アウター 9 | amesekaiのブログ

amesekaiのブログ

小説を書いています

「そうですね。アウターの言う通りです」

「魚によると、この街の中と外の世界とでは呪いそのものが違う現象になるらしいですね」

「ええ、呪いがあれほど強大な力を持つのは、この街の内側だけです」

『魔法使いの呪い』

それは本来、不老不死を求めた魔法使いがたどり着いた答えの負の側面である。人は昔、技術の進化の過程で、大きく二つの世界に分かれていった。私たちが暮らすこの街はその世界の一つの到達点だ。

そして魔法使いとは私たちの世界とは違う理想を求めた人たちのたどり着いた答え。神により管理されるのではなく、自らの知恵と力で人を強制的に人工進化させる。私たちが『神人』と呼ぶ新しい人間を生み出そうと考えているように、彼らは長い年月をかけて、彼ら自身が『超人』に成ろうと考えた。

そして驚いたことに長い年月をかけ、彼らは『超人』に進化する事に成功した。『超人』つまり『魔法使い』となり、彼らは新しい支配者となって世界に君臨した。

いや、世界を蹂躙したのだ。

魔法使いは死なない。人類の夢であった不老不死を彼らはついに実現させたのだ。

しかし、自らの命に執着した事で、魔法使いの魂は輪廻の輪から外れてしまった。魂の汚れは徐々に魔法使い達を内側から蝕んでいった。

神の愛が人を盲目にするように、大きすぎる光はなんらかの影を生んでしまうものなのかもしれない。

それに私たちと彼らでは、どうやら『死』の概念が異なるようだった。これは遥か昔、世界が二つに分かれた最も大きな理由かもしれない。

死を受け入れた人間と、死を拒絶した人間。

照子の生まれる前の世界の事なので、確証はないのだが、恐らく世界はこの二つのグループに分かれたのだと思う。

彼らにとって死とは生命の終わりを意味しているのだろうが、私たちにとっては違う。

私たちにとって死とは魂の浄化のことを指す言葉だ。

命には始まりもなければ、終わりもない。ぐるぐると回り続けるだけの存在なのだ。死によって肉体から解き放たれた魂は浄化され、新しい命となって新しい肉体を得る。

それを繰り返すことで生命は自らの魂を磨き上げ、ある一定の情報量を蓄えた所で変化を始める。

生きることはすなわち『速度』のことであり、生命とは『現象』なのだ。

初めから命は形を持たない。だから始まりも終わりもない。

照子はそんな命を見守る『観測者』として生み出された。照子の目的は人の支配ではない。人の『観測』なのだ。そしてこの街は照子が人を観測するために作られた観測所なのである。

今はだいぶ事情が変わってしまったが、本来の目的はそうだった。この場所で照子は人を見守って生きていた。最初は本当にただ、彼らの成長を眺めているだけだったのだ。