意中の人がいて、その人を振り向かせたいと思うなら、「些細な変化も見逃すまい」という意気込みで、その人に関する情報を、必死で集めるでしょう。その人は、何が好きで何が嫌いで、どのような歴史を経て今に至り、将来、どうありたいと願っているのか。必死で集めた情報を、精査し、付き合わせ、組み合わせ、分析し、暫定的な結論を導き出し、日々、その結論の精度を高めるよう、努力するでしょう。
情報を収集し、その情報を分析することだけに着目すれば、地域研究(area study)というものは、前段落で述べたものと、かなり似ています。綿密な市場調査をせずに、新製品を市場に投入する事業者は、あまりいないでしょう。また、商売に関する交渉であろうと、政治的な交渉であろうと、交渉を行う前に、交渉相手を研究しない人も、あまり居られないのではないでしょうか。
彼を知り己を知れば百戦して殆(あや)うからず(孫子・謀攻篇)。兵法家の孫武は、「だから、百戦しなさい」と言っているのではなく、「だから、交戦せずして、相手が従うように、相手がこちらの言い分を理解するように、謀(はか)りなさい」と、言っているようです。
諜報(ちょうほう)活動という言葉を見て、おどろおどろしいものを想像される方も、おられるかもしれませんが、情報を収集し分析することは、交戦を回避する上で、とても重要な活動です。予算配分の変動が影響を与えているのかどうかは、調べてみないと分かりませんが、米ソ冷戦の終結後、各国の情報収集及び分析の能力が、低下しているのではないか。特に、膨大な額の財政赤字を抱えている国の情報分析能力が、低下しているのではないか。
長くなってしまいましたので、中途半端な位置ですが、ここで、一旦、切らせてください。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則