阪東妻三郎における坂本龍馬役映画二題 | 俺の命はウルトラ・アイ

阪東妻三郎における坂本龍馬役映画二題

 阪東妻三郎(ばんどう・つまさぶろう)は明治

三十四年(1901年)十二月十四日東京府に誕

生した。

 本名は田村傳吉である。

 歌舞伎俳優として活動し、後に活動大写真

俳優として大活躍し日本芸能界を代表する大

スタアとなった。

 役者芸名別名義には沢村紀千助・阪東藤助・

阪東要二郎、映画監督名義には岡山俊太郎が

ある。

 昭和二十八年(1953年)七月七日満年齢五十

二歳で死去した。

 

 阪妻が坂本龍馬役を勤めた映画では無声映

画一本・トーキー映画一本が現存している。

 

 全く違う作品ではあるものの、坂本龍馬 阪

東妻三郎の配役を具現した二作品はその広

大な芸道の歩みを教えてくれる。

 

 

 

 『坂本龍馬』

 映画 30分断片版のみ現存 無声 白黒

 昭和三年(1928年)五月十八日公開

 製作国  日本

 製作    阪東妻三郎プロダクション

 配給    松竹

 原作・脚本 冬島泰三

 撮影     友成達雄

 

 出演

 

 坂本龍馬  阪東妻三郎

 

 中岡慎太郎 春路謙作

 後藤象次郎 志賀靖郎

 三好 中村琴之助

 佐々木只三郎 春日清

 桂小五郎 市川伝之助

 近藤勇 中村政太郎

 大山弥助 阪東妻之助

 大丸屋清三郎 原良助

 岡本健吉 梅若礼三郎

 丑造 阪東要二郎

 お龍 森静子

 春次 泉春子

 おとせ 西條香代子

 お定 明石清江

 西郷吉之助 藤原峰男

 中川二郎 岩見柳水

 今井信三 岡田喜久也

 偽坂本 浮田勝三郎

 大江屋新助 宇野健之助

 藤吉 浪野光雄

 峰吉 山本孝

 

 監督 枝正義郎

 

 ☆

 平成二十八年(2016年)二月二日 

 京都文化博物館フィルムシアターにて鑑賞

 

 画像はインターネットよりお借りして

 引用しました

 ☆

 幕末土佐の志士坂本龍馬は新生日本を希望

した。浦賀に黒船が来航し、西洋諸国からの諸

要求に日本は対応を迫られる。

 

 幕府を倒し尊王攘夷を具現化すべきとの声が

国内で起こる。

 討幕派と佐幕派の激闘は激しくなる。幕府を

倒す力を持っていたのは薩摩藩と長州藩の二

藩と龍馬は見る。だが、両者は対立する。

 「世界的日本」の誕生を夢見る龍馬は、何と

しても薩長に手を結んで欲しい。両藩に世界的

日本の誕生に協力してもらうことが課題である。

 龍馬の誠意が通じたか、薩長は和解し、盟約

を結ぶ。泣いて喜ぶ龍馬。だが、その彼を佐幕

派の刺客が狙う。敵の襲撃を察した龍馬は銃で

撃つ。

 

 お龍との逢引で佐々木只三郎に狙われ、彼と

対決し、何とか難を逃れる。

 だが、慶応三年十一月十五日、龍馬と親友中

岡慎太郎は、佐々木只三郎の襲撃を受けて致

命傷を負い、世界的日本の誕生を見る前という

志半ばで倒れ死亡した。

 

 

 阪東妻三郎が満年齢二十六歳の若さで坂本

龍馬を熱く生きる。

 世界的日本の誕生を夢として掲げる若者とし

て颯爽と登場する。

 激論する薩長の志士たちを説得し、新たなる

日本の幕開けが大切であることを深く語る。

 

 

 無声映画は阪妻の重厚な存在感を伝える。

 

 枝正義郎の演出は鋭い。ドキュメンタリータ

ッチの冷静さで幕末維新の歴史を静かな語りで

伝えてくれる。

 

 妻さんは、歌舞伎の殺陣と全く違った激烈な

殺陣を為したと言われるが、本作において刺客

を短銃で狙撃するシーンの演技の重みは、歌

舞伎の影響が強く感じられる。

 

 枝正義郎監督の冷静な演出リズムと阪妻の

重厚な名演のバランスがたまらない。ゾクゾク

興奮緊張する。

 

 夜の京でお龍との逢引きにおいて佐々木に

襲われるが彼と戦い、何とか逃れるシーンも殺

陣に歌舞伎からの学びを感じた。妻さんは歌舞

伎で修行し、見せ方をじっくりと学び、その方法

を映画で開花したと自分は見ている。

 

 歌舞伎俳優坂東八重之助は歌舞伎の殺陣で

阪東妻三郎主演映画『雄呂血』の妻三郎の迫真

の殺陣に学んだとも言われている。

 

 映画人・演劇人は共に学び合い刺激し合って

いるのである。

 

 佐々木只三郎の襲撃を受けて、中岡慎太郎と

共に斬られ血を流す龍馬は日本の夜明けを見る

前息絶える。龍馬と慎太郎が傷を堪えて柱に倒

れかかりつつ何とか支え合って立とうとする大詰

が切ない。

 

 本作は三十分断片だが、凄み豊かな写真で、

完全版が現存していないことが惜しい。

 

 

 

『維新の曲』

映画 トーキー 112分 白黒

昭和十七年(1942年)五月十四日公開

製作国 大日本帝国

製作言語 日本語

製作会社 大日本映画製作株式会社

 

総指揮 永田雅一

脚本   八尋不二

応援演出 木村恵吾

演出助手 草野淳

       西條正美

       竹森一男

構成責任 曽我正史

       藤井朝太

撮影    三木滋人

応援撮影 高橋武

       竹野治夫

       牧田成正

撮影助手 佐野義雄

       石田秀雄

       南昌寧 

       山口芳男

       新庄保

音楽    佐野顕雄

装置    大山史郎

       長谷川繁吉

設計    鈴木正治

       川村鬼世志

背景    原田勝美

       沢井富太郎

装飾    岸中勇星

録音    加瀬久

       大本宇一

照明    丸谷得太郎

       周防正三郎

編集    宮田味津三

記録    藤本文枝

       津村典子

造園    中岡芳太郎

技髪    福山善也

       栗林徳雄

結髪    花井りつ

普通写真 三浦専三

効果    浅井順次

剣道    大野熊雄

 

配役

 

坂本龍馬  阪東妻三郎

 

桂小五郎  市川右太衛門

 

松平容保  沢村国太郎

松平定敬  立松晃

山内重信  嵐徳三郎

松平慶永  大国一公

板倉勝静  香川良介

永井尚志  荒木忍

浅野茂長  伊沢一郎

塚原昌義  北竜二

徳川慶勝  井染四郎

中岡慎太郎 羅門光三郎

吉田稔麿  尾上菊太郎

別府晋介  本郷秀雄

杉山松助  戸上城太郎

後藤象二郎 小柴幹治

沖田総司   南条新太郎

三吉慎蔵   加賀邦男

近藤勇    阿部九州男

土方歳三   寺島貢

山崎烝    尾上華丈

谷三十郎   光岡龍三郎

池田屋惣兵エ  葛木香一

惟然       東良之助

山縣狂介    仁礼功太郎

品川彌二郎   原聖四郎

真木和泉    南部彰三

黒澤増之進  上田吉二郎

久坂義助    島田敬一

佐々木唯三郎 大友柳太郎

山南敬助    川崎猛夫

蒔田相模守   岬源太郎

北添信馬    島田照夫

松田重助    阪東扇太郎

宮部鼎蔵    浮田勝三郎

藤堂平助    志茂山剛

伊東甲子太郎 春日清

乃美織江    森田肇

伊藤俊輔    吉井滉

時田少輔    多岐征二

烏尾小弥太  市川海老三郎

寺島栄三郎  楠栄三郎

國司信濃    若松文男

福岡藤次    粂譲

小松帯刀    葉山富之輔

牧野権六郎  大倉多一郎

下僕藤吉    阪東太郎

西川耕蔵    高田篤

岡本謙三郎  春路謙作

辻椅曹     水野浩

村田新八    若原寵児

望月亀弥太   対馬和雄

石川潤次郎   東大路健策

野老山吉三郎  古川伸太郎

今井信郎    小酒井健

近藤周平    藤崎正男

徳川茂承   藤堂嘉和

廣澤兵助   大隈一郎

井上聞多   藤川準

都紫荘蔵   東堂平八郎

廣岡浪秀   沢三郎

来島又兵エ  市川左正

佐伯      若杉柳恩

大高忠平エ  芝田聰二

大高又次郎  実川泰正

藤崎八郎    荒井岩衛

原田左之助   興津光

中村半次郎   岩国勝

菊屋峰吉    菅沼宗則

永倉新八    志馬英夫

お竜       市川春代

あき        琴糸路

幾松       高山廣子

おしま      梅村蓉子

小菊       橘公子

雛菊       岡春恵

松榮       香住佐代子

お春       高木峰子

おとせ      常盤操子

 

 

西郷吉之助   片岡千恵蔵

 

徳川慶喜    嵐寛寿郎

 

 

演出       牛原虚彦

 

大日本帝国→日本国

 

阪東妻三郎=沢村紀千助=阪東藤助

        =阪東要二郎=岡山俊太郎

 

市川右太衛門=市川右一

 

大友柳太郎→大友柳太朗

 

片岡千恵蔵=片岡十八郎=片岡千栄蔵

        =植木進

 

嵐寛寿郎=嵐徳太郎=嵐和歌太夫

      =嵐長三郎

 

牛原虚彦=茂原熊彦

 

平成十四年(2000年)一月十四日

京都文化博物館映像ホール

 

平成三十一年(2019年)三月三十一日

京都文化博物館フィルムシアター

 

にて鑑賞

 幕末維新を尋ねる大作時代劇映画で

ある。

 

 京都守護職松平容保は薩摩と長州が

同盟を結ぼうとすることを強く警戒する。

薩長の盟約締結を阻止すべく、容保は

所司代松平定敬を薩摩藩に派遣する。

薩摩屋敷において坂本龍馬は薩摩・長

州の盟約締結を熱く語る。だが、西郷

吉之助は長州が手段を選ばない手法

を取るとして反対する。

 

 桂小五郎率いる長州軍は会津藩に倒

される。京都で貧相な身なりに身を包む

小五郎は新選組に負われ、幾松の献身

的な優しさに守られる。

 

 一人の血も流さず事態を進めたいという

中岡慎太郎の情熱に龍馬は感動する。

 

 龍馬の熱き心は西郷と桂の対面を具現し

遂に薩長同盟は成立する。

 

 勤王討幕の勢力は幕府を圧倒する。慶応

三年十月十三日江戸幕府十五代征夷大将

軍徳川慶喜は大政奉還を決意する。

 

 龍馬は歓喜の涙を流し、親友慎太郎と未来

への夢を確かめ合う。

 

 だが、慶応三年十一月十五日(1867年12月

10日)、佐々木唯三郎率いる一党が醤油屋近

江屋新助宅母屋にいた龍馬・慎太郎を襲撃し

暗殺した。

 

 慶応四年・明治元年(1868年)明治新政府

軍は旧幕府軍を打倒する。

 西郷吉之助は桂小五郎に「これで坂本の

仇が討てましたな」と語りかける。

 

 ☆四大銀幕スタア 大映誕生映画に集結☆

 

 阪東妻三郎こと田村傳吉は歌舞伎界を経て

映画界に入り、マキノで時代劇俳優として活躍

し、阪東妻三郎プロダクションを設立し壮烈な

殺陣を見せ、『坂本龍馬』を始め数々の活動大

写真を発表し大スタアとなったが、トーキー時代

の日本映画においても代表的大スタアとして存

在感を示した。

 

 

 

 市川右太衛門は明治四十年(1907年)二月

二十五日大阪府に誕生した。本名は淺井善

之助である。歌舞伎界を経て映画界マキノ・プ

ロダクションに入り、その後市川右太衛門プロ

ダクションを設立した。大柄な二枚目俳優で

剣戟スタアとして大活躍を為した。

 

 片岡千恵蔵は明治三十六年(1903年)三月

三十日群馬県に誕生した。本名は植木正義

である。歌舞伎界・マキノプロダクションを経て

片岡千恵蔵プロダクションを設立し深い演技

を見せ時代劇スタアとして人気を博した。千恵

蔵プロ解散以後は日活に入った。

 

 嵐寛寿郎は明治三十五年(1902年)十二月

八日京都府に誕生した。本名は高橋照一であ

る。歌舞伎界を経てマキノプロダクションに入

り、鞍馬天狗を演じて時代劇大スタアとなり、

嵐寛寿郎プロダクションを設立し解散後日活

に入った。

 

 昭和十七年(1942年)一月大日本帝国では

戦時下の企業統合政策が進められ、日活・新

興・大都が合併し大日本映画製作株式会社

が設立された。これが後に大映と呼ばれ、大

映倒産後は角川が継承し、現在の角川映画

に至っている。

 

 大日本映画製作株式会社では永田雅一総

指揮の下、第一回記念作品の超大作として阪

妻(バンヅマ)・右太衛門・千恵蔵・嵐寛(アラカ

ン)の四大スタアが出演する時代劇が企画され

た。それが本作『維新の曲』なのだが、読みに

ついては「イシンノキョク」と「イシンノマガリ」の

二説があり、特定は難しい。

 

 演出には名匠牛原虚彦が選ばれた。牛原虚彦

(うしはら・きよひこ)は明治三十年(1897年)三月

二十七日生まれ。本名は牛原清彦である。

 東京帝国大学英文科在学中に小山内薫に学び

松竹蒲田撮影所に入った後に大学を卒業した。

 

 活動大写真が蔑視されていた時代に東京帝国

「大学卒業生が入るとは何たること」という社会問

題になったという。

 

 現代では憧れの職業である映画界スタッフは

大正時代差別されていた仕事であった。

 

 牛原はその世界に入り、活躍した。

 

 師匠小山内薫指導・出演、盟友鈴木傳明

準主演の『路上の霊魂』の脚色を担当し、茂

原熊彦名義で自身も出演した。

路上の霊魂

 

 牛原虚彦は伊藤大輔にとって大切な先輩

でもある。

 

 『噫無情 第一篇』(大正十二年四月一日公

開 製作松竹キネマ蒲田撮影所 脚本伊藤

大輔 監督牛原虚彦)は断片9分版フィルム

が国立映画アーカイブに現存しているという。

 現存する伊藤大輔脚本映画では最古のも

のであろうか?残念ながら自分は未見である。

上映を希望する。

 

 

 

 阪東妻三郎は昭和三年(1928年)五月十八日

公開の阪妻プロ製作・枝正義郎監督の無声映画

『坂本龍馬』で龍馬を勤めたが、十四年の歳月を

経てトーキー映画で龍馬を演じた。情熱の熱さと

包容力の大きさは圧巻である。日本の夜明けに

向かって奮闘する男の気迫が漲っている。

 

 大政奉還迄事態を進め、夢に向かって進む龍

馬と慎太郎が佐々木唯三郎の刃に襲われ殺さ

れる。

 八尋不二の脚本と牛原虚彦の演出は時代悲劇

を繊細に語る。

 大映京都製作、脚本八尋不二、主演阪東妻

三郎、助演大友柳太郎のチームは、伊藤大輔

戦後第一回時代劇で再び具現し、阪妻は山内

伊賀亮、柳太郎は松平伊豆守を勤めている。

 

 伊賀亮が伊豆守の圧力に倒され抵抗する

物語を語る昭和二十二年の大輔映画は、阪

妻が柳太郎に倒される八尋ドラマという点で、

『維新の曲』とは合わせ鏡の関係にあると言え

るかもしれない。

 

 市川右太衛門の桂小五郎は二枚目の英雄であ

る。貧しい身なりを為して京の町を歩み、新選組の

追求をかわして幾松の愛に救われる。二枚目役者

右太衛門の本領が鮮やかに出ている。

 

 岩波書店の『講座日本映画』第三巻「トーキーの

時代」(昭和六十一年三月三十一日発行)における

昭和六十年三月十三日のインタビュー「時代劇スタ

ーひと筋」(インタビュアーは佐藤忠男)において市

川右太衛門は、歌舞伎の場合は自分の狂言の時

は他のスタアに付き合ってもらい、他のスタアの

狂言には自分が付き合うという風にできるが映画

は一本一本なので難しいと語っている。

 本作の出演に関しては初め嫌だと拒否したことを

証言している。

 

    右太衛門  ところがこれは大映の発足第

            一回だからね、四人が顔を合

            わせてもらわなかったら意味

            がないんでね・・・・・・。私は桂

            小五郎、そして妻さんの坂本

            龍馬、千恵さんの西郷隆盛で

            すか、寛寿郎君がその当時の

            将軍だったかな、二人はちょっと

            しか出てないんですよ。妻さんと

            私だけは、桂小五郎と坂本龍馬

            が一番よう出てるでしょう。

            (206頁)

 

 大映発足第一回記念作品ということを確かめ、

右太衛門は出演を受け入れ、三大スタアと共に

出た。冒頭の画像は『トーキーの時代』から引用

した本作の撮影風景だが、本篇には龍馬・小五

郎・吉之助・慶喜の四人激突競演場面はないの

で、四大スタアが腕を組む歴史的な写真となっ

ている。

 

 千恵蔵の西郷吉之助は慎重で落ち着いた人物

として登場する。重厚な存在感は強烈である。

 

 嵐寛寿郎の徳川慶喜は大政奉還場面のみの

登場で出番は短い。だが、慶喜の肖像画とそっく

りのメイクで登場したアラカンの迫真の演技は

壮大である。

 

 超豪華な配役だが、時代劇四大スタアの存在

感の強烈さが本作の性格を決定付けている。スタ

アの華を見せる大作なのだ。その中で龍馬・慎太

郎暗殺者として悪の華を見せる大友柳太郎の凄

みが強烈である。

 

 配列は書き出しに阪東妻三郎、二番手に市川

右太衛門、留め前に片岡千恵蔵、大留め(大トリ)

に嵐寛寿郎が表示される。永田雅一を始めとする

大映首脳の気遣いと慎重な配慮が窺える。 

 

 龍馬が暗殺される悲しいクライマックスを経て

ラストは戊辰戦争の明治政府軍の勝利で維新

の栄光を歌い上げる。

 

 日中太平洋の大戦争を戦い、中華民国への

侵略と連合国との激闘で無理な戦をして沢山

の民と外国人を死に追いやり、実際の国力は

疲弊しているのだが、明治維新に帰って巻き

返しを狙う大日本帝国の焦燥を感じた。

 

 

 

 映画そのものは幕末維新の青春群像として

倒れる者も生き残る者も共に青春の情熱を燃

やした事を確かめ語っている。

 

 

 

ある映画監督の生涯 溝口健二の記録 伊藤大輔出演作品

 昭和五十年(1975年)五月二十四日公開の

新藤兼人監督の記録映画は、牛原虚彦・永田

雅一・伊藤大輔の貴重映像を収録している。

 

 牛原虚彦は小谷ヘンリーの思い出をダイナミ

ックに語る。

 

 ラッパと言われ剛腕で知られる永田雅一だが、

インタビューでは年下の映画人新藤兼人に物静

かに謙虚な口調で溝口健二の思い出を語って

いる。

 

 『維新の曲』は日中戦争・太平洋戦争を為す大

日本帝国が内外で血を流し地球人の生命を奪っ

ていた時代の作品だが、その危機の時期に発足

した大映が、第一回作品として超豪華な配役で臨

んだ写真で、勢いを感じる。

 『坂本龍馬』公開百八日後に田村高廣が誕生し、

『維新の曲』公開四百四十四日後に田村正和が

誕生した。

 

 田村傳吉こと阪東妻三郎にとって龍馬を勤める

ことは、父親になることと同時期であった。

 

 

 阪東妻三郎主演無声映画『坂本龍馬』・トーキ

ー映画『維新の曲』は危機の時代に新たな道を

開こうとして奮闘した熱き坂本龍馬を生きる阪妻

の熱演を伝えるもので、共に輝いている。

 

 

 

 ☆平成二十八年(2016年)二月十五日発表

した『坂本龍馬』感想記事と令和二年(2020年)

十二月十四日発表『維新の曲』感想記事を再編

している☆

 

                         合掌