宙組公演 壮麗帝 | 続アメマのおとしもの

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2020年8月14日~8月18日 シアタードラマシティ・宙組公演

●オリエンタル・テイル「壮麗帝」 作・演出/樫畑亜依子

 

この作品は、オスマン帝国を最盛期に導き、壮麗帝と称された皇帝スレイマンの生涯を、寵姫ヒュッレムとの愛や、義弟にあたる大宰相イブラヒムとの絆を通してドラマティックに描き上げる歴史ロマン。

 

本来は3月下旬に日本青年館ホール、4月にドラマシティで公演されるはずで、私も4月の分のチケットは取れてたのですが、新型コロナウイルスの影響で中止となり払い戻し。8月にようやく再開と決まったものの、公演期間はたったの5日間。先行も全てハズレ、一般前売りは瞬殺で完売・・・。今回はしゃぁないかと諦めてたんですが、千秋楽当日の朝にチケットが手に入り、予期せぬ観劇となったのであります。

 

8月18日15時公演(千秋楽)、25列目で観劇。

先日の「FLYING SAPA」に比べると、歌やダンスもあって華やかで、ちゃんとタカラヅカしてました。ただ主人公の生き様がそんなに魅力的ではないんですよね。どちらかというと、二番手格の方がちょっとだけ面白い。「ちょっとだけ」というのも、主人公にアクがないので、その周りの役が濃くないといけないのに、それもやや薄味。奴隷、国政、裏切り、侵攻、側女、毒殺、後継者争い、死・・・など、芝居には欠かせぬ要素がたっぷり入っているのに、それぞれの事件性が希薄で、伏線も説明も不足してるから、二幕後半の隣国との戦いまで盛り上がりに欠けます。その二幕も信じていた右腕を処刑し、最後に妻の死までの間がダレてしまって、泣ける要素があるのに勿体ない。ただそれぞれの配役に関しては、座付らしくその生徒らしさは出ていたと思います。

コレ、このご時世でコロナで再開できて、中止にもならず千秋楽を迎えられて良かったねっていうのがなくて、コロナにならず通常通りに春に公演してたら、超駄作って言われた可能性大。

物語に盛り上がりがないのに、私もコロナ禍の中で見た分、やや贔屓目に見たので寝ずに久々に華やかな宝塚を見たなぁと思いましたがね。

 

ドラマシティ初主演の桜木みなとは、オスマン帝国第10代皇帝スレイマン。

若く優しい皇帝という雰囲気は出てましたし、歌もお芝居も良かったです。フィナーレでの爽やかさもいい感じ。ですが、主人公としてのパンチが弱くて、あまりにも面白味がない。奴隷だった娘を側女にして、第一夫人よりも愛してしまうのは仕方ないですが、もっとドロドロした宮廷事情でないと、この二人の恋愛要素が際立ちません。「オーシャンズ11」のベネディクトぐらいの濃さがないと。

イブラヒムを処刑する時の葛藤や、アレクサンドラの死の悲しさ、その後の皇帝としての後姿はカッコよかったですね。

 

相手役遥羽ららは、奴隷から側女そして夫人にまで上り詰めるアレクサンドラ(ヒュッレム)。

ららちゃんらしい強い中にもふんわりした優しさが出ていて、今回は可愛いというより綺麗でした。ただそれだけで終わってしまったのが勿体なくて、もっとハーレム内での成長や、宮廷内での軋轢などを見せてくれないと、アレクサンドラの頑張って夫人にまでなった努力が見えないのです。ららちゃんのちょっとアニ声的な感じが、悲観的な感じにならず前向きに生きてるのが感じられましたがね。最後の死が急すぎて、「えっ?!」って感じ。フィナーレのデュエットダンスは、ずんちゃんとのコンビが似合ってました。

 

二番手格の和希そらは、スレイマンの小姓で後に大宰相となるイブラヒム。

奴隷の時のやんちゃな感じは和希らしかったですが、その後スレイマンの右腕となってからの抑えた演技はまったく違う魅力がありました。フィナーレはやっぱりドヤ感満載でしたが(笑)

ここも脚本の残念なところで、奴隷で剣の相手をしてスレイマンに認められてから、右腕になるまでの過程が全くないので、気が付けばもう髭生やしたオッサン(笑) 何事もスレイマンの為と思いながらも、最後は裏目に出てしまうのですが、ここを和希らしくもう少し悪に染まってくれたら面白かったんですよね。それに妻となるハティージェとも格差結婚ながらも、結構ラブラブなだけで、この結婚も利用して隣国との何かしらの取引をするとか。あまりにも忠誠心だけで、二番手にしては面白くない。

 

オスマン帝国の宰相アフメトを鷹翔千空

最初は特に何もないのですが、エジプトに左遷されてから、その後サファヴィーに寝返ります。これまた面白い役どころなのに、左遷→寝返りの過程が全くなしで、あっさり殺されるのもなんだかなぁ・・・。ロックな感じのソロの歌もあって、鷹翔くんはよくやってたと思いますがね。

スレイマンの妹でイブラヒムと結婚するハティージェを天彩峰里

彼女もただただキレイで優しい。それだけ。なんかもっと使わないと、勿体ないったらありゃしない。

スレイマンの母ハフサを凛城きら

以前にも「神々の土地」で禁煙皇后をやってましたが、今回も女役をやってます。なかなかこれが貫禄があって、上手かったです。寿組長がやると、オカマになるからね(笑)

専科の悠真倫は、宮廷史家のマトラークチュ。

宮廷の歴史を纏めるという狂言回し。うーん、ルキーニみたいにもっと物語に絡まないとつまらない。せっかく専科から特出した意味がない。

 

 

そんな感じで、題材や設定もいいし、それに生徒にも合った役柄だけに、それが生かされていない脚本というのが残念でした。

しかし途中で公演中止にならず、千秋楽を迎えられたのは良かったです。