熱海殺人事件 バトルロイヤル50's/紀伊國屋ホール(8/19.8/20) | That's the way I am

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人生の晩年まで、あとどれくらい?
「ああ、それなりに楽しんだわね」と後々思い出せるように。



※アメンバー記事は、個人的極秘記録です。申請は受けていません。

熱海殺人事件』とは

 作家つかこうへいの代表作。初演は1973年・文学座、1974年・岸田國士戯曲賞を受賞。数多くの役者が繰り返し演じ、1990年からは色んなバージョンが誕生。日本の演劇史上、最も愛され上演され続けている作品(推定累計8,500ステージ)である。・・・らしい。

(公式から抜粋)

 

 

紀伊國屋で熱海殺人事件を観る! それは当時、役者を目指す若者の憧れだったそうだ。

判る

役者・多和田任益さんのファンならば、いつか紀伊國屋で熱海殺人事件を観劇せねば

そう、いつかは・・・

 

でも、いつかなんて儚い言葉だった。

「今しかない」「あの時しかなかった」 

これらを痛感させた舞台だ

紀伊國屋ホールの板に乗ってもらい、無事に千秋楽の幕を下ろしてもらう。

これに3年懸けた、ファンにとっても悲願の舞台だったりする。

(ちょっと大袈裟?)

 

席は両日ともFCで取りました。

前楽は5列目、千秋楽は13列目 どちらもセンターブロック(有難やお願い

 

 

 

たった2回しか観てないので、勘違い・記憶違いが有り過ぎる感想になります。

相変わらずの自己解釈も多いです。

ネタバレも有るのでご注意下さい

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * *

 

バレエ音楽『白鳥の湖』が大音量で流れ始める

このメロディ 何か衝撃が起こる前触れだハッ 

昭和生まれの私は知っている

上がりだした幕と舞台の隙間から、大量のドライアイスの煙が見える

中央に男が居る

彼こそが、木村伝兵衛刑事部長! 

 

っていうか誰ッ!?

 

刑事なのに、青いアイシャドウの厚化粧

一枚の写真を睨みつけながら、電話で何やら怒鳴りまくっている(アレ?沢田研二に見えてきた?)

 

もはや爆音に近い白鳥の湖

ヤバイヤバイあせる 何かが始まるよ、これ! 

一気に引きずり込まれる

 

突如、音楽が止んで

割り込むように現れたのが新人刑事・熊田留吉。

一見、熱血刑事に見えたけど、偽装してでも伸し上がろうとする野心家。

次に部下の婦人警官・水野朋子

綺麗でスタイルの抜群なんだけど、実は木村伝兵衛の愛人(恋人)

 

この二人、熊田の前でも平気でイチャつく始末。(わきまえてー汗

木村伝兵衛が、富山から熊田刑事を呼んだ理由は、ただ一つ。熱海の海岸で起こった殺人事件の為だった

 

と、ここで登場人物が全員紹介されるんですが

容疑者・大山金太郎(多和ちゃん)が客席中央・下手から現れるんですねッ マイクを持ってッ

歌うはタッキー&翼の夢物語ですよ(Dさーんカラオケ

どおりで多和ちゃんファンが下手通路席を所望する訳だわおいで そりゃ受け取りたい赤薔薇

プロレスの選手入場かしら? タイトルがバトルロイヤルドンッなだけに?

テンション爆上がりでした

 

さあ、役者が揃いました

舞台からは

我こそは、この芝居の覇者になるグー って勢いが伝わってきます

バトル開始なんである

 

 

被害者は山口アイ子、熱海の海岸で絞殺死体で発見された。

長崎の五島から(おそらく集団就職)上京した10代の女工

容疑者は、同郷で幼馴染の職工・大山金太郎。

 

犯行動機は、痴情のもつれ

被害者は、地味なブス

容疑者は、ゼニガメみたいな青年(可愛いのにw)

凶器は、観光客が落としたらしい浴衣の帯

これで決定上差し ・・・・でも?

 

「こんな地味な事件を回してくるんじゃねぇよむかっ

 

ド派手な大事件にしたいと言い出す木村伝兵衛

ここで手柄を上げて、成り上がりたい熊田刑事

プロポーズしてこない伝兵衛に見切りを付けたい婦人警官の水野

 

三人がギャアギャア揉めている間、興味無さそうに眼鏡を拭いたり、靴ひもを結び直す大山金太郎

だけど、時折 ハッとした表情を浮かべるんですよ。

例えば、木村伝兵衛が自分の妹を想い「オレのせいで嫁に行き遅れる」と嘆いた時とか。

 

事情聴取を任せられた熊田刑事

本庁に良いところを見せたいけど、伝兵衛が煽ってくるせいで、どんどん危ない方向にヒートアップ叫び

演じたのは、高橋龍輝くん。

一言で表すなら「パワー型」(見た目が富山県より埼玉県って感じだけどニコニコ でも宮城県産)

熱量が計り知れなかったメラメラ 表現したい熊田がハッキリしてて説得力がありました。

 

翌日の熊田役は三浦海里さんでしたが、私の前列右側にBIGな男性がお座りになられまして汗

見事に視界を塞がれて上手が見れなかったんですよ 三浦さんの声しか聞こえない状態でした叫び

でも仕方無いです、たぶん男性も席を選択出来なかったと思うんで! 

中央と下手は無事だったんで! 多和ちゃんは上手少なかったんで! 

何なら私の席に三浦さんファンが座らなくて良かった~と思いました。

そんな事情により三浦さんの感想は省略します。

 

 

そこへ、熊田の元・恋人が富山県で自殺未遂ナイフを起こしたとの一報が入ります。

上司の娘との結婚話が持ち上がっている熊田でしたが、ショックを受けて富山に帰ろうとします。

でも、伝兵衛は熊田が帰る事を許しません。

元・恋人ユキエが自殺するように、伝兵衛が裏で糸を引いたのだと言い放ちます

さらに、隠していた出生を暴露して、彼の精神を追い込んでいきます。

 

もはや、秩序も道理も失った取調室

 

それまで傍観してた金太郎が「もう自分が犯人でいいから、熊田を帰らせてくれ!」と伝兵衛に懇願します。

だけど伝兵衛はそれをも拒否。

調書を取っていた水野も、金太郎の自供に納得しません。

 

どうにかして自分達好みの自供をさせたーーーい手

警官三人にグチャグチャにされて、すでにHPゼロ状態魂の金太郎。ベソを搔きながら、事件当日のアイ子との海岸デートを再現し始めます。

 

 

「とても楽しかったことをおぼえています。でもぼくは不安でした。

 海を見てしまったら、何かが終わってしまうんじゃないかと」

 

膝を抱えて、ポツポツと語る金太郎

 

風に消されてしまう煙草の火が不思議と目に焼き付いているのに、背中を丸くして風を遮ってくれたアイ子の事は、どうしても思い出せないのだと。

 

「わたしたちは、あれほど幸せだったのに。

 とても悲しかったのは、2人が話すことは、つらい職場や寮生活の嫌なことしか無いのです」

 

 

この場面ですね

夕焼けに染まった夕凪の海

多和田さんの潤んだ瞳に、金色の光を反射する波が見えました。私には、本当に見えたんですよ。

 

「アイちゃん・・・・アイちゃん!」(泣きじゃくる金太郎泣)

「 ナニー?目 」

 

アイ子役の水野が、ヘン顔で返します。ガーン

 

そう!(たぶん) 

水野は、金太郎の創ったお芝居に気付いてるんですよね。(たぶん)

シラケた調子で詰め寄るんです。

「愛してる人を殺す凶器が、落ちてた浴衣の紐ってのが安直すぎる 」

 

水野朋子、カッコいいなぁって思いました。

唯一?体を張って捜査してるし、惚れた人との愛に悩んで、でも自分の未来を大切に出来る女性。

演じたのは、佐々木ありささん。

清楚系美人の実力派。冒頭の役者紹介で、情念に頬を染めて瞳を潤ませる、これを瞬時に体現しちゃうんだもんなぁ。

 

 

木村伝兵衛は・・・変人なので。それも自覚のある変人なのでドクロ

家族以外を愛する事は勇気がいるのかも。

こちらも、水野とのデートを再現しちゃう。

 

ここの場面、アンサンブルやダブルキャスト総出で、力いっぱい遊び倒してるんです。

特別出演の馬場さんも王子様になってくれたし

千秋楽では、高橋龍輝くんがテニミュ再現で客席が沸いたし気づき(怒られろw)

 

他にも、懐かしのラッツ&スター星が始まったり、

時事ネタで鬼滅の刃・刀鍛冶の里編が始まったり(知らない人は置いてけぼり笑い

そうそう!

特別出演?の久保田創さんによる「ちびくろサンボ」と「つかこうへいネタ」には、殺人事件を忘れて、涙が出る程大笑いしました。当時を知る貴重なお話なので、形に残しておきたいよね。

 

「只今、JALで移動中飛行機」、これは風間杜夫さんのフューチャー。

 

 

そして、物語は最終場面に入ります。

あの日、熱海の海岸で、金太郎とアイ子に何が起こったのか?自白が再開されます。

 

「5年間、アイちゃんの事を忘れた事がなかった」

 

でも、それは愛情ゆえじゃない

私も昭和にド田舎で生まれ育ちました。

だから、百姓を嫌うアイ子の気持ちが判る気がします。そして、金太郎の身勝手な思い込みも想像できます。

都会に気遅れする金太郎の気持ちも。

見栄を張りたいアイ子の気持ちも。

 

「百姓!金ちゃんは百姓じゃ!」

この言葉、私には

「私の事を見下げるな!」って怒りに聞こえました。

 

あの時代、「百姓」という言葉は、無知で貧しい底辺の象徴だったと思います。

(今、農家を百姓とは言いませんよね。この数十年で改革した農業家の皆さんは凄い。)

 

金太郎は、嫉妬にかられて首を絞めたんじゃない

屈辱と失望で、発作的に殺してしまった

最初に木村伝兵衛が嘆いた「つまらない理由による、つまらない事件」ってのが真実。

 

自分が罪人だと理解できた金太郎。

木村伝兵衛による総仕上げです。

 

チャイコフスキーはメロディの天才である

 

鎧のように身にまとっていたモノを剥がされた金太郎。

最初の開き直った姿は無く、そこには、ただ罪に怯え、恐怖に叫ぶ姿のみ。

 

ここの多和田さん、凄まじかった

(たぶん)シェー!とかやってるんですけど、観てるコッチは笑えないんですよ

 

伝兵衛に取りすがり、媚び、へつらい、ひたすら助けを請う

伝兵衛は、まるでメフィストのような 閻魔様のような不敵さで足元の金太郎を眺める

 

ああ、木村伝兵衛よ

貴方、これを味わうために警察にいるんですね?

 

熊田が、必死に「もうこれ以上は辞めてくれ、追い詰めないでくれ」と伝兵衛から引きはがす。

 

「俺を立てろ、俺も立てられているうちは無茶はしねえよ」

 

魔王の慈悲みたいな言い回しです

 

不遜で乱暴な態度だったけど、冒頭から木村伝兵衛は事件の本質を語ってた。

木村伝兵衛。天才ゆえの奇人。

敢えて「嫁に行きそびれる妹」の話をしたのも、金太郎からあの願い事を引き出す為だったのかも?

 

シャーロックホームズに似てる。コッチのシャーロックに。

チェリーな点も一緒

 

木村伝兵衛、演じたのは、荒井敦史さん。見事でした。他の三人が「主役」になり得る熱量を出しても、荒井さんは乱れない。今風でいう所の領域展開が頑丈でした(伝われあせる

そして全公演、本当にお疲れ様でした。

 

 

一流の罪人に生まれ変わった金太郎

未来を育むために出て行った水野(謎その①)

自分に見合った人生に気付き、富山に帰る熊田(謎その②)

三人を愛情深く見送る木村伝兵衛を見て、

最初はクセ強すぎて受け入れにくかったのに、最後はちょっと愛おしく思いました。

 

 

 

想像していたより、ずっとずっと面白かったですビックリマーク

四役とも其々の見せ場が多いので、下手すれば、誰が主人公になってもおかしくない。

同じ役を演じても、演者によって随分と変わるんだろうなあ。

きっと、それが許される作品なのでしょう。

なにしろ数通りのバージョンも生まれている自由さ。

そりゃ、演じたくなるよね 

主役経験済みレベルの人なら「自分なら、こう演じる」って、客席で熱くなるかも。

過去に大山金太郎役を演じた鳥越さんが、観劇後に「熱海、やりてえええええDASH! 」って叫んでました。

多和ちゃんの金太郎が、誰かを触発していれば嬉しいな音譜

 

そう 多和ちゃんの役が木村伝兵衛じゃないと知った時。

実はチョットがっかりしたんですよ。

中止になったのが伝兵衛役だったし、初めて観るなら、やっぱり伝兵衛が観たかった。

でも、今は 最初が 大山金太郎 でラッキー音譜 と心から喜んでます。

舞台上の多和ちゃん、カッコ良かったラブラブ

熱海を演じる俺を見ろ!って感じで、存在感もあったし  

独白シーンの長台詞は、淀みなくて流石だったしグッ

得体の知れない青年、朴訥とした純文学風の青年、狂気と恐怖に満ちた青年、次々と変化して目が離せなかった目

私の推しは、なんて素晴らしい役者なんだろう乙女のトキメキと誇らしかった

 

これ以上書いたら、もう惚気日記ですねあせる

 

あと人生初めての千秋楽の観劇赤薔薇でした

イイですね飛び出すハート 千秋楽 

何度も何度もカーテンコールをして、やり切った感の役者さん達と一緒に、ひとつの作品の閉幕をお見送りする

余韻にひたれました乙女のトキメキ

 

 

では最後に、謎はてなマークに思った2点

「水野は静岡に旅立ったのか?」

流れ的には旅立ってるけど、でもズボンからタイトスカートに着替えてる。しかもヒール付きパンプス。あれでバイクには乗れないよね?本当にタバコを買いに行っただけ?

「長官に娘は居ない。居るのはボンクラ息子だけ」

じゃあ熊田が結婚する予定だった娘とは? すでに何度かデートしてるから、女性は実在しているんだよね。もしかして長官の愛人を押し付けられそうになってた?

 

これらを含めて、私の考察をつかこうへい氏に聞いてみたい

たぶん、目を細めてゴニョゴニョと「それより、煙草を吸える場所はないの?」って言いそうだけど

 

 

 

千秋楽の挨拶で

多和ちゃんが「今回、熱海を演じられて、ようやく気持ちの区切りが出来た」と感慨深く挨拶してて

「でも、すぐにモンテやりたい!」って間髪入れずに宣言したから、もうねえ笑

嬉しくて泣けたよねw

 

もちろん、期待して待っています