月組公演 Eternal Voice 消え残る想い | 続アメマのおとしもの

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2024年3月30日~5月12日 宝塚大劇場・月組公演

 

春の宝塚大劇場は月組公演の二本立てで、月組トップコンビ月城かなと・海乃美月のサヨナラ公演。そして第110期初舞台生のお披露目公演でもあります。

 

 

4月5日13時公演、1階13列目で観劇。

※ネタバレ注意。

本日の口上は、薫乃咲月、陽稀はる、星美音の娘役三名。

 

 

●ミュージカル・ロマン「Eternal Voice 消え残る想い」 作・演出/正塚晴彦

 

ヴィクトリア女王統治下のイギリス。考古学に傾倒しているユリウスは、古美術商を営む叔父に頼まれ、アンティーク・ハンターとして各地を飛び回る生活を送っていた。そんなある日、彼はメアリー・スチュアートの遺品とされる首飾りを手に入れたことから、やがて巻き起こる国を揺るがしかねない大事件へと誘われてゆく…。ダークな色合いもありながら笑いとペーソスを織り込んだエンターテインメント性溢れるミュージカル作品。

 

良くも悪くも、「あ~正塚作品だなぁ」って感じのでした。良い点を簡単に言うと、男役はカッコいいし、白々しくないコミカルさがあり、誰も死なずってのもいい。正塚作品で初の映像を使用したことで、単調な舞台に彩りがありました。悪い点は大劇場芝居じゃなく別箱向きで、大きな盛り上がりもなく淡々と進みます。

物語はユリウスが手に入れた首飾りがきっかけで、王室不要論を唱える議員や呪術師・霊媒師と対峙し、イギリスの王室を守るだけなんですが、首飾りの元の持ち主がスコットランド女王のメアリー・スチュアート。彼女の生涯・思想・宗教などを理解しておかないと、もうなんのこっちゃ分からん話です。

そこに超常現象だの特殊能力だの、霊媒師だのが物語の事件性を作者の都合よく解決していきます(笑)。どうもオカルトを宝塚で扱うと、嘘っぽいんですよね。先にも書きましたが、淡々と進む話なので途中で結構眠くなりましたし、秘密局の存在もなんだか曖昧。スコットランドヤードみたいな・・・と劇中で言ってますが、いまいちピンと来ない。普通に警察で良くないか?超常現象を頼りにするから、警察じゃアカンのか?? 

数年前まで正塚氏はサヨナラ公演を担当することが多くありました。例えば「バロンの末裔」「追憶のバルセロナ」「薔薇に降る雨」「ラスト・プレイ」「ロジェ」。どれも泣けるほどの作品ではありませんでしたね。現在の宝塚は作家不足ですし、オリジナル作品が低迷。そこへ来てベテランの登板でコレでは・・・。サヨナラ公演=駄作のジンクスは、先月の花組に続いて継続中です。

 

 

今回で退団する月城かなとは、考古学者でアンティークハンターのユリウス。

淡々とした中にも包容力や鋭さ、そして知性を併せ持つのは、充て書きした月城ならではのキャラクターで、台詞のひとつひとつに説得力がありました。正塚氏独特の「あぁ」「うん」とかの返事の台詞回しも自然で、仕草もカッコよくて、観ていると自然と引き込まれて行きましたね。そこが眠くはなったけど、寝てしまわなかった一因。アデーラに対しては、同じ感覚を持つ者の良き理解者で、トップコンビとしてのコンビネーションの良さも感じられたので、割と序盤から二人がガッツリ組んでお芝居してるのが良かったです。それだけに二番手の鳳月杏との絡みが少なかったように思います。ラストだけは退団公演っぽい場面になっていて、ハッピーエンドで良かったです。

 

同じく退団する海乃美月は、超常現象研究所の被験者のアデーラ。

まず彼女の存在が最初に「?」ってなったんですね。被験者になった経緯もある程度明かされては行きますが、どうもその部分の説明が弱いので「何者やねん」ってなりました。まぁ「特殊能力」を「自分は人とは違う」と言うのを卑下し、武器にせずに生きて来た女性なんですね。海乃独特の大人な女性の雰囲気は出てるのですが、可愛さとか綺麗さがキャラクター的に全く描かれてないのが残念。

 

二番手の鳳月杏は、秘密局のプロファイラーで超常現象研究家のヴィクター。

祖父が秘密局を開設した設定で局員でなく、本業は研究家ってのがよく分からん。超常現象が物語のきっかけや解決へ導く手段で、ヴィクター自身はさほど役に立ってないような・・・(笑)。でもユリウスは友人で頼りにしてる感じだし、鳳月の存在感でなんか分からんけどおるだけで安心するんですよ。

風間柚乃は、特定秘密局局員のダシエル。

やっぱりこの人はお芝居の人だなと感じます。この役もさほど目立つ役ではないんですが、要所要所で役に立ってます。

同じく局員のエイデンを天紫珠李

なんてことない役だなぁと思ってたら、後半にきっちり見せ場がありました。

ユリウスの助手カイを礼華はる

出番は多いんやけど、どうもねぇ・・・。ビジュアルはええんやけどなぁ。

呪術師マクシマスを彩海せら。霊媒師エゼキエルを彩みちる

胡散臭さ満点の二人が、一番目立ってましたね。とくにちるちるの大仰な演技が、胡散臭さを倍増してました。

 

自由党の議員ゼインを専科の高翔みず希

わざわざ専科生を投入するほどの役でもないし、月組にこれぐらいの役が出来る生徒はいると思います。

同じく専科の凛城きらが休演しており、代役で佳城葵がユリウスの叔父ジェームズを。

スカステの初日映像のりんきらとは全然違う雰囲気ながらも、急遽の代役とは思えぬ役作りで、なかなか面白かったですね。

組長の梨花ますみはヴィクトリア女王で威厳を示し、佳城の代役で大楠てらがバチカンの守護戦士で、本役かと思うぐらいの適役になってました。代役でこれだけの存在感を出せるのはスゴイし、こういう生徒が専科に残って欲しいと思います。

 

若手娘役陣も存在感を示し、白河りりは物語のキーとなるメアリー・スチュアートの透明感と念の強さ、菜々野あり・花妃舞音も局員でやる気満々、カッコイイ守護戦士できよら羽龍、村人の妃純凛のやさぐれさには笑いました。

 

 

それぞれの生徒は良かったし、代役の生徒も頑張っていました。それだけにもっと盛り上がりのある物語だと良かったのになと思いましたね。