真尋はぼんやりここに至るまでの経過を思い出す。
そう、それはまさに不測の事態だった。
「酷え降りだ」
昼前に降り始めた雨は次第に強まり、豪雨の様相を呈していた。
分厚い雲と停電で夕方のように暗くなった部屋から外を覗いて、立花も真尋も驚いた。
「こんな大雨は初めてだぁ。こりゃたまげた」立花の弟も頷く。
東京で刑事をしている立花の誘いで、彼の故郷である信州の山里深い、とある村に先ほど到着したばかりだった。
山はおろか向かいの家さえ叩きつける雨の霞で見通しはきかず、道路には川のような流れが生まれ、せっせと泥水を運んでいく。
「ちょいと立花さんよー」玄関が突然開き、転げ込むように年配の男が入ってきた。
「おや、役場の…村上さん!どうしたんです?」
全身ずぶぬれであっという間に玄関のたたきが水浸しになる。
「大川の増水がえらいことになってるんだよ。あれは溢れるぞ………!」
「ええっ、」
「この降りはどうも普通じゃねえ。俺ぁ消防団に集まってもらおうと思ってるんだよ」
「そうですね、氾濫したら大変ですから。連絡網…あ、電話がダメなのか……!、じゃあ広報車で呼びかけていくようですね」
「んだな。川沿いだけじゃなくて山沿いの住人も公民館に集めた方がいい。あんた済まないが広報車でまわってくれんか」
「わかりました。すぐ出かけます。」
「すまねえな、よろしく頼む」
そんなわけで慌しく家に残っていた全員で公民館に移動してきたのだが、避難してこない住人が多数いるのがわかり、手分けして連れてこようという話になった。 高齢化・過疎化の激しさ故の人手不足はここでも深刻で、見かねて真尋と立花も協力を申し出た。
容赦なく叩きつける最悪の視界の中、ぬかるんだ山坂を注意深くワゴンを走らせ、時折地図を確認しながら担当の家々を取り残された住人がいないか周っていく。
そして最後の目的地が、………ここだった。
問題の家は地図の一番端、林を切り開いてこしらえた急斜面沿いにあって、見るからに危ない雰囲気だ。
車から降りて、雨の雫が流れ込み霞む目をこすりながら家の敷地に入る.。
今までそうしてきたように玄関先で声を張り上げたら棟続きの部屋のカーテンの隙間から顔が覗く。
「すみません!開けてください!!」驚いて玄関の戸をどんどん叩くと、しばらくして暗がりからぬうっと老女が姿を現した。
「あのっ!避難指示が出てるんです。僕が公民館まで………」
「馬鹿言うんじゃないよ!!縁起でもない!!!」
まだ言い終わらぬうちにすごい剣幕で怒鳴られ、真尋は息を呑んだ。(続)
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さて、続きの2話目です。
実はこれ、細かい経由とか会話なんかはしょってもいい部分なのでは、と私には思えてつなるかどうか悩みました。
もっと文章を簡素に縮められないかなーといまだにいじくってます。
どうも私は文章をダラダラ続けてしまうようです(´・ω・`)