山中暦日なし(唐詩選)
「暦日」とは、こよみのこと、山のなかでの暮らしには、そんなものは必要ない、というのである。俗世をはなれ、自然に抱かれたのどかな生活を形容したことば。
わがビジネス社会という俗世では、時間を考慮に入れずに生きていくことはできない。近ごろでは、世界の主要都市の現在の時間が一目でわかる、という時計をはめて動きまわっている者すらいる。これほどまでに時間に縛りつけられた生活を、人間はどの程度までつづけられるものなのだろうか。ときには、こよみも時計もない世界に遊ばなければ、とうてい神経がもつまい。(丹羽 隼兵著「中国古典の名言」より)