「民間大水滸」解宝、蛇を斬る ダイジェスト版 その1 | 水滸伝ざんまい

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中国四大名著の水滸伝について語るブログです。
原典メインのため、北方および幻想はありません。
悪しからずご了承ください。

 

今回の物語は、

本編に関係ない人物や地理の説明が多く、

少し読みにくかったので、

ダイジェスト版にしてみました。

 

(その1)

宣和三年の夏のことだった。

大臣の童貫が官軍を率いて

梁山に攻めてくるという噂がたち、

首領の宋江と軍師の呉用は、

一般人に変装した頭領たちを下山させ、

各地区で情報収集させることにした。

 

解宝は元の猟師の姿となり、梁山の近くにある金山に登った。

金山の頂上から、街道沿いの人や物資の移動の様子を

しばらく観察し、戦闘時における手順なども考えついたので、

そろそろ下山することにした。

 

険しい山道を下っていると、ふいに号泣する声が聞こえ、

泣きくずれる老婆と彼女をささえて歩いている若者が

山を登ってくるのに気がついた。

 

解宝はふたりに声をかけて、自分の正体をあかし、

もし悪徳役人や金持ち旦那に苦しめられたのなら、

梁山の義軍が仕返ししてやるからと、

二人が泣いているわけを尋ねた。

 

ふたりは金山の西側にある金家谷に住んでいる

祖母と長男孫の金竜だった。

祖父と父親は、重税に耐えかねて起こった一揆に参加したために

官兵に殺されてしまい、母親は子を捨てて再婚してしまった。

そのため、祖母だけが残された三人の孫たちと暮らしていたが、

生活は貧しく食べるのもやっとのありさまで、

孫たちもまだ幼いうちから働いて家計を助けていた。

 

金山の東面には竜泉洞という巨大な洞窟があり、

その奥には泉が湧き出していて、

この水は、ひと口飲めば真夏でも一日涼しく過ごせると

言われる名水だった。

また洞窟の中は、夏はさわやかで冬は暖かく、

近所の子供たちの絶好の遊び場となっていた。

 

ある日、金竜は仕事の合間に少し涼むつもりで洞窟に入り、

平たい岩の上で昼寝をしていた。

すると突然、体がふわふわ浮き上がるという、

奇怪な体験をしてしまった。

目をさましたおかげで地面に落ちた金竜は、

仲間の子供たちにその話をしてしまう。

 

子供たちは空中浮遊にあこがれ、

こっそり洞窟に入りこむようになった。

老婆の末の孫の金豹もそのひとりだった。

金豹は、誰も見ていない隙にそっと洞窟に行き、

兄がしたように岩の上で昼寝をしてみた。

しかし兄と違い、途中で目をさますことなく、

ぐっすりと寝入ってしまった。

 

すると金豹の体はふわふわと浮き上がり、

そのまま岩天井の大きな窪みに引き込まれ、

しゅっという怪しい音が聞こえたのを最後に、

二度と帰ってはこなかった。

 

こうして子供たちが次々と行方不明になり、

どの子も洞窟に行ってから姿が見えなくなったことが分かると、

人々は、あの洞窟には妖怪が住みついたと恐れおののき、

誰ひとりとして洞窟に踏み込もうとする者はいなくなった。

 

老婆は、金豹の仇を討ってくれるよう、

毎日この山の頂上で、神に祈りをささげていた。

また、金竜に梁山まで連れて行ってもらい、

妖怪を退治してくれる豪傑に来てもらうつもりだったと話した。

 

 

まずは、解宝が老婆とその孫の金竜に出会ったきっかけと、

怪しい事件が起こるようになった洞窟の話まで。

この続きはまた次回で。