令和6年正月歌舞伎座夜の部 息子 | 癸の歌舞伎ブログ

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令和6年正月歌舞伎座夜の部 息子

 

息子 ムスコ

 

小山内薫作。大正十二年三月帝国劇場にて初演。

初演時配役は

六世尾上菊五郎(金次郎)、四世尾上松助(火の番)、十三世守田勘弥(捕吏)。

 

アメリカ生まれで英国で活躍した俳優・劇作家のハロルド・チャピン(Harold Chapin)作の「父を探すオーガスタス(Augustus in search of a father)」の翻案である。初演時から好評で今に至るまで再演を重ねている。

 

今回配役は

松本幸四郎(金次郎)、松本白鸚(火の番)、市川染五郎(捕吏)。

オール高麗屋である。

 

初演以来の夜の雪景色に番小屋だけの簡潔な舞台装置である。おとなになってから別れた息子に気づかない火の番に違和感を覚えるが、本作が歌舞伎として初演されたこと、歌舞伎では臍の緒書を見て初めて親子と気づく筋が多いことから、大正時代の観客には新しく感じられ受け入れられた。同じわからないでも、わかるわけがないという肚と、わかりそうでわからないという肚では違っていて、役者からして火の番は演じるのが難しいそうである。台本からは最後まで息子とわかったのかどうか不明である。今回白鸚は捕吏が金次郎を尋問した際、金次郎がふと火に顔を向けた瞬間(わかったという)思い入れをするやり方をした。