長きに渡り、米国の国論、世論を二分し、米国財政を疲弊させることにもなったベトナム戦争を終結させるためのベトナム和平協定が結ばれ、ニクソン米国大統領が終戦(実質的には、敗戦)を宣言したのが、1973(昭和48)年1月29日。
その僅か16日後に、日本円が、固定相場制から変動相場制に移行され、今に至っている。あれから39年、長い通貨の歴史において、この39年間のみ、通貨を投機の対象にするという、とんでもないことが行われている。いわゆる貨幣経済が浸透した近代以降においては、ねじ一つ、米一粒、手に入れるときも、また、納税するときも、通貨を使う。それほど大切な通貨を、投機の対象にしていいのか。
通貨を投機の対象にする制度は、当然のことながら、経済規模が大きい通貨、円ではなくドルを、より多く保有している者にとって有利な制度である。単純な計算上は、ドルで、全ての円を購入することができるが、円で、全てのドルを購入することはできない。
敗戦後、あれほど創意工夫をして、小型高性能で安価なラジオ、テレビ、ビデオテープレコーダーなどの製品群を製造し、世界を席巻した日本の家電ブランドも、為替レートに翻弄され、市場の声が聞こえなくなり、過去に成功した方法に固執すれば、あっという間に凋落する。
多くの先進国の財政が行き詰まっている今は、通貨制度を修正する好機である。
神奈川県横須賀市にて
佐藤 政則