第十七章 三月 私の十年、草原、その他
十九歳から二十歳になる時、わたしは悲しみにくれました。
歳をとると、感性が鈍くなる。
うつくしさも、熱い想いも失われる。
それらは、失われつづけ、汚れつづけ、わたしはただ、下っていく。
そんなことを、わたしはわたしの若く単純な感性で考えていたのです。
そして、そうやって老いていき、死へ近づいていくことが、心から恐ろしくもあったのでした。
若いことは、良いこと。
高校生の頃、「十八歳はもうおばさん」と嗤(わら)った。
そんな自分たちの文化を、わたしはずるずると後ろにひきずっていました。
若いほどいい。
十八歳より十七歳。
十五歳より十三歳。
え、ワカイほどイイの?
十歳より五歳。
ワカイホド、ミライガ アルノ?
サキノ、 タノシミガ アルノ?
それならゼロ歳の赤ん坊がいちばんいい。
ではいっそ、生まれなければいい。
いちばんわかいままで。
そこまで考えると、わたしは混乱しました。
混乱しながら、毎日の食べものを買いにスーパーマーケットへ行くと、わたしよりもはるかに歳とった人々があたりまえに歩き、幸福そうに笑っている。
それが、わたしにはとても不思議で、うらやましかったのです。
