今回はBリーグからシーズン総評第11弾のアルバルク東京編。
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今季開幕前総評はこちら
チーム評
今季の東京の編成やロスターについて見てみると、ルカHCからアドマイティスHCに交代があり、小島、菊地、テイラーが退団。
新加入は藤永とコブスでスタートし、短期契約などもありながら岡本は途中加入で最後まで残った。
この編成における東京の失敗はなんと言っても日本人PGで思うような選手を獲得できず、日本人PG層はリーグ下位レベルになってしまったことだろう。
今季はPGの獲得に苦労するチームが多く、資金力最強の東京でも笹倉と藤永しか揃えられず、PG起用するには難しい練習生の岡本にも頼らざるを得なかったことからもチームが増えて場外戦の難易度も上がっていることが分かる。
だからこそ東京は帰化選手がいることを活かして外国人選手枠の1つをPGであるコブスに充て、また田中の存在で薄いPG層をカバーするつもりだったと思われる。
しかし、今季の東京は怪我人が多発し、PGが全員1度は離脱し、その上で田中も序盤のみの出場で残りはシーズン全休となるなど危惧していた自体が起きてしまい、最終的に純粋なPGは笹倉のみで小酒部がPG起用されるなど苦肉の策に出るしかなかった。
また、個人的にはコブス獲得についても開幕前総評やこちらのユーロバスケットの記事で述べたように3PAの少ないコブスより新外国人選手予想で挙げたようなスピッスのような3Pを打ってくる選手の方が東京には良かったのではと感じる。
コブス自体の実力は間違いないが、昨季から東京は3Pのアテンプトと確率がリーグ下位だったことによりインサイドも締め付けられることでミドルが多くなるバスケを強いられていた部分があり、それを解決するためには3Pを打ってくれる選手が必要だった。
ただ、伊藤GMは3Pを打つことで解決するのではなく、ミドルが打てるディフェンスなのでミドルを打って高確率で決められるコブスでミドルの多用を継続する人選を取った。
昨季からガードの外国人選手はセオドア、テイラー、コブスとゲームメイクが得意だがシュートが得意でない選手か3Pを積極的に打つわけでない選手を獲得しており、伊藤GMの好みなのかもしれない。
そんなPG層の薄さという不安要素を抱えてシーズンインし、開幕後は怪我人連発という緊急事態にも直面しながら東京は42勝18敗で勝率7割とRSの成績は昨季より落ちてしまった。
しかし、プレイオフでは昨季より厳しい状況でありながら昨季負けた島根に先勝を許したところから逆転でSF進出を決めるなど昨季のリベンジを果たした。
ブレイクをほとんど出さず、ペースを徹底的に抑えて相手の攻撃回数と失点を減らすヨーロッパのトップチームでも多く見られるディフェンス重視のバスケは見事だった。
怪我がなければ優勝も十分あり得たチームだろう。
個人評
主力選手や気になる選手について見てみると、
・サイズ
昨季とPTはほとんど変わらないが、終盤から明らかに負担が増えていた。
それでも強度や運動量の落ちないプレイは変わらず、個人評にリーグトップクラスの外国人選手と思っている。
オフェンスではポストプレイが得点の中心でフックはペイント外からでも打ってくる。
その他にダイブやカット、ミドルも得点パターンとしている。
ペイントを攻めることでFTもチームで最も貰っており、昨季より確率は下がったが、ビッグマンとしては申し分ない75%以上で決めてくれる。
リバウンドも意識が高いだけでなく強さも持ち合わせており、特にウイングスパンを活かしてのORは脅威でプットバックやチームのセカンドチャンス、サードチャンスに繋げる。
ディフェンスでもポストディフェンス、ペリメーターディフェンスともに高い水準を誇り、ブロックとスティールは昨季より増えた。
怪我人が多発して苦しい中でも出場し続けた鉄人ぶりで東京を支えた大黒柱だった。
・カーク
年々PTが減っており、今季は平均得点が10点未満になるなどチームが変わるにつれて役割も大きく変わった。
オフェンスでは得意のダイブが昨季同様にディフェンスがドロップすることで封じられ、かと言ってシュートを積極的に打つわけでもドライブを仕掛けるわけでもないのでペリメーターで放置気味なことが多かった。
その結果、ダンカースポットで待機してのC&Fやプットバック、苦手なポストプレイでのアタックなど選択肢が狭まり得点も伸びなかった。
FTも来日以降最低確率を記録してしまい本来持っているはずの力をオフェンス面で発揮出来なかった。
リバウンドではORが強力である一方でDRはサイズやロシターと比べて大幅に少なく、リバウンド面でも期待値を下回っていると感じた。
ディフェンスでもペリメーターディフェンスではクローズアウトに出て行けずシュートを打たれる、出て行ってもシューティングファウルをする、あるいはドライブを簡単に食らうなど厳しかった。
ポストディフェンスでも悪いわけではないが、普通に押し込まれてフィニッシュされるなどかつてほどの鉄壁ぶりはなくなり、カークよりサイズのないロシターやサイズもポストディフェンスが出来るので2人と比べて優れている部分が少ないのではという感じになってしまった。
・コブス
やはりスコアリングとゲームメイク両面でハイレベルなすごい選手だった。
スコアリングではアテンプトは少ないがフリーで打って確実に決めてくる3Pは4割以上の確率で、シュートの入らない東京でトップの確率だった。
3Pはあまり打たない代わりにミドルは多く、P&Rやジェイルを駆使してのプルアップは芸術的で確率も非常に高い。
ドライブからのレイアップも本来はコブスの得点であるが、やはりチームで3Pが入らないためにドライブするスペースが少なく想像していたよりドライブは見られなかった。
ドライブが少ないことでFTも予想していたよりアテンプトが少なく、確率も8割を超えると思っていたが8割を切ってしまった。
ゲームメイクではP&Rアクションを中心に流石の活躍で各選手にアシストを供給。
TOも1個台に抑えており、PG層の薄い東京において非常に大きな存在だった。
・ロシター
個人的に選ぶNo.1帰化選手で今季も素晴らしい活躍だった。
オフェンスではダイブやカット、ポストプレイで得点。
特にミスマッチ時にはハイポストでポストアップし自身のフローターやカッターへのアシストに繋げるなど巧さは健在。
ボール運びやプレイメイクにも参加しており、アシストはコブスに次ぐ数で器用さも兼ね備えている。
FTが苦手な選手であったが、今季は83%にまで栃木時代からは考えられない高確率となっており、来日以降でも個人最高確率かつチームでも最高確率で安心してFTを見ていられる選手に変貌を遂げた。
リバウンドも従来通り意識が高くOR、DRともに取りまくってチームトップのリバウンダーとなった。
ディフェンスでもポストディフェンス、ペリメーターディフェンスともにハイレベルでバックファイアやドリブルスティールも上手い。
その上ファウルとTOも少ないなどシュート以外に弱点らしい弱点の少ないロシターが帰化選手で使えるのは反則レベルであり、大きなメリットである。
・安藤
アドマイティスHCになって1番変化を感じる選手であり、昨季まではスポットアップのシュートが多い印象でドリブルも突いていたが、今季はドリブルが減りスクリーンを使いまくってオフボールでガンガン動いていた。
チームとしても安藤に打たせる形を多く取っており、その結果3PAが増えて確率も大きく上がった。
ただ、まだシューターとしては高いと言える確率ではなく、多く3Pを打っているのでもう少し確率が欲しい。
ドライブからもミドルやレイアップに繋げて得点を挙げる。
FTは久しぶりに8割を切っており、シューターとしてはやはり8割は決めて欲しい。
ディフェンスでは豊富な運動量と強度を持ち合わせたフィジカルなディフェンスでオンボール、オフボールともに優秀でマッチアップ出来る範囲も広い。
特に執着心が見事なチェイスは妥協しない姿勢が見えて惚れ惚れする。
・小酒部
身体能力抜群でオフェンスではミドルとドライブでの得点が目立った。
3Pは昨季より確率が上がっているが、それでも確率がかなり低く、2シーズン前の4割以上とは言わなくとも35%くらいは決めて欲しい。
ディフェンスではポジションを問わず相手の日本人キープレイヤーにマッチアップするカバー範囲の広さとインテンシティを持ち合わせて削りにかかる。
スクリーンをかわすのも上手く、安藤とともにバックコートのディフェンスの要だった。
・吉井
怪我人が出たことでPTが出た昨季と違い今季は元から中位ローテーション入りし、開幕前総評で述べたように今季は3番でも起用されるなど役割も増えた。
オフェンスではカットやドライブ、シールしてのC&Fなどで得点していたが、確率は良くない。
また、シュートが苦手故に完全に放置されて打たされており、それでも3Pが3割を切るなど、シュートの入らない東京においてフリーで打てる吉井が決められないのは厳しかった。
またFTも苦手で確率は55%とかなり低く、得点チャンスを逸しており、オフェンス面の貢献は薄い。
一方、ディフェンスではニュービルやビュフォード、ヤングやフォトゥというように外国人選手相手でもガードからビッグマンまでマッチアップする驚愕のカバー範囲の広さを見せた。
しかもペリメーターでもローポストでも外国人選手相手に穴になるわけでなく、ヤング相手には1人でポストアタックを何度も守り切るなど凄じいディフェンス力を披露した。
ファウルが多いが、外国人選手とのマッチアップが多いことを考えると仕方ない部分かもしれない。
ディフェンス面での実力と活躍は昨季から申し分ないと分かっているので今後はオフェンス面での活躍も見たい。
・ザック
昨季良い確率で決めていた3Pの確率が大きく落ちてしまった。
ただ、ポストアップからのフィニッシュやフェイドアウェイは良い確率で決まっており、フィジカルで優位に立てる利点を活かしている。
ディフェンスでもスピードがいない代わりにフィジカルで外国人選手と対抗していた。
・平岩
バックアップとしてPTは非常に限られた中でも準備を怠らず体を張り、リバウンドに飛び付き、交代選手が見えたらファウルですぐ交代に動くなど役割を全うする姿勢が好感を持てる。
平岩が得点してチームが盛り上がる理由がよく分かる。
主要チームスタッツ比較
主要チームスタッツについて昨季と今季で数字や順位について比較してみると、
・平均得点
平均得点は昨季が80.9点でリーグ9位、今季は77.3点でリーグ17位に得点と順位が下落。
怪我人が多発したことやペースが落ちたことなど要因は様々あると思うが、下落幅がかなり大きい。
ディフェンスに主軸を置いているチームなのでこれだけ得点が低くても勝てるのは昨季の栃木を思い出す。
・平均失点
平均失点は昨季が72.5点で少ない順でリーグ2位、今季は71点でリーグ1位に失点が減って順位も上昇。
元々失点が少なかったところから更に減らして最小失点となるなどディフェンスは相変わらず素晴らしかった。
・平均3P
平均3PAは昨季が20.2本でリーグ22位、今季は21本でアテンプトは増えたがリーグ24位に落ちて最下位は変わらず。
平均3PMは昨季が6.8本でリーグ22位、今季も6.8本でリーグ24位に落ちて最下位は変わらず。
平均3P%は昨季が33.6%でリーグ19位、今季は32.4%でリーグ19位に確率は落ちたが順位は変わらず。
昨季からの弱点と課題であった3Pは依然アテンプトが増えても少ない上に確率が更に落ちるなど悪化してインサイドにも皺寄せが行ってしまった。
絶対に改善が必要な部分だろう。
・平均2P
平均2PAは昨季が45.2本でリーグ1位、今季は42.7本でリーグ2位にアテンプトと順位が下落。
平均2PMは昨季が23.4本でリーグ3位、今季は21.5本でリーグ7位に成功数と順位が下落。
平均2P%は昨季が51.7%でリーグ13位、今季は50.2%でリーグ19位に確率と順位が下落。
アテンプト、成功数、確率の全てが下がっているが、やはりシュートが入らないことでディフェンスは収縮気味になるので2Pの確率が大きくおちた。
・平均FG
平均FGAは昨季が65.5本でリーグ9位、今季は63.7本でリーグ19位にアテンプトと順位が下落。
平均FGMは昨季が30.2本でリーグ7位、今季は28.3本でリーグ19位に成功数と順位が下落。
平均FG%は昨季が46.1%でリーグ10位、今季は44.3%でリーグ17位に確率と順位が下落。
2Pと3Pを見れば当然だが、FGもアテンプト、成功数と確率の全てが昨季より悪化しており、精度や効率面で見れば東京のオフェンスはリーグでも下位レベルということが分かる。
・平均FT
平均FTAは昨季が18本でリーグ7位、今季は18.5本でリーグ4位にアテンプトと順位が上昇。
平均FTMは昨季が13.7本でリーグ8位、今季は14本でリーグ1位に成功数と順位が上昇。
平均FT%は昨季が76.3%でリーグ6位、今季は75.5%でリーグ5位に確率は下がったが順位は上昇。
FTはアテンプトと成功数と確率の全てが上がっており、FGの不振をFTでカバーしたり補っていることで得点を底上げしている。
東京にとって重要な得点源であり、強さの秘訣でもあるだろう。
・平均リバウンド
平均オフェンスリバウンドは昨季が11.9本でリーグ6位、今季は13.5本でリーグ2位に本数と順位が上昇。
平均ディフェンスリバウンドは昨季が27.2本でリーグ3位、今季は25本でリーグ19位に本数と順位が下落。
平均トータルリバウンドは昨季が39.1本でリーグ3位、今季は38.5本でリーグ6位に本数と順位が下落。
ビッグマン3人がORが強いので上位であるが、相手のアテンプトが少ないとはいえディフェンスリバウンドは意外に下位で改善の余地がある。
・平均アシスト
平均アシストは昨季が19.6本でリーグ17位、今季は19.1本でリーグ21位に本数と順位が下落。
やはりシュートが入らないことにはシュートそのものへのアシストも付かない上にインサイドでの合わせもしにくくなるのでアシストの本数自体は減ってしまう。
ペースが遅くアテンプト自体が減った影響もあるのかもしれない。
・平均ターンオーバー
平均TOは昨季が9.9個で少ない順でリーグ1位、今季は10.8個でリーグ4位に個数が増えて順位も下落。
依然ミスが少ないチームに変わりないが、10個未満に抑え続けていた記録が途切れてしまった。
・平均スティール
平均スティールは昨季が6個でリーグ17位、今季は6.4個でリーグ16位に個数が増えて順位も上昇。
スティールはリーグ全体で減っており、チームで見ても減っているチームが多い中で東京は数を増やす珍しいチームとなった。
・平均ブロック
平均ブロックは昨季が2.4本でリーグ15位、今季は2.8本でリーグ6位に本数と順位が上昇。
ブロックも一気に増えてリーグ上位になっており、スティールともどもディフェンスで失点を減らせた理由が分かる。
・平均ファウル
平均ファウルは昨季が16.8個で少ない順でリーグ3位、今季は18.6個でリーグ17位に個数が増えて順位が大幅に下落。
ファウルが少ないのにディフェンス強度が高いのが東京の強みであったが、無駄なファウルが増えており、FTでの失点に繋がってしまった。
・オフェンシブレーティング
オフェンシブレーティングは昨季が115.1でリーグ7位、今季は113.5でリーグ6位に数値は下がったが順位は上昇。
先述したようにFGの精度や少ないアテンプトをFTで補うことでリーグ上位のレーティングとなっている。
・ディフェンシブレーティング
ディフェンシブレーティングは昨季が103.2で良い順でリーグ4位、今季は104.4でリーグ5位に数値と順位が下落。
意外にも順位はが下がっており、やはりFTでの失点や主力に怪我人が多く出たことも関係してそうだ。
以上24項目中、昨季より順位が下落したのは15個もあり、大幅に落ちているのも多い。
スタッツ順位の分布は、上位が11個、中位が1個、下位が11個で極端な結果に。
改善が必要なのは3PA、3P%、2P%、DR、アシスト、ファウルの多さと上位チームの割には課題が多く感じる。
逆にこれだけ改善要素があって怪我人も多かった上にこの強さなら、弱点や課題が改善されたらどれだけ強いのかという楽しみも大きい。
来季編成
東京は現時点でカーク、コブス、笹倉、岡本、藤永の退団が確定しており、田中との交渉継続が情報として確定している。
個人評やチーム評で述べたように年々活躍が減っているカークや弱点の3Pを強化するには適していないコブス、リーグ下位レベルのPG陣の放出は予想通りかつ妥当と感じる。
絶対に残すべき選手は交渉継続中の田中とバックアップの平岩含めて去就の発表がない全選手だろう。
実際に今の時点で発表のない選手や田中は残留すると思うが、気になるのは今季上手く補強出来なかった日本人PGである。
ここでまた良い補強が出来ないと外国人PGが来て田中が残っても厳しい状況は変わらないわけだが、流石にシーズン終了後すぐにPGを一気に放出したので見込みがあると予想している。
また、外国人選手も1人はガードだと思うので、カークと入れ替わる選手とともに高ランク選手を獲得し続けた東京がどんな2人を選ぶのか楽しみである。
流石に3シーズン連続でシュートに苦しむ東京は見たくないのでシュート力ある選手の獲得を願いたい。