シーズン総評第9弾はアルバルク東京。


開幕前総評はこちら『Bリーグ21-22シーズン開幕前総評 アルバルク東京』Bリーグ開幕前シリーズ第5弾はアルバルク東京。昨シーズンは不本意な結果になってしまったものの開幕前のコロナ感染による1ヶ月の遅れと、シーズン中の感染による選手…リンクameblo.jp



​チーム評と個人評


昨季オフェンスではリーグトップクラスの破壊力と精度を誇っていた一方で、ディフェンスでは東京らしからぬ崩壊が多々あった。


今季はメンバーの入れ替えもありディフェンスは従来の東京のスタンダードまで建て直したが、今度は昨季好調だったオフェンスで苦戦が見られた。


オフェンスでの苦戦の原因は開幕前総評で書いたようにトーマスとジョーンズの退団によるシュート力の喪失がまず第一。


特にトーマスはつい最近もヨーロッパNo.1プレイヤーのミロティッチとマッチアップしながらチーム最高得点でバルセロナ相手にバイエルンを勝利に導くなど別格の選手だっただけにオフェンス面での影響は大きい。


そして開幕前から指摘していたバランスの悪い外国人選手編成と日本人選手のシューティング不調も重なり全体的にシュートが入らず相手に中を固められることが多かった。


そうすると東京のお家芸でもあったビッグマンのダイブもドロップされるので当然決まりにくくなり、フリーで打てるミドルで打開する形が多くなってしまう。


ただ、その窮屈で苦しいバスケに追い込まれても勝ってしまうのが流石東京というべきであり、今季は昨季より3試合少なかったが、勝ち星が7個増えて負け星は10個減らす大幅な向上となった。


昨季は不運が重なりに重なった部分もあるので一概に向上と言い切れないかもしれないが、ディフェンスは明らかに依然の東京に戻った。


しかし今季も不運は続き、終盤でのカークとロシターの怪我はチームに大打撃を与え、プレイオフにロシターは出られなかった。


それでもファイナルに残った栃木にカークとロシターを欠いて勝ったり、プレイオフではホームの島根相手にロシターなしで40点近い差を付けて1勝したりと名古屋同様に万全な状態だったら優勝も狙えたのにと思わずにはいられないチームだった。


個人では新加入のサイズが得点とリバウンドで圧倒的チームトップを記録し、それでいてTOは1本台という新天地でも安定した高水準で活躍。


ポストプレイやORからの得点が主な得点パターンでシュートは苦手な選手だったが、今季は平均1本以上アテンプトがある選手では東京で1番の確率で3Pを決めており、さらにショートロールからのミドルも高確率で決めた。


サイズまでシュートが従来通りの確率だったら東京は本当に厳しかったかもしれない。


ディフェンスでもペイント内はもちろんペリメーターでも従来通り素晴らしいディフェンス力を発揮し、今季の東京の救世主だった。


カークは組む外国人選手のタイプが今までと変わったことや帰化選手が入ったことで役割も大きく変わりアテンプトと得点、リバウンドが大幅に減少。


それでもチーム2位のスコアラーであり、ORでも相変わらず頼れる存在だったが、腰の影響からか本調子ではないように思えた。


特にシュートがショートすることが多く、今までならミドルはかなり高い確率で決めていたところが今季は前方にミートでステップしてからのシュートはほとんど入ってなかった。


カークのシュートが入らず、サイズのシュートが入ったのは開幕前に予想していた光景とは真逆であり、サイズ、ロシター、テイラーの時間帯よりもロシター、カーク、テイラーの時間帯の方がフロアバランスが悪くなるのは予想外だった。


チーム全体でもシュートが入らなかったことでカークのダイブが難しくなり、昨季はダイブから多く貰っていたFTが減少した。


帰化選手のロシターも栃木時代とは役割が変わったが、確率が落ちたとは言えビッグマンとしては高い3P%に強いリバウンド、来日以降2番目のFT%まで上げてTOも1本前半台に減少し±は断トツトップ、更にディフェンスも素晴らしいなど申し分ない。


ミスマッチをハイポストから突くのが仕掛ける割にあまり上手くないのとフローターでないと中距離から流れで打てないのが惜しい。


緊急の獲得となったテイラーは代役とは思えない予想外の活躍でセオドアがそのまま入るより良い結果になったと個人的に思っている。


北海道時代のように得意ではないスコアリングを無理にすることが減ったので得点は減ったが、FG%は上昇し、なによりPTが平均3分しか減ってないのにTOが平均1本も少なくなっているのは北海道と違って適性に合わせた使い方に近付いたのが大きい。


苦手なシュートでも3Pは35%近く決めて本来東京でシュートが期待されていた選手の大半より高い確率であり、プルアップからのミドルもよく決まっていた。


P&Rからの組み立てが得意なコンダクタータイプのセオドアに対してキックアウトが得意なテイラーはシュートの上手い選手の揃っていた昨季のチームの方がより活躍出来ていたと思うが、プレイスタイルやメンバー的に相性があまり良くないと思われる今季の東京で想像以上の結果を残した。


日本人主力選手では田中がPGとしての器用が増えたことでPTは減っても負担は増えているような印象だったが、3P%を昨季より大きく上昇させ、ドライブやミドルで積み重ねる2Pは相変わらずの高水準を維持。


特にP&Rからの展開は純粋なPG含めた日本人選手でもトップクラスであり、芸術的なミドルゲームや自身のドライブ、ロールマンへのポケットパスやロブパスなど圧巻。


チームでシュートが入らなかったことで中を固められビッグマンがダイブしにくかった今季の東京は中でも外でもアシストが付きにくいために田中のアシストも減ってしまった。


ディフェンスでも外国人選手やアジア枠選手含めてもリーグトップクラスのディフェンス力を持っており、全員が高いディフェンス力を備えている東京のアウトサイド陣の中でも一際目立つ。


日本人選手で±はトップであり、様々な分野で高水準な田中は今季も健在だった。


新加入の安藤は期待されていた3Pで新人時代に次ぐワースト%でシューターとしてはあるまじき低確率で須田の44%からの落差は東京にも安藤にとっても想定外だっただろう。


実質的にトレードのような形になった須田と安藤がともに新天地で大きく3P%を落とすなど互いに思い通りに行かなかったが、シュート以外でも名古屋で良くなかった須田に比べて安藤はディフェンスでは見事な働きをしていた。


さらに開幕前に予想していた通りハンドラーとしても安藤が使われ、P&Rユーザーとしての頭角を現しTOが減ってアシストが昨季より微増した。


3Pだけ残念だったので来季は実力的には38%以上、最低でも35%は決めて欲しいところ。


小酒部も昨季入りすぎとも言える高確率な3Pから今季は入らなさすぎの低確率へ転落しチームのフロアバランス悪化の要因にもなった。


入らない故かフリーで3Pを打てる場面でもわざわざミドルに切り替える場面も散見されるなど迷いがプレイの精度にも影響を与えていたのかもしれない。


一方でディフェンスでは他のアウトサイド陣同様に素晴らしく、スクリーンをかわしての泥臭いチェイスやフィジカルコンタクトは見事だった。


外国人ビッグマンの怪我により終盤からまとまったPTを得るようになった吉井は東京のみならずリーグ全体で個人的に1番インパクトを与えた選手だった。


シュートやFTは入らなかったが、フィジカルを使ったドライブやポストプレイで外国人選手相手でもフィニッシュまで持って行け、日本人選手には難しい場面でも楽々ダンクする身体能力など驚かされた。


なによりサイズのヘルプもあったとは言え外国人選手相手でも穴にならないポストディフェンスとペリメーターディフェンス、クローズアウトやカバーもしっかりするなど素晴らしかった。


練習生で昨季出場はなかったとは思えない選手であり、東京がしっかり育てている証でもあり、いずれは3番起用でも見てみたい楽しみな選手だった。


もう1人なかなか出番のなかった平岩も出ればディフェンスはシェーファー除く他の日本人ビッグマンとは雲泥の差で東京の育成力の高さが窺える。


オフェンスではポストプレイはまずまずだが、ダイブのタイミングなどからポケットパスに反応出来ない場面が見られ、ここもどこまで伸びるか楽しみだ。


外国人選手の枠が増えれば平岩のような選手もアウトサイドの外国人選手を使うためにPTが伸びるのにと思わざるを得ない。


その他日本人選手ではザックがシュートで苦しんだ東京の中では高確率で3Pを決めて活躍。


小島も3P%は良かったが、癖なのかフリーの場面でもフェイクを入れてディフェンスのいる方にドライブする無駄なプレイが治らない。


菊地は年齢からかPTが大幅に減り、笹倉は思ったよりPTが伸びなかった。


​チームスタッツ比較


まず平均得点は昨季83.1点でリーグ7位、今季は80.9点で9位と得点力やシュート力のある選手が移籍したのとフロアバランスの悪化もあり低下。


平均失点は昨季78.7点でリーグ9位と東京にしては多かったが、今季は72.5点で2位と従来の東京に戻ったかのような大幅改善に成功。


得失点では昨季プラス4.4だったところが今季はプラス8.4にまで貯金が倍近くに大幅増加。


得点が減っても失点を大きく減らすことで全体にプラスをもたらした。


3Pは昨季平均22.7本でリーグ13位のアテンプトから38.5%で確率1位とアテンプトは少なくてもシュート力は見せつけていたが、今季は平均20.3本でリーグ最下位のアテンプトから33.6%で確率18位と大幅な悪化。


シュートが得意な選手がいなくなったのでアテンプトが減った上にシュートが入るはずの選手も入らなかったので両方で凄まじい下げ幅を記録してしまった。


この3Pの部分が今季オフェンスで苦戦した原因であり、せめて小酒部、安藤が従来通り決められていればもう少し楽に戦えただろう。


ペイント内FGでは昨季28.9本でリーグ平均16位のペイント内アテンプトから57.4%で確率8位、今季は29.7本でリーグ15位のアテンプトから56.7%で確率14位とアテンプトは増えたのに確率は下位に下がってしまった。


外国人選手は今季の方がインサイド寄りなのにシュートが入らないことで中を固められてしまい、リーグトップクラスのビッグマンが集まった効果はペイントアタックの点においては薄かった。


FGは昨季64.4本でリーグ平均12位のアテンプトから47.3%で確率6位と精度が高かったが、今季は平均65.5本でリーグ同率7位に増えたアテンプトから46.1%で確率は10位に転落。


ここもシュートが入らないことから始まる諸々の影響が出ており3P、ペイント、FGの全てで確率が悪いのはケリー不在によって各項目に影響が出た今季の渋谷と似ている。


ただ、東京は渋谷ほどは悪くなかったのが幸いしており、それはタレント力の違いから来るものなのかもしれない。


FTは昨季平均17.7本でリーグ10位のアテンプトから75.7%で確率6位と高確率だったが、今季は平均18本でリーグ8位のアテンプトから76.3%で確率6位にアテンプトを増やしつつ確率アップにも成功。


ORは昨季平均10.3本でカーク離脱などもありリーグ12位、今季は平均11.9本で6位に本数と順位が大きくアップ。


トータルリバウンドでは昨季平均34.9本でリーグ16位とこちらもカーク離脱などで少なかったが、今季は平均39.1本で3位と本数と順位を爆上げ。


どちらもサイズ加入がこれだけの効果をもたらした。


アシストは昨季シュートがチームでポンポン決まっていたこともあり平均21.2本でリーグ5位、今季はシュートが入らず中を固められたことでオンボールでの打開が多かったために19.4個で17位と開幕前には予想出来なかった少なさだった。


TOは昨季平均9.3個で断トツリーグ1位の少なさだったが、今季も平均9.9個でリーグ最少をキープ。


収縮したインサイドでのポストプレイが増えたことなどもあり昨季より増加してしまったが、チーム最多でも田中とサイズの1.6個と非常に少なく、唯一平均10個未満に抑える丁寧さは変わらず。


ファウル数は昨季平均17.9個でリーグ8位の少なさだったが、今季は平均16.8個で3位とディフェンスの強度が上がって失点を減らしつつファウルも大幅に減らす見事な向上を見せた。


オフェンシブレーティングは昨季110.2でリーグ4位の効率だったが、今季は107.9でリーグ6位に数値も順位も後退。


正直シュートが入らず、ミドルを多投していた東京がこれだけ効率で上位に位置しているのは意外であり、結局は流石東京というところに落ち着くんだと関心さえしてしまう。


シュート%で渋谷と似ていると触れたが、効率で比べると下位の渋谷とは雲泥の差であり、ミドルを戦術として使ってこの効率上位を実現出来るのは信じられない。


ディフェンシブレーティングでは昨季104.8でリーグ10位と東京らしからぬ数値と順位であったが、今季は96.9でリーグ3位に大幅改善。


元々いた選手もそうだが、新加入の安藤、テイラー、サイズ、ロシターもディフェンスが素晴らしかったので納得の数値。


ここまで見てきてディフェンスの建て直しには成功したが、代わりにオフェンスが低迷する逆転現象が起きてしまったので来季はディフェンスの質を維持しつつオフェンスの建て直しが求められる。


なによりも3Pで試投と成功率ともに少ないのが最優先で改善すべきで、まずは試投数を増やさないと始まらない。


安藤と小酒部が来季も同じようにシーズン通して入らないとは思えないので、2人が復調すれば3P%が上がればディフェンスも広がってペイント内でもビッグマンが仕事しやすくなるだろう。


​編成


東京は現時点で菊地の退団とテイラーの継続交渉のみと動きは少ないが、テイラーは入れ替えだと思っていたので意外だった。


確かにテイラーは緊急の選手としては申し分ない活躍で苦手なシュートでもチーム上位の結果を残したが、やはりチームのバランスを考えたらゲームメイクとシュート力のある外国人ガードに変えるべきでないかと思う。


カーク、サイズのどちらかあるいは両方を変えてテイラーに合わせた外国人ビッグマンを連れてくるというのであれば分かるが、サイズとカークを東京側から手放すとは思えず、サイズとカーク側から移籍の意向があるのかと思うような動きでありテイラーの交渉継続は意図が読めない。


帰化選手のロシターはキープするべきであり、本人が出たがらない限り残留濃厚だろう。


日本人選手もほとんどが残留濃厚と見ているが、吉井と平岩は他のチームで欲しい選手も多いと思われ、個人的には2人とも東京に残って欲しいがPT目当てに動くかもしれない。


怪しいのは稼働率が低い小島とPTが思ったより貰えなかった笹倉が東京側から放出があるとしたらこの2人ではないかと見ている。


豊富な資金力でマチュワン、トーマスと高ランクの外国人選手を連れてきてワクワクさせてくれた東京だけに今季はランク的には劣るセオドア(テイラー)で少し期待外れだったので新外国人選手が来るのであれば驚かせるような選手ではあって欲しい。