塚口サンサン劇場銀幕でミゲル・フリオ・アナに再会 | 俺の命はウルトラ・アイ

塚口サンサン劇場銀幕でミゲル・フリオ・アナに再会

 2024年5月12日塚口サンサン劇場・劇場1C―8席
で映画『瞳をとじて』を鑑賞した。
 
 
 
 
『瞳をとじて』
Cerrar los ojos
Close Your Eyes
映画 トーキー 169分 カラー
2023年5月22日 カンヌ国際映画祭上映
2024年2月9日 日本封切
製作国 スペイン
製作言語 スペイン語 英語
 
出演
 
ミゲル・ガライ マノロ・ソロ
 
 
 
アナ・アレナス アナ・トレント
 

チャオ・シュー(ジュディス) ヴェネシア・フランコ

シスター・コンスエロ ペトラ・マルティネス

ベレン・グラナドス  マリア・レオン

マックス・ロカ  マリオ・パルド

マルタ・ソリアーノ エレタ・ミゲル

ティコ・マジョラル アントニオ・デチェント

レヴィ・フェラン・ソレル ホセ・マリア・ボウ

ロラ・サン・ロマン ソレダ・ヴィジャミル

ドクター・ベナビデス ホアン・マルガリョ

リン・ユー      カオ・チェンミン

 

 

フリオ・アレス/探偵/ガルデル ホセ・コロナド

 

 

ストーリー ヴィクトル・エリセ

脚本    ヴィクトル・エリセ

      ミシェル・ガズダンビデ

 

エクゼクティヴプロデュ―サー クリスティーナ・スマラガ

プロデュ―サー クリスティーナ・スマラガ

        パブロ・E・ボッシ

        ヴィクトル・エリセ

        ホセ・アルバ

        オディ―ル・アントニオ=バエス

        アグスティン・ボッシ

        ポル・ボッシ

        マキシミリアーノ・ラサンスキー

 

撮影監督    バレンティン・アルバレス

編集      アセン・マルチェナ(AMAE)

オリジナルスコア フェデリコ・フシド

音響監督    イヴァン・マリン

サウンドデザイン ファン・フェロ

音響ミキサー   カンデラ・パレンシア

プロダクション・マネージャー マリア・ホセ・ディアス・アルバレス

アートディレクター クルル・ガルバル

衣裳デザイナー ヘレナ・サンチス

メイクアップ&へアディレクター ベアトシュカ・ヴォィトヴィッチ

 

 

 
監督 ヴィクトル・エリセ
 映画『別れのまなざし』は1947年スペインの親子
の物語を語る。悲しみの王ことレヴィは老富豪で中
国人少女チャオ・シューことジュディスの写真を見せ
る。 
 レヴィは中国人女性と自分の娘がチャオ・シュー
であると告げ、余命幾ばくもない自身の夢は別れた
娘との再会であると語る。探偵はチャオ・シューを
探しだしレヴィと会ってもらうことを確約する。
 
 このファーストシーンとラストシーンの二場面が
1990年にミゲル・ガライ監督により撮影された。
 その直後に探偵役の人気俳優フリオ・アレナスは
失踪してしまった。
 警察は自殺を推理したが、死体は見つからなかっ
た。
 
 

 

 未解決事件のテレビ番組のプロデューサーマ

ルタ・ソリアーノはフリオ失踪事件を追い、ミ

ゲルに解説を頼む。映像使用料金が貰えること

を親友の編集者マックスから教わり、ミゲルは

出演を受ける。

 

 番組インタビューでミゲルは「私は親友も映

画も失った」と心境を述べる。

 現在小説家・翻訳家として活動するミゲルは

海の家でギター好きのトニーとその妻テレサ・

足の大きなおじさん・犬のカリと共同生活を為

していた。

 

 

 フランコ総統の独裁時代に探偵が独裁政治に

抵抗した人物であったことを、ミゲルは劇中の

レヴィの台詞で語った。

 演じたフリオも又体制の圧力に対して糾弾を

為して処罰を受けた存在であった。

 

 マックスは未完成でも撮った2シーンをスク

リーンで上映すべきだとミゲルに勧める。老い

を克服できなかったことが、プレイボーイフリ

オの悲しみではなかったかとマックスは推理す

る。

 

 マックスの部屋でミゲルは息子ミケルが描い

たイラストを見つけ感嘆する。ミケルへの手紙

を見つけた父ミゲルの胸は熱くなる。

 

 

 

 ミゲルはフリオの娘アナ・アナレスと喫茶店

で会う。

 

 「父が生きている夢を見たわ」とアナはミゲ

ルに告げた。

 

 アナは美術館で絵画の解説の仕事をしている。

 

  1967年に撮られた水兵姿の父フリオとミゲル

の写真を提示した。ミゲルはアナから写真を譲り

受けた。

 

 親友だったフリオとの過去の日々をミゲルは

確かめる。

 

 古本屋で昔の恋人ロラに献辞を書いて贈った

自著をミゲルは買う。フリオとも交際していた

ロラと再会したミゲルは彼女の家の暖炉の前で

語り合う。ロラはフリオがタンゴの名人であった

ことを確かめる。タンゴが下手だった僕はフリオ

に君を取られてしまったと嘆く。ロラは国外に出

る際荷物は売られてしまったので、貴方が献辞を

書いてくれた本は売っていないわと述べる。

 「君の元に帰ってきたんだ」とミゲルは改めて

本をロラに捧げる。

 

 フリオの携帯電話が鳴る。

 

 海辺の施設にフリオに似た男性がいると言う

情報が届いた。

 

  ミゲルは施設を訪ねる。

 

 男性は施設に居て作業をしていた。記憶喪失で

認知症の男性はガルデルとシスターに名付けられ

ていた。

   

 彼の荷物にはチャオ・シューの写真と『別れの

まなざし』の小道具のチェスの駒があった。

  

 ミゲルは施設に宿泊しガルデルと塗装の作業を

なし、1967年の2ショット写真を見せる。

 

  ガルデルは「俺じゃないし、もう一人も君じゃ

ないよ」と否定する。

 

 ミゲルは施設にアナを呼ぶ。

 

 ◎

 公開中なので物語要約はここまでにする。

 ◎

 

 

 

 

 ヴィクトル・エリセ

  Víctor Erice Aras

 ヴィクトル・エリセ・アラス。

 映画監督・脚本家。

 1940年6月30日スペインバスク地方カラン

サに生まれた。

 

 『ミツバチのささやき』

 El espríritu de la colmena

 映画 トーキー 99分 

 カラー(一部白黒)

 製作国 スペイン

 主演 アナ・トレント(アナ)

 監督 ヴィクトル・エリセ

 1973年9月18日サン・セバスチャン映画祭上映

 1973年10月8日 スペイン公開

 昭和六十年(1985年)二月九日日本公開

 ◎

 昭和六十三年(1988年)春梅田コマシルバー

にて第一回鑑賞。

 2024年1月30日京都シネマにて十九回目の鑑賞。

 

 

『エル・スール』

EL SUR

1983年5月19日スペイン公開

鑑賞日時場所

昭和六十一年(1986年)四月三日

有楽シネマ

この後十一回劇場において鑑賞

 

マルメロの陽光

『マルメロの陽光』

El sol del membrillo

1992年10月1日 アメリカ合衆国

        ニューヨーク映画祭上映

鑑賞日時場所

平成十六年(2004年)八月二十六日

日本イタリア会館京都校

 

 

平成二十五年(2013年)十月十九日

京都シネマ

 

10ミニッツ オールダー 人生のメビウス ライフライン

『10 ミニッツ オールダー 人生のメビウス

ライフライン』

Ten Minutes Older 

The Trumpet

Life Line

映画 トーキー 10分 白黒

2002年5月18日 フランスカンヌ国際映画祭上映

鑑賞日時場所

平成十六年(2004年)三月一日 

京都みなみ会館

 

 

 アナ・トレント

   Ana Torrent

 

  本名 Ana Torrent Bertrán de Lis

     アナ・トレント・ベルトラン・デ・リス

 

 1966年7月12日スペインマドリッド生まれ。

 57歳。

 
 
 
 
 
 2024年5月12日、故郷兵庫県において
『瞳をとじて』映画館二回目鑑賞を為した。
 
 
 
 二回目鑑賞の夢を故郷兵庫県映画館で成就
した。
 
 わたくしにとって身の故郷は兵庫県、心の
故郷はエリセフィルムだ。
 
 心身全体で熱くなる。169分はあっという間
であった。
 
 レヴィとチャオ・シュー。
 フリオとアナ。
 父と娘の親子愛。
 
 ミゲルとミケル。
 父と息子の親子愛。
 
 胸の底から熱いものがこみあげてきた。
 
 二回目鑑賞の今日はミゲル・フリオ・アナ
の眼力の輝きに注目した。
 
 瞳の輝きが観客の心に迫真的な力を以て
照らしてくる。
 
 ミゲル・フリオ/ガルデル・アナの意志の
強靭さと呼応している。
 
 劇中劇『別れのまなざし』はミゲルにとって
はフリオの失踪で未完になり悔しさいっぱいの
フィルムになった訳だが、2シーンで十分に物語
が成立していることを感じた。
 
 『エル・スール』95分版はエリセにとって未
完で公開しなければならない悔しさがあったが、
公開95分は永遠不滅のフィルムになっているこ
とを想起した。
 
 ミゲルやフリオ/ガルデルが渋く煙草を吸って
いることも印象的だった。
 
 マノロ・ソロが渋い。フリオを探し、ガルデル
に会う。二人が同一人物と確信するが、無理強い
せずに『別れのまなざし』ラッシュフィルムを見
てもらって覚醒が起こらないかと予測する。
 
 息子ミケルの品を見て、リュミエール兄弟の無
声映画『列車の到着』の単語帳版印刷を見つける
シーンは切ない。リュミエール兄弟の時代、本物
の列車が迫ってくると思い込んだ観客達が上映会
場から逃げ出した。映画が人を本気で動かすもの
である事を示すエピソードである。単語帳版に印
刷された『列車の到着』ページをパラパラとめく
ることで動き出す。ヴィクトルがリュミエール大
先輩へのオマージュを語る名場面だ。
 
 自らの老いを確かめているミゲルはヴィクトル監
督自身が強く投影されていると思う。
 
 ホセ・コロナドの存在感が重い。ガルデルの記
憶喪失の演技に震えた。
 
 アナ・トレントは初老美女の魅力を鮮やかに輝
かせる。瞳をとじて「ソイアナ(私はアナ)」と
語るシーンに歴史を感じた。
 ホアン・マルガーリョはガルデルの脳について
の診断をミゲルに語るベナビデス医師を繊細に演
じる。白髪でお爺さんになられた。アップになると
「『ミツバチのささやき』の男前の脱走兵やなあ」
と改めて実感した。
 
 本日『ミツバチのささやき』も見聞した
かったのだが、大阪において別件の用事が
あり、『瞳をとじて』一本の鑑賞になった。
 
 二月九日に覚えた『瞳をとじて』鑑賞で
映画館映画鑑賞を集大成にしたいという心
が又起こってしまった。
 
 『瞳をとじて』は、優劣比較の最優秀のトッ
プ・ベスト1・天辺という観念ではなくて、全
ての映画・映像の歴史を包み込むという暖かさ
で広大無限なのである。
 
 最上位ではなくて、水兵の位置から無限の暖
かさで全てを包んでいる。
 
 切なさに始まり、切なさを語り、切なさを
極めるドラマなのだが暖かくて優しいのだ。
 
 大詰の映画館での『別れのまなざし』上映に
おける映写機のフィルムの音に、ヴィクトル・エ
リセの熱き情熱が静かに燃えていた。
                                
                          合掌