

 

柏の葉には子孫繁栄の願いが込められているといいます。だからこそ端午の節句に添えられているわけです。

 

しかし柏の葉といえば、新嘗祭で天皇陛下が神饌の器に使用している葉っぱです。神様へお供えするものを神饌といいますが、その神饌は古代の食事そのものとなっています。そしてその神饌が盛り付けられる容器には、柏の葉を何枚も重ねて作られた平皿「平手(ひらで)」、小鉢型の「窪手(くぼて)」、またお酒を供へる「平居瓶(ひらいかめ)」などが使用されます。

 

『旧儀式図画帖』の神饌図

 

 

以上の写真のAが平手、Bが窪手で両方とも柏の葉で作られたもの。國學院大學の冊子から。
写真の模型は國學院大學内の美術館にあるもの。トングのような形のものは古来の箸です。


上記の写真の柏の器は、國學院大學の博物館で常時展示されていますので実際に確認することが出来ます。私は近くに行くと必ず覗いています。なおここの博物館は無料となっています。それだけ多くの人に知ってほしいということではないかと思います。運営を助ける意味でもグッズを購入するようにしています。

 

 

 

新嘗祭のような大切なお祭りには最上最高のものを使用します。つまりこのお祭りが始められた時、この神饌の器が当時最上最高の器であった事を意味します。ということはこれは陶器の器ができる以前から続けられてきたお祭りであったということなのでしょう。日本で最古の土器といえば縄文土器ですが、縄文土器の草創期は16000年前とされています。つまりそれ以上前からつづけられてきたのが宮中祭祀でありそれを司られた御歴代の天皇ということでしょうか。

 

神話とは、神話になってしまうほどの大昔から続けれてきた、いつから始まったかわからない昔から始まったことを意味します。新嘗祭は、天照大神もなさっていたお祭りであり、それを引き継ぎ行われているのが御歴代の天皇です。形としては神武天皇から始まる天皇の歴史ですが、神武天皇が突然登場したわけではなく、神武天皇以前の神話の時代があります。その神話の時代は神話となってしまうほど長く続いてきたということを表しており、それを伝え示しているのが新嘗祭で使用される器としての柏の葉ということです。


そうした日本の歴史の古さを物語っているのが、柏の葉の器なのです。

 

民のかまどで有名な仁徳天皇の皇后である磐之媛は嫉妬深かったことで知られています。その有名な逸話の一つに柏の葉が登場します。


それは磐之媛が豊楽の宴、つまり新嘗祭の後の宴のため、料理を盛るための御綱柏の葉を採りに紀伊の国へ行っている留守中に、仁徳天皇が八田皇女を宮中に迎えたことを知って採取した御綱柏の葉を全て海に投げ捨て天皇の元へ帰らなかったという話です。


これは今の感覚で見ると、どうみても仁徳天皇の分が悪いです。しかし一方で、仁徳天皇は磐之媛を大切にされていて、磐之媛に皇子三人を皇位に付けてほしいと言われ、その約束を守ってその三皇子が後に全員皇位に就くことになります。


そしてなによりも、この逸話は皇后自らが宴の用意をされたことと、その宴でも御綱柏の葉を器として使用していたことを伝えています。仁徳天皇の時代には、土器の器が当たり前にあったでしょうが宴では神饌と同じく柏の葉を使用されていたこともわかります。


柏餅を食べる時、新嘗祭で天皇陛下が使用されている神様の器と同じもので私達も餅を食していることになります。柏餅というのは江戸時代にできたお菓子ですが、こうしたお菓子ができたおかげで、天皇陛下が神様と一緒に食事をする疑似体験が現在できていることになります。また柏の葉の香りをかぐとき、新嘗祭で天皇陛下が供する神饌の香も共有することができます。さらに子孫繁栄の願いとは、天皇陛下が民安かれ、国安かれと祈られることとも共通します。

 

上記したように、柏の葉は新芽が育つまで古い葉が落ちないことから、家計が途切れないとして子孫繁栄の縁起がかつがれたお菓子として江戸時代に生まれたといいますが、天皇がお祭りを続けてきたことが皇室、ひいては日本が続いてきたことを考えると、こうしたお祭りに使われて長く続いてきた皇室にあやかる和菓子でもあることがわかります。もしかしたら、本来はこちらの意味だったけれども、江戸時代ということもあって柏の葉が落ちないことを前面に出したということもあるのかもしれない、と考えています。

 

私は子供の頃、柏餅の独特の臭いが嫌で好きではありませんでした。大人となった今、柏餅の葉は臭うものではなく香るものと変わり、古を語り、天皇陛下の祈りを共有させていただくお菓子となりました。

 

柏餅がお店に並ぶ時期が長くなればなるほど、そうした共有する時間も長くなることとなります。この時期、柏餅を食べるとき、私たちは古から続く祭りの疑似体験をして、また古の人達の体験を時を超えて共有しているのではないか、と思うのです。

 

せっかくのこの季節、柏餅を子供の日だけのお菓子だけにしておくのはもったいないです。

 

なお、以前柏餅の漢字は、槲の字が正式には正しいとツィートされている方がいました。「槲」ってなんだ?と思ったら「かしわ」でした。知らない漢字もまだまだたくさんあります。

 

天照大御神、仁徳天皇については記紀に書かれています。

 

 

 

 

 


柏の葉の収穫から始まる柏餅の作り方↓

樹木医の柏の葉の説明から始まる柏餅づくり↓

 

 

 

 

 

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