「第II章 スペースマネジメント II-2 店内環境」について、前回は清掃と照明をやりました。
今日はその続きで、色について。
色が人間の心理に与える影響ということで、色彩心理とかカラーセラピーという言葉を聞いたことがある方もおられると思います。
わたしはまったく予備知識はなかったのですが、自分も人間だし、自分の感覚でわかるだろう、と思っていました。
が、さにあらず。
ここ、結構、難しいです。
まず1問目。
寒色系の特徴として、誤っているものを選びなさい
1.気分を落ち着かせる
2.緊張感をやわらげる
3.時間経過を早く感じさせる
4.冷たく、暗い印象である
色によって時間経過の感覚も変わってくる、というのは初めて知りました。
テキストには、
◆寒色系:時間経過を遅く感じさせる
◆暖色系:時間経過を早く感じさせる
とだけ書かれていて、とても不親切。
なぜ違うのか、どのくらい違うのか、ちっともわかりません。
自分自身の感覚でもよくわからないので、調べてみました。
ネットでは「暖色系では30分が1時間に、寒色系では逆に1時間が30分に感じる」とか、あるいは「赤色の会議室では1時間の会議が4-50分に、青色の会議室では7-80分に感じる」という話がでていましたが、根拠は不明。
研究者の論文では、5分に対して±13秒の誤差という研究結果がありましたが、このくらいの差ではワーワーいうほどのこともありませんねぇ。
結局、納得のいく理由には出会えませんでした。
でも、そういえば、有名牛丼チェーンの内装がオレンジ色なのは客の回転を速くするため、という話を大昔に聞いたことがあります。
真偽や効果のほどは別にして、試験対策としては、これを思い出せば正解にたどり着けそうです。つまり、
時間経過を早く感じさせるのはオレンジ=暖色系
ということで、誤っているのは選択肢の3でした。
サロンではたとえば待合室を寒色系にして、待たされる時間を短く感じさせる、というのはいいかもしれませんね。
<スタバ京都岡崎店内>
では2問目。
暖色系の特徴として、誤っているものを選びなさい
・時間経過を早く感じさせる
・実際の位置より遠くにあるように見える
・陽気な気分、易しさや開放感を与える
・食欲を増進させる
色によっては、部屋の広さや距離感も変わってくるそうです。
背景よりも飛び出してより近くにあるように見える色が「進出色」、逆に奥の方に後退して感じられる色が「後退色」。一般に、赤・オレンジ・黄色などの暖色系は進出色で、青・緑・茶色など寒色系は後退色です。
この例はわかりやすくて、たしかに寒色系の方が小さく、暖色系の方が大きく見えます。
進出色は「膨張色」ともいうそうで、そういえば、太って見える洋服の色、っていうのも確かにありますね。
テキストには、
進出色:暖色系で彩度の高い色。実際の位置より近くにあるように見える(大きく感じる)
後退色:寒色系で彩度の低い色。、実際の位置よりも遠くにあるように見える(小さく感じる)
と書かれています。
彩度というのは、色の鮮やかさのこと。
彩度が高い色はより純色にちかく、純色に白と黒が混じってくると鮮やかさが減って彩度が低くなります。
風景を見ていても、遠くにあるものほど霞んでモノクロっぽくなりますよね。
遠いと間にある空気の層で色が散乱してしまって白っぽくなってしまうからだと思います。
彩度が低いものは、自然界においても遠くにあるもの、逆に鮮やかにクッキリ見えるものは近くにあるもの、という脳の常識が、ある種の錯覚を起こさせているんじゃないかと思います。
ということで、誤っているのは選択肢の2.でした。暖色系で彩度が高い色は、近く大きく感じます。
これが、部屋の広さにも関係してくるのですが、続きは次回。
それでは今日はこの辺で。
参考)
◆『待つ』ことに対する心理的ストレス緩和のための色彩計画と時間評価に関する基礎的研究,諸葛智勝,2007
◆色を変えると時間の感じ方が変わる?,2017
◆色によって異なる時間感覚
◆進出色・後退色,富士塗工,2018
※今日の問題は、デジタル問題集にも収録しました。