フラットナー・レデューサーの代替目的でBorg45EDⅡに装着するクローズアップレンズについて、5月19日掲載の実験ではケンコー製のACクローズアップレンズNo.3が最もバランス的に優れていると結論したところです。
前回の実験では、センサーに一番近い装着場所(バックフォーカス最小)として、マウントホルダー(Borg7000)にクローズアップレンズを装着し、延長筒S(Borg7602)にクローズアップレンズを内蔵させ対物レンズ側と接続しました。
この時のバックフォーカスは、焦点からレデューサーまでの距離合計(光路長)として59.8㎜でした。
※カメラのフランジバック44.0mm、カメラマウント光路長10.8mm、マウントホルダー5mm
※合成焦点距離を計算してみると278mm(F6.2)となり、0.85倍のレデューサーとして機能することがわかりました。
前回の実験のときは、0.7倍程度ではないかと目測しましたが、実際はそこまでの縮小率はありませんでした。
今回実施したフランジバックを変化させるテストは、BorgフィルターBOXn(光路長15mm)の前面にクローズアップレンズを装着し、前回同様りょうけん座の球状星団M3を撮影してみました。
なお、この時の焦点からレデューサーまでの距離合計は74.8㎜でした。
※合成焦点距離は、計算から263mm(F5.8)となり、0.81倍でした。
No3クローズアップレンズをマウントフォルダーに装着(バックフォーカス59.8㎜)
No3クローズアップレンズをフィルターボックスに装着(バックフォーカス74.8㎜)
右下拡大・バックフォーカス59.8㎜
右下拡大・バックフォーカス74.8㎜
上に掲載した画像の比較から、今回の結果としてはフランジバックを伸ばしたところで急激に像が悪化するようなことはありませんでしたが、改善はみられず、むしろ若干色収差などが拡大する傾向が見られました。
フランジバック60~74mmのあいだにベストポジションがあるかもしれませんが、傾向から勘案して60mmより内側にベストポジションがあるような感じがあります。
既成のパーツでBorgにクローズアップレンズを装着するには、52mm径のメスネジが切ってあるリングに装着することになるのですが、60mmよりフランジバックを短くするためには、既成のBorgのパーツでは実現できません。
簡易な改造としてクローズアップレンズをフィルター枠から外し、カメラマウントアダプターにレンズを内蔵させることが可能です。
これによりセンサーにレデューサーを近接させ、光路長を短縮することが可能となります。
そこで、次回はケンコーACクローズアップレンズ(49mm径)No.4と3のレンズを枠から取り出し、ケンコー製のTリングをプチ改造した実験を行いたいと思います。
ただし、一つ問題があります。
Borg独自のM57ネジ(既成のステップアップ・ステップリングが使えない規格)からディファクトスタンダードであるT2ネジシステムに一発変換するアダプターがBorgにはラインアップされていないようです。
手元にある部品は流用できず、独自の規格でパーツを別途購入させる商売上手なビジネス戦略がとられており、この辺のいけずなスタンスについていけないと感じるユーザーもそれなりに多いのではないでしょうか。
蛇足ですが、ボーグの部品同士を接続するにも、無駄に中間リングを接続しなければならず光路長も伸びてしまうような仕様もまま見受けられ閉口します。
大量販売が見込めない部品で利益をあげるために必要な仕組みであることはわかるのですが、現行においては当初の価格に比較し大幅に値上げした価格設定になっていることを考えると、よりユーザーに寄り添った仕様とすることが、他社との競争においても優位性が得られるのではないでしょうか。
Borgの「使いやすい望遠鏡」といったコンセプトに合致し、世界的にもブランドとしてマニア的な利用者が増えると思うのですが、残念です。
ということで、現状では仕方ありません。
海外製のM57メス-M42(T2ネジ)オス変換アダプターを用意することとしました。
次回撮影のチャンスが得られた時にNo.4 、No.3ACクローズアップレンズの実験を楽しみたいと思います。