197 | amesekaiのブログ

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「涙はどうなの?」

 ぼくは涙の顔を見る。

「どうって何が?」

 涙もぼくの顔を見る。

「さっきからぼくのことや真冬のことだかりじゃないか。涙はどうなの?将来はどんな風になりたいの?」

 涙のことだから、きっと何にも考えてないんだろうなとぼくは予想していた。しかし、それはどうやら間違いだったようだ。涙は意味ありげな顔をしてぼくを見つめる。

「ちゃんと考えてるよ」

「え?本当?」

「うん」

「それって何?涙は将来、何になるの?」

 涙はふふっと笑う。

「お嫁さん」

「え?」

「わたし、将来、真冬のお嫁さんになるの。それが、わたしの将来の夢なの」

 ぼくの胸がズキンと傷んだ。

「あざり、どうかしたの?」

「え?いや、なんでもないよ」

 ぼくは頑張って笑顔を作ろうと努力する。でも、どうやら涙の表情から判断すると、ぼくの努力は失敗に終わったようだ。

「あざり?」

 そのとき、ドンドン、とドアを叩くことがした。

「涙、あざり。そこにいるの?いたら返事してくれない?」

 真冬の声が聞こえる。

 ぼくの予想通り、真冬は涙を助けに一階までやってきたようだ。

 怖がりのくせに。

「あざり。真冬が来てくれたみたいだよ」

「うん。これでようやくこの部屋から出られるね」

 ぼくと涙は立ち上がってドアの方に歩いていく。

 手が震える。

 足がもたついている。

 だらしない。

 本当にだらしないな、ぼくは。

 涙がドア越しに真冬と何か会話をしている。

 どうやら涙はこの部屋を真冬に見られたくないらしく、真冬をドア越しに説得しているようだった。

 その間、ぼくは意識を自分の内側に集中する。

 もうすぐ、真冬がドアを開けてぼくたちの前にやってくる。

 そのときまでに、ぼくは、いつものぼくに戻っていないといけないんだ。

 ぼくは視界を部屋の内側に向けた。

 そうやって、なるべく涙や真冬の存在を一時的にぼくの世界から遮断する。

 すると、ぼくの目が床の上の魔法陣を捉えた。

 いや、魔法陣がぼくの目を捉えたのかもしれない。

 ぼくは魔法陣を見て驚いた。

 本が、開いている?

 いつの間にか、床の上で本が両開きになっている。あの、ぐるぐる巻きにされたリボンは、どこにも見当たらない。

 ぼくの目は、どうしても、その本の開かれたページから、目をそらすことができなくなってしまった。

 そして、ぼくの前にとても深い闇がその姿を現した。

 ぼくはその闇の中に落ちていく。

 
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