ジョン・レノンと俳句 | 五島高資のブログ

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" I think haiku is the most beautiful form of poetry I know." by John Lennon

 

 1977年から1979年にかけて、ジョンは小野ヨーコと毎年日本を訪れて軽井沢で夏を過ごした。しだいに彼は伝統的な日本文化に深い関心を持つと同時に日本語を熱心に学ぶことになる。そして、「俳句」に出会ったのである。

 その頃、ポール・マッカートニーが華美なロック音楽へ傾斜していったのに対して、ジョンは「俳句」にも似たシンプルな言葉とアレンジで心に残る音楽を作るようになる。「LOVE」や「イマジン」などがそれである。

 さて、西洋音楽は、J.S. バッハの対位法を原点とする重層的な楽曲の展開を示す。しかし、東洋、特に日本の伝統的な音楽、例えば、尺八や笛などの楽曲は、そのシンプルな音律にもかかわらず、ある時には鹿の鳴き声になったり月の光になったりする。こうしたモノフォニーから湧き出るポリフォニーは日本の伝統的音楽の特徴であるが、それは音楽のみならず広く日本の伝統芸術における創造性に深く関わっている。「俳句」という一行の詩歌から様々な感動が生まれることも例外ではない。

 因みに、ジョンは「俳句」のことをポエム(poem)と言わずにポエトリー(poetry)と表現している。このことは、彼が「俳句」の特性をよく理解していたことの証左と言える。ポエムが観念的な散文詩(prose)をも包含する概念であるのに対して、ポエトリーはより直感に根ざした韻文という意味合いが強い。世界最短の定型韻文詩である「俳句」が、まさに言葉と音楽とが一体化した究極の芸術であることをジョンは見抜いていたのである。

 

 乗り降りもせずドア閉まるレノンの忌   五島高資