指揮を受け命令された業務を行う者の、やり切れなさ | 佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

佐藤 政則「不易流行 -日本再生に向けて-」

変わらぬ理念の実現を目指し、しくみを修正する。
実態に合わなくなった諸制度を見直し、日本国を良くすることを目指す、政治ブログです。

 会社の従業員は、会社に無断で、会社の所有物の使用、収益、処分をしてはならない。ボールペン一本でも、無断で使用、収益、処分をしてはならない。

 会社の従業員が、会社にとっての秘密を保持すべきことは、たいていの会社においては、就業規則で定められている。就業規則は、労働基準法に基づくものであり、それなりに拘束力がある。就業規則に違反すれば、労働契約に基づく債務を履行しなかったことになるからである。

 会社の従業員は、業務遂行の途中において、様々な情報を得る。その情報のうち、どれが秘密で、どれが秘密でないのか。就業規則において、会社にとっての秘密をどう記述しても、言葉という記号は万能ではないので、ある情報が秘密なのか秘密でないのか、意見が整わない場合もある。その場合は、裁判をすることになる。

 公務員も、会社の従業員と同じく、被用者、つまり雇用される者である。構図は同じである。あの元海上保安官が、職務上知ることのできた非公開情報を漏らしたことは事実だが、彼が漏らした非公開情報は秘密ではないと、私は判断している。

 雇用される者とは、雇用する者の指揮を受け、命令された業務を遂行する者を指す。命令されていないことを、勝手に遂行してはならない。原則、雇用される者に、業務に関する自由はない。上司に、職務上知ることのできた非公開情報の公開を提案してダメなら、自分が上司になるまで、耐えるしかない。

 彼を、責めているのではない。日本の海の安全を守る公務員が乗り組む船が、他国の船によって攻撃されるという非常時に、公開すべきであろう情報を公開しない官庁に対し、情報公開を強く請求しなかった国民こそ、責められるべきである。