「遠慮」とは、気兼ねのことではなく文字どおり遠き慮(おもんばか)り、つまり先々を見通した心くばりのこと。遠いところまで見通して対策を考えておかないと、近いところで足をすくわれることになる、というのである。
目先のことにとらわれがちなのは人間の通弊、とりわけ順調な状況にあるときほど、将来への心くばりはおろそかになりやすい。個人に限らず、組織にも同じことがいえるが、では、どのへんまで見通しを立てておくべきなのか、二、三年先か五年先か、あるいは二十年三十年後といった遠い将来か、その判断もまた非常にむずかしい。(丹羽 隼兵著「中国古典の名言」より)