実は先週、インフルエンザに感染して何日か仕事を休んだ。
週初めの月曜、店に出勤すると、お店の先輩が咳きこんでいた。
体調が悪そうだ。
話を聞くと、弱インフルエンザとのこと。
弱?
・・・熱も下がり、ピークは去ったらしいが。
一番感染力の強い時期だ。
私も体調を崩し風邪気味だった為、不安が胸をよぎる。
案の定、深夜悪寒が強くなる。
発熱しそうだ。
明日は今年初のL君とのデートなのに。
朝起きて熱を測ると、37.5℃。
微熱だ。
風邪薬と熱冷ましを飲んで様子を見る。
デートをキャンセルしようかと思ったが、彼の精神状況が不安定だったため、会って安心させてあげたかった。
なんだかんだ言って、私も彼が好きなのだ。
いろんな修羅場もあったが、なんとか乗り越えてきた。
熱も下がり気分も良好。
彼が迎えにきた。
後部座席に座ろう思ったが、彼は助手席のドアを開けてくれる。
彼なりの愛情表現だろうか。
私にはそれが愛情なのか何なのか分からないが。
私は本当は助手席に乗ってはならない人間だ。
非公式な存在。
デートと言っても、ひたすら密室コース。
向う所はいつものホテルだった。
体が近づく程に、彼の体から彼の家庭の匂いがする。
私とは違う匂い。
匂いの向こうに、彼の奥さんと子供の存在が見える。
体は近づいているのに、心の距離が広がっていく。
彼は気づいているんだろうか。
この距離を。
決して埋まることのないこの距離を。
気を取り直してシャワーを浴びる。
バスルームにすべてを置いてくるのだ。
自分の立場も。事情も。何もかもを。
そしてようやく同じ匂いになる。
彼を感じるたびに、彼の寂しさまで感じてしまう。
私は彼の寂しさを受け止められるのだろうか。
彼は私の何を感じているんだろう。
そんな事を考えながら、ぼんやりとホテルのあじけない天井を見つめた。
やはり体調がすぐれない。
彼が気遣ってくれる。
どうしてだろう。急に聞きたくなった。
体調不良で、気持ちが弱くなっていたのかもしれない。
「もし私が急に死んでも、きっと分からないんだろうね」
彼は
「そうだね。知る方法がないもんね」
と答えた。
私は
「そうだよね」
と一言だけ答えた。
・・・本当は傷ついているのに。
彼は愛していると言う。
でも、死んでも気付くことのないこの関係のどこに愛なんてあるんだろうか。
私は、彼に愛されてると思ったことは一度もない。
お気楽で、一時的な愛情で束縛する彼を、どうして私は許してしまうのだろう。
・・・それも、私の弱さだろうか。
もし彼が独身だったなら、私も素直に自分の気持ちを伝えられたのかな。
・・・彼の携帯が鳴る。
職場からの呼び出しだ。
彼は休みを取って会う時間を作ってくれている。
そして私たちはお互いの場所に戻った。
悪化する体調に、すぐに病院受診をしたところインフルエンザと診察される。
やってしまった。
当分、出禁だ。
昼の職場に持ち込んだら、会社をクビになるかも知れん。
厄年第2段?
全身痛と熱で朦朧としながら眠りについた。