もしょもしょ日記632 | 【もしょもしょ日記】ひとを愛することは自分に出会うこと

【もしょもしょ日記】ひとを愛することは自分に出会うこと

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〈ペンデュラム44 〉



ホテルから見える景色が、あまりにも美しかったので、つい、


「食事から戻ってきたら、立ち○ックしよう」と声をかけてしまった。


小鳥遊(たかなし)さんは、ジャケットを羽織ながら「はぁ?」って顔をしている。


「だからぁ!ここから見える夜景、とても綺麗でしょう?これをみながらね、したいの…」


って、これでもけっこうドキドキしながら訴えると、


小鳥遊さんも、ちょっと恥ずかしそうに、そんなことしたことないな、うまく出来るかな、とか呟いている。


その晩は、旅行の最後の夜だった。
わたしは、ホテルから一人で地下鉄にのり、市内の観光名所化しているApple Storeに行った。
小鳥遊さんに、そこで待ち合わせを指定されていた。


小鳥遊さんは、約束から少し遅れてやって来た。


あの辺り、なんと言うのだったろう…もう数ヵ月もたってしまって、地名が思い出せない。
とにかく、ワイタンへ出る手前の高級デパートのあるあたり。
新天地かな…?




大混雑を避けるようにして、ふつうのご飯屋さんへ行く。
小鳥遊さんが、大好きな小籠包屋さんだ。


小鳥遊さんは、いつも、snsでは素晴らしくゴージャスかつ繊細な(要するに最高級の拵えをした)お料理をアップしている。


わたしもそう言うところに行きたい!と常々言っていて、小鳥遊さんも、最初は「○○のどこそこにいこう」「△△にまきこを連れていくからね」とか言ってくれていたんだけれど、結局、いつも連れていかれたのは超庶民的なお店ばかりで、いまでもそれは不満です。


と、言うのは、小鳥遊さんは本来、体質的にとても虚弱で、ご飯もお酒も本当は少しだけで充分なヒトなので、贅沢とかしなくていい性質なのです。(贅沢品が消化吸収できない、摂取するとアレルギーがでる。本人は、アレルギーをお薬で抑えながら生活していた)


だから、わたしといるときには、「味噌汁みたいなコンフォートフードを食べれればいい」って、普通のご飯を食べていました。


「○○に行きたい!」
って言うと、ギラって小鳥遊さんの目が光って、
「まきこ、僕は毎日毎日会食で、高級なメシと酒しか飲めないんだ。たまには、心がホッとするものを喰わせてくれよ」とか言うの。


そんなこと言われたら、ワガママ言えなくなっちゃうじゃないかーーー
そして、彼女といるときには、やっぱりゴージャスなお食事をなさっているよね。


いま、悲しい気持ちになっている。
小鳥遊さん、わたしには都合の良い女にしかしない対応していたんだよね。


えーん😭😭😭❗
バカヤロー!!!
都合の良い女にだって、五分の魂があるんだぞーーー!!!


話はもとに戻ります。


小鳥遊さんは、ウキウキと小籠包やさんで、二つ、せいろを頼んだ。
そこの小籠包、とても好きだったみたい。
ひとつは普通のスタンダード小籠包で、もうひとつは焼き小籠包。


焼き小籠包が名物なんだよ💓って、ニコニコしていた。


それなのに、2つとも普通の小籠包が来て、何度もそのお店に行っているはずなのに、言葉が全く通じないこと自体に腹を立てて、小鳥遊さんはすごく不愉快そうだった。
わたしはおかしくて、つい笑ってしまった。



メニューを写真でとって、これが欲しいって、
レジのおばさんに言えば良いじゃん!
(そのお店は、レジで前払いで、なぜかメニュー表がレジそばになかった)


って、言うと、


いやだ!僕は絶対に中国語は覚えない。英語で通すんだ!!とか、駄々こねて。
子どもみたいだった。


たぶん、本当にそのときの小鳥遊さんは子どもだった。


ワイタンの素晴らしい夜景を眺めて、バーでワインを飲み、またホテルに戻る手前で、テレビ塔を眺めた。







わたしはいつまでも夜景を眺めていたかったのだけど、小鳥遊さんがふいに、


「さあ、これから部屋に戻って、立ち○ックしよう!」と大声で言い放った。


まるで、これからジョギングしよう!というくらい元気で快活な笑顔でおっしゃったのは、とても愛くるしくて好ましかったけれど、


日本語も勉強している中国人がたくさんつどう、あるいは日本人駐在員が大勢行き交うこの街で、それを大声で言うとは何事か!?と一瞬焦りました。


「ち、ちょっと!声が大きいわよ。頭の賢いあなたに、そんな、変な言葉を教えたのはわたしだけれど、あなたも、もう少しご自分の立場を弁えてください」


と、たしなめると、


子どもに帰っていたあなたは、どうして叱られているのかわからなかったみたい。
キョトンとした顔をしていて、わたしは、あなたといて初めて嘆息した。