新年早々、あの人からメール。
「天罰が下った」と。


天罰が下るような罪を犯しているの?
…罪の意識があるんだ。


私の身を心配されたが、天罰らしいものには心当たりが無かった…あの事件が起こるまでは。


1月大安。昼の職場にて事件は発生した。

深夜1時。後輩に叩き起こされる。

「彼が居ません」


全館を捜索するも、発見できず。玄関のカギが開けられている。

イヤな予感が胸をよぎる。

外に出たのだ。

私が一番先輩だ。しっかりしなければ。
後輩達に指示を出し、私は軽装のまま、電灯を片手に外に飛び出す。


…外に広がる世界は、無限に広く感じた。


強い風が、ゆるく結んだ私の長い髪をなびかせる。

風で舞い上がる粉雪。
彼が雪の上に残した足跡を消して行く。
まるで彼の命の炎まで消してしまうかのように。


…お願い…彼を消してしまわないで。

私は彼の名前を叫んだ。

無情に私の声だけが暗闇に響いていた。


…どれくらい探したんだろ。寒さで手と耳の感覚が無い。

ふと空を見上げると綺麗な星空が広がっていた。

澄みきった空気。
空が近い。

オリオン座が見える。


「神様、どうか彼を救って下さい」

普段、宗教とか信仰には全く興味が無い私でさえ、祈っていた。
祈るしか無かった。


…建物周辺では発見できず、近隣を車で捜す事に。

車に乗り込む。気温が表示されている。

氷点下5度。

風が強い為、体感はそれ以下だ。
彼はスウェット一枚。靴も内ばきだ。


涙が溢れそうになる。
このまま発見されなければ…

それは確実に“死”を意味する。

私は自分を責めた。


…深夜2時。幹部、スタッフが集結する。
一斉捜索の開始だ。


私は現場に戻る。私が守らなくてはならない命は彼だけでは無い。


…深夜3時前。

電話が鳴り響く。

道路を歩いていた所を発見される。この場所より数キロも離れている。


安堵で座り込む。
後輩と抱き合い涙が溢れた。


この仕事に就いて10年になるが、こんなに辛い気持ちになったのは初めてだ。

あらためて人の命の重さを痛感した。


“天罰”


あの人の言葉が頭に浮かんだ。

この事件は、私に対する天罰なのだろうか。

どの罪が裁かれたんだろう。


そもそも私の犯した罪とは何?
全く身に覚えが無いんですが。


自分の犯した罪さえ分からない私は、すでに罪深いのかもしれない。