たとえば、人質を取り、仲間を釈放しろと要求する者がいる。単に、仲間を釈放しろと要求し続けても、その要求が受け入れられることはない。人質を取って何かを要求する者は、「人質を取れば、相手方が要求に応じる可能性がある」と確信するから、人質を取る。「人質を取っても、相手方が要求に応じることはない」と確信すれば、人質を取らない。
「テロリストと交渉してはならない、取引してはならない」とは、そういうことである。目の前の案件で、テロリストと取引すれば、目の前の案件は、収束に向かうかもしれないが、テロリストに、脅(おど)せば要求に応じる者と認識されて、次のテロ行為を誘発する。
目の前の案件で、テロリストと取引しなければ、目の前の案件は、なかなか収束に向かわないかもしれないが、テロリストに、いくら脅しても要求に応じない者と認識されて、次のテロ行為を抑止する。
以前、「地位を脅しの道具にする者と、交渉してはならない」と、書かせていただいた。今すぐに人命が奪われるような緊迫した状況ではないのに、野党は、易々と、交渉し取引した、つまり、要求に応じた。そして、政権与党は、近隣諸国に脅されれば、易々と、要求に応じる。
脅す者は、相手が、脅せば要求を受け入れる者かどうかを確認して、脅す。海上保安庁は、国交省の外局であるが、昨年の9月7日に、あの事件が起きた時の国交大臣は、前原誠司氏である。あの事件のさなかの9月17日に、外務大臣に就任したのも、前原誠司氏である。
神奈川県にて
佐藤 政則