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 トイレから戻ってきた花は二人がいなくなっていることに気がついて唖然となった。

 え? 何で? 何でいないの?

 きょろきょろと周囲を見渡す花。しかし二人の姿はどこにもない。まずい。完全に見失ってしまった。花は急いでカフェを出ると、まだ二人が行っていない屋上エリアの奥のコーナーに小走りで移動する。
 そこにはペンギンやアシカがいて、雪の中でも元気に水の中を泳いだりはしゃいだりしていたが、二人の姿はどこにもなかった。

 まずい。やってしまった。

 花は頭を抱える。完全に油断していた。建物内での尾行は難しいってわかっていたのに……。なんてバカなんだろう、私は。

 花はとりあえず近くにあった白いパラソルの下の椅子に座って気持ちを落ち着かせることにした。

 ………落ち着け。落ち着け私。まずは冷静になって考えるんだ。
 
 もしこのコーナーに二人が立ち寄ったのなら、いくらなんでも移動するのが早すぎる。ペンギンとかかわいいし虹咲あざりなんて凹んでいたのが嘘のようにすごくはしゃぎそうな場所だ。こんなに早くはいなくならないと思う。つまり二人はこのコーナーに立ち寄っていない……。とすると、二人はもう出口から水族館の外に出ている?

 可能性は高い。いや、それしかない。

 そう結論づけた花は椅子から立ち上がると、そのまま出口に向かいカウンターを通って水族館の外に出た。花はすぐに目の前にあるエレベーターを確認したが、そこにも二人はいなかった。もう下の階に向かってしまったのだろう。
  幸い、お昼の時間なので人は少なく、エレベーターの前には人がほとんどいなかったので、花はすぐにエレベーターに乗って、一階フロアまで降りて行くことができた。

 その間、花はずっとそわそわしていた。

 ああ、なんで私はアイスなんて食べてしまったのだろう? と花は思う。
 虹咲あざりが凹んでいるのを見て、気分よくなってる場合じゃなかった。きっと私がトイレに入っているときにすれ違ったんだ。

 ああ、私のばか。ばか、ばか、ばか。

 チーン、という音でエレベーターの扉が開くと、花は周囲の風景には目もくれず建物の出口に向かって早足で歩いて行った。花が向かっているのは駅だ。

 一度こんな風に見失ってしまったら、再び二人を見つけることはかなり難しい。それは花にもよくわかっていた。でも、花にはとびっきりのヒントがあったのだ。
 
 それはまだ、二人がお昼ごはんを食べていないということだ。
 
 そして虹咲あざりのお弁当が残っているということを考えると、真冬がそれをほったらかしにして違う食事をとるわけがないことも花には理解できていた。北風真冬とはそういう男の子なのだ。

 だから二人はどこかにお弁当を食べに移動したに違いない。
 
 それが花の考えた推測だった。

 それがどこかまではさすがにわからないけど、この建物の周辺でないことは予測できた。なぜなら、あざりがお弁当を作ってきたという会話を聞いたあとで、花はすぐにスマートフォンで情報を集め、私ならどうやって北風くんにお弁当を食べさせるかという状況シュミレーションすでに頭の中で行っていたからだ。その結果、このあたりで雰囲気よくお弁当を食べることのできる場所なんてないということを花は知っていた。

 だから駅に行く。二人は絶対にどこかに移動する。そこを捕まえるんだ。

 花は走る。空から降る雪がすごく邪魔だった。