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『しばらく留守にする
帰ったら話をしよう』
学校を終えて帰宅した宮部渉(みやべわたる)の目に飛び込んできたのは、父・賢治が書いたと思われる書き置きだった。
リビングのテーブルの上に紙切れ一枚を残し、その姿は忽然と消えてしまっていた。
「おいっ! 何考えてんだよ!! しばらく、ってどう意味だよ!!」
大急ぎでズボンのポケットから携帯を取り出し、父に電話をかける。
だが、聞こえてきたのは、『お客さまのおかけになった番号は電源が入っていないか電波の届かない……』、というアナウンスだった。
これでは一方的に、父から連絡が来るのをひたすら待たなくてはいけない状況だ。
渉には、普段連絡する用もないので番号を押すのさえ久々なのに。
母親が3年前、渉が中学生のときに亡くなって以来、電話はおろか家で会話すらろくにない親子関係だった。
同じ屋根の下、ただ一緒に寝起きしてるだけの父と息子――。
それでも息子に対する裏切りは許せなかった。
クソ親父ふざけやがって……! 渉は携帯を握り締めたまま、ふつふつと沸いてくる怒りと混乱で動けずにいた。
それはほんの少し前、家の門をくぐろうとした時だ。
「あの…、渉ちゃん」
「あ、こんばんは!」
家の大家さんの寺井のおばちゃん、子供の頃から渉を可愛がってくれている、優しくて穏やかな老女だ。
「あのね、ちょっと……、いいかしら?」
「はあ」
「もうすぐ月末じゃない? あのね、だから……」
月末、と聞いて渉の心にさっと緊張感が走る。
「あっ、家賃! そ、そうですね…、家賃……っ」
「うんうん、お家賃よ、お家賃」
「はあ……」
渉の家の家賃は今どき珍しく大家さんに直接払うシステムだった。
先月、父がうっかりお金を持っていかないまま月が変わってしまい、寺井のおばちゃんの息子が怒鳴り込んできたのは、まだ渉の記憶にも新しい。
『滞納なんて冗談じゃありませんよ!!』
都心の銀行に勤めているという息子はものすごい剣幕でわめきたた。父は飲みに出て留守で、何も知らずに応対に出た渉はひたすら頭を下げるしかなかった。
『今度やったら出て行ってもらいます! いいですね!?』
払われる予定だった家賃の封筒を引っつかみ、荒々しく門を閉めて去っていった後ろ姿がまざまざと思い出される。
おばちゃんが後ろから必死で取り成してくれてはいたが、ほとんど役に立たなかったのだ。
あの時、自分が家賃を渡しに行っていれば……、どれだけ後悔したことか。(続)
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はい、長編用アップです。
前回記事で書いたトホホな部分を直しました(涙)
ちっとも重要ではない部分につまづくとか、「お前の社会常識はどうなってるんだ」と、やっぱり恥ずかしいです。
このお話は恋愛系で多少のラブシーンが入ります。
私には過激な描写とか無理なんじゃないかと思ったりもしますが、が、頑張ります。
このお話はNL(男×女)でもBL(男×男)、どっちでも通用しちゃうなと、筋を練ってて激しく感じますね。
たとえばBLだったらBLとしての必然性が皆無………
別に男じゃなくてもいいじゃん、そう突っ込めると自分でも苦笑です。
ああ、いえ……、そういうあやふやな感覚で書いちゃいけないですよね。
自分の書いたものに自信がが全くないせいかもしれません。
だから私がちゃんとキャラさんの描写とか感情表現をきちんと伝えられるようにならないと。
短編の方、数を一つでも書いて言葉を磨いていきたいです。
文章上手になりたい!
とりあえずラブシーンをもしUPするときは、限定の形で普通のものと分けて出すつもりです。