宮本武蔵 一乗寺の決斗(五)町人のたつき | 俺の命はウルトラ・アイ

宮本武蔵 一乗寺の決斗(五)町人のたつき

『宮本武蔵 一乗寺の決斗』

 映画 トーキー 128分 イーストマンカラー 白黒映像部分あり

  昭和三十九年(1964年)一月一日公開

  製作   大川博

 

 企画   辻野公晴 

       小川貴也 

       翁長孝雄

 

 原作   吉川英治

 

 脚本   鈴木尚之

       内田吐夢

 

 撮影   吉田貞次

 照明   和多田弘

 録音   渡部芳史

 美術   鈴木孝俊

 音楽   小杉太一郎

 編集   宮本信太郎

 

 

 出演

 

 中村錦之助(宮本武蔵)

 

 

 千田是也(本阿弥光悦)


 

 

 

 監督 内田吐夢

 

 ☆☆☆

 小川貴也=小川三喜雄=初代中村獅童=小川三喜雄

 

 中村錦之助=初代中村錦之助→初代萬屋錦之介

 

 

 ☆☆☆

 画像・台詞出典 『宮本武蔵 一乗寺の決斗』DVD

 ☆☆☆

  台詞の引用・シークエンスの考察は、研究・

 学習の為です。 
 東映様にはおかれましては、ご理解・ご寛

恕を賜りますようお願い申し上げます。

☆☆☆

 平成十一年(1999年)九月十一日福原国際東映

 平成十二年(2000年)九月八日高槻松竹

 平成十五年(2003年)五月二十二日京都文化博物館

 にて鑑賞

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錦兄

  武蔵は「持ったところで家も無し、席も定めぬ流寓

の武者修行」と自身の在り方を確かめ、梁楷の墨絵を

頂く資格はないと述べる。

 

   光悦「成程。旅ばかりしている御身体では却って

       お邪魔ですな。」

 

  光悦は京に一庵を設けられてはと勧める。

 

   光悦「この辺りがお気に召したら尚の事。」

 

 

   武蔵「ありがとうございます。まだ家が欲しいと思

       ったことはございません。しかし、この辺り

       御主人の御気風か心が養われるようで惹

       かれます。」

 

   光悦「これはお褒めが過ぎますな。」

 

 光悦は京における町人のたつきを強調する。

 

   武蔵「町人のたつき。」

 

 

 ☆☆☆武者の学び☆☆☆

 

 武蔵は、武者修行の身であり、家を持たぬ存在であ

ると自己を確認する。光悦は京に家を持ってみてはと

勧め、京がお気に召したら尚の事と語る。

 光悦の勧めは有り難いが、武蔵は家を持ちたいと思

ったことはないと述べる。

 剣の道に生きる武蔵にとって、定住の地を求めず、一

日一日が死生の境目を行く道である。安住の地域があ

れば、闘争心を鈍らせるものになっていく。

 光悦は安らかに住する地を見つけ、落ち着いた暮らし

をされてみてはと勧めるが、これは暗に殺伐とした剣の

戦いに身を置かれているから息をつく場を設けられては

と勧めているのかなとも思った。

 

 武蔵は「この辺り」は「御主人の御気風」か「心が養わ

れます」と自己の精神修養の場として頂いていることを

語る。

 

 光悦の住居のシーンは、内田吐夢が芸術・文化・工芸

に学び生き生きと日々を暮らす町人の生活(たつき)を

明らかにしている。

 

 武蔵にとって剣の道が修行であり、町人にとっては日々

の芸術製作・工芸製作・文化発展が修行である。

 

 演劇の巨星であり、ドイツ文学者であった千田是也が重

厚に勤められていることもあってか、光悦役の台詞・言葉・

態度には深い文化への愛が溢れている。

 

 

 

 内田吐夢は『宮本武蔵 五部作』で「平和」のメッセージを

打ち出そうとしたことが研究者・スタッフによって語られてい

るが、光悦住居シーンの長閑で平和的な町人のたつきは、

まさにそのテーマに呼応するものであろう。

 

 「町人のたつき」の言葉を反芻する武蔵。

 

 初代中村錦之助の眼は澄み切っている。

 

 

 

                                  合掌