村落共同体が、互いに知っている者同士の集団だとするならば、近代国家は、他人同士の集団である。他人同士が、袖振り合って暮らすのだから、事細かな決めごと、法律が必要になる。
また、近代国家は他人同士の集団であるので、近代国家の政治家が政治活動をするときは、理に適った言動をするべきである。でなければ、国民の理解を得ることができず、早晩、国民の心が離れいく。
単独政権ではなく連立政権であるにも関わらず、小泉純一郎氏の内閣が、5年5か月続き、内閣不信任決議案が可決されたからではなくて、小泉氏ご本人の意思で内閣総辞職をし、幕を閉じたのは、決して、偶然ではない。理に適った言動を、積み重ねたからである。
現行の憲法、法令によれば、内閣の暴走は、衆議院での内閣不信任決議案可決(もしくは、信任案否決)によって抑止し、国会の暴走は、衆議院の解散によって抑止することになっている。権力分立は、中学3年で習う事柄のはずである。
郵政民営化法案を、衆議院が可決し参議院が否決し、小泉氏は、衆議院を解散した。1か月ほど前にも書かせていただいたが、小泉氏は、権力分立の趣旨に基づき、つまり、職権を濫用することなく、「国会が、両院合わせて全体として、民意を反映せず暴走している」と判断したから、現行法令に従って衆議院を解散した。
内閣不信任決議案の採決を集団で欠席し、首相に対する問責決議案には賛成し、その首相率いる政党などと交わした3党合意を死守することは、理に適った行動だろうか。
また、政令市の市長や知事の職を、全力を傾けて務めながら、空いた時間に余力を使って、政党を結成し、衆議院議員総選挙の準備をすることは、理に適った行動だろうか。
理に適った言動をすることと、義を重んずることは、最終的には、ほぼ同じ行為になるのではないかと、私は思っている。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則