財政再建が叫ばれ始めたころから、「増税は、景気が良くなってから行うべきである。今、景気を下支えしなければ、景気が底割れする」と、言われ続けている。「優先すべきは、財政再建か景気回復か」の議論は、いつごろから、なされているのだろうか。
「赤字国債の年間発行額の縮減などを財政構造改革の当面の目標とする」ことを盛り込んだ法律を制定するなど、財政再建に意欲的だった橋本龍太郎内閣は、1997(平成9)年4月に、消費税率を3%から4%(地方消費税分と合算した税率は5%)に引き上げ、その翌年の夏に行われた参院選で与党自民党が惨敗し、退陣に追い込まれた。
財務省のウェブサイト内に掲載されているこの図表を見れば、橋本龍太郎内閣の最終年度である1998(平成10)年度以降しばらく、公債(建設国債と赤字国債)の発行額が、高止まりしている。1998年度の公債発行額34兆円のうち12兆円は、次の小渕恵三内閣が組んだ3次補正予算で計上された分である。小渕内閣のときに、大量の不良債権を抱える銀行への公的資金の注入が本格化した。
誰かを責めるために、1990年代後半の出来事を振り返った訳ではない。橋本龍太郎総裁率いる与党自民党が惨敗した1998年夏の参院選から、13年の歳月が経ち、なお、「優先すべきは、財政再建か景気回復か」の議論がなされていることを確認したかったから、過去を振り返った。
長くなってしまうので、税制に関してのみ申し上げるならば、「今は、消費税や所得税や法人税をいじるべき時ではなく、約1400兆円あると言われている個人金融資産に課税すべき時である」と、私は確信している。
神奈川県にて
佐藤 政則