私の住む小さなこの街にも“夜の帝王”と呼ばれる人が何人か存在する。
この街の夜の店を知りつくし、飲みつくしている人。
私の店にも飲みに来るM氏も、その中の1人だろう。
ほぼ毎日飲みに出てるんでは無いだろうか。
先日も来店された。何軒回ったんだろう。既に酔っている。
彼には毎回同じ事を言われる。
「オレはいろんな店を知ってるけど、お前は三本の指に入るくらい良い女だ」
私は笑顔で流す。
“酔っぱらいの話は半分以下で聞く”
夜の世界に入って学んだ教訓の1つだ。
全てをマジメに聞いていたらこっちが持たない。
彼は私を口説いている訳だが、どちらかと言うと“女”そのものが好きなのだ。
無類の女好き。今の時代では絶滅危惧種かも。
いくら酔っぱらいでもそんな事を言われると悪い気はしない。
彼が夜のお姉様にモテる訳だ。誉め上手。
最近の殿方は、誉める事を知らない。
自分に自信が無いんだろうか。
軽くあしらわれてもめげずに口説く彼を見る度に、微笑ましく思ってしまう。
店には様々なタイプのお客様が来店する。
ヤクザなお兄様も例外では無い。
昨年、この街の上のクラスの方々が来店された。
私は誰が誰かも分からないので普通に接客する。
店に走る緊張感。
どんなに偉かろうが、金持ちだろうが、スゴイ人だろうが、私の前ではただの“男”にしか過ぎない。
そんな強気?な態度が良かったのか、惚れられてしまう。
「お前は癒し系だな。そんなお前をオレが癒すよ」
男性に初めて言われた言葉だ。
お客様には、癒して欲しいって言われる事が多い。
みんな何かに疲れている。
でも何に?
…そんな私はどうやって癒えれば良いんだろうっていつも思っていた。
自力回復かな。
他人に頼って癒されたいとは思わないが、私にも誰かの肩に寄りかかりたいと思う時もある。
彼の一言が胸に残る。
しかし彼は…
変に断って十和田湖に沈められたらどうしよう…と思いながら、上手にお断りした。
彼らは私が持つイメージより、礼儀正しく紳士的だ。
チャラっとした、今どきのお兄さんの方がタチが悪かったりする。
この話を友人にした所
「自分の身を守る為にも、強気?な姿勢は辞めなさい」と、言われた。
…悩む。
前向きに検討しておこう。