令和5年12月歌舞伎座第3部 猩々
猩々 ショウジョウ
当ブログの過去記事より
明治七年七月十日よりの東京河原崎座のワキ狂言「寿二人猩々」、とあるのが初演とされる。市川新車、沢村訥升の名がある。この新車は五世門之助であろう。訥升は四世助高屋高助であろう。本作は能の猩々からとったもので、猩々という霊獣から酒屋をしろというアドバイスを受けて大儲けした高風がお礼に酒壺を用意して待っていると、猩々が現れガンガンに飲んで、しまいにその酒壺を無尽蔵の魔法の壷にしてくれて帰っていったという筋はそのままである。詞章もそのままとっている所も多いと思われる。途中のくだけたところは創作であろう。能では猩々は一人というか一匹で、話の筋から言っても二人出てくるのはちょっとおかしいのであるが、門之助と高助を踊らせたかったのであろう。
というわけで、本作は「寿二人猩々」と題されて上演されることもあるが、単に「猩々」の題で上演されることのほうが多い。だから猩々が一人のことはない。平成二十九年の巡業で三人の猩々を出したが、中村橋之助、福之助襲名披露で上置きに中村錦之助か尾上松緑を置いたせいである。
今回配役は
尾上松緑(猩々)、中村勘九郎(猩々)、中村種之助(高風)ら。
松羽目、その前に長唄。舞台中央に酒甕。高風の名乗りのあと、猩々が一人出てきて様子を見て、もうひとりの猩々を呼びに行く形で二人出る。高風に勧められて飲み始め、色々と舞い、さしつさされつになり、中の舞のあと猩々ふたりとも七三にかかり定式幕とじる。囃子方が幕の前に出てきて、七三で少し舞ったあと向こうへはいる。