天音鈴の人生楽しまなきゃ!! -5ページ目

『ワンドリンクオーダーになります』

ライブの日は あっという間にやってきて、けど、俺はチケットを切りながら それでも納得できずにいた。

なんでこんな奴が人気な訳?

そうしかめっつらで 受付してると いきなり黄色い声が響いた

『譲~!』

どうやら楽屋から出てきたのをみつけたファンが騒いでるらしい。

にわかに 周りも騒がしくなる

『きゃ~!こっちくるし!』

目の前の女の子が 泣きたいのか笑いたいのかわからない顔で叫ぶ

うるさっ、、、

そう感じて ため息をつくと いきなり声をかけられた。

『十瑠、ちょっと』

『は?』

いきなりそう言うと、俺の腕を掴む

『う、、、受付!』

『受付なんて誰かがやってくれるって』

んな ばかな! 大体 オーナーと俺以外 雑用スタッフいないっちゅうねん。いや、オーナーは雑用じゃないけど。。。

『あたし、代わりにやるよ!』

『さんきゅ~。じゃ、あとで楽屋来いや』

『は、、、はい!』

はあ~?なんだそれ? って それでいいわけ?

『それはマズイです!』

『あ~、いいわよ』

『オーナー!?』

オーナーからの神の一声に女の子たちは騒ぐし、俺はひっぱられるし、それをまた僻まれて、、、

だから この人と関わりたくないんです 俺は!

そんな俺の心は 完全スルーで ぐんぐんひっぱっていく手に連れられ、俺は楽屋に入った。

ガチャ。

『なんなんですか?』

とにかく理由が知りたかった。

ここから 一秒でも早く立ち去って 受付に、、、

『あんな場所にいて俺の歌がまともに聴けるわけないだろ?』

『いや、あの、、、バイトなんですけど』

『それは俺には関係ない』

本当にこの人は人間か? あんたに関係なくても、俺にはあるんだよ!全く。

天涯孤独。 これで稼いでますから。

『お前、なんでそんなに働いてんの?学校は?』

は?今度は質問?

『学校、行ってないから。』

『なんで?』

『理由、言わないといけませんか?』

『いいや、別に』

じゃあ 聞くなよ!

さして興味もないくせに そうやって持て余すかのように聞くな。

『じゃ、俺、、、、』

『始まる。』

『始まるって行ったんだ。ここから出て、ステージ袖にこれもって立ってろ』

はあ?

渡された水とタオルを俺は投げつけてやりたかったが、、、

これも バイトと思おう、、、

 諦めて ステージ袖へ歩いた

結局 バイトに収まった俺は 毎日くるあのバンドのボーカルともなんとなく顔見知りになった。
けど、全くそれは 「バイト」と「お客」で、こっちを気にするでもなく 会話もなし。
ま、それは 光栄なことだ。
明らかに 彼の周りには面倒なことばかりが揃っている。

あのバンドのボーカル 「柿坂 譲」

彼のfanが多いことと 彼の揉め事が多いことは ライブがなくてもわかってしまう。

練習の日っていうだけで、出待ちの女の子がいるくらいだった。
正直 彼らのバンドの日は そういった雑用も増えるから なおさら気に入らない。

「十瑠??顔、眉間にしわが入ってるわよ?」

そんな風にオーナーに笑われる日々。

「そうだ!来週 ライブ入れてるんだよね~。けど、大問題」

オーナーはやや呆れ顔で言い放った。

「え??まさか、あのバンド 今のこの状態で ライブやるんですか?」

俺がこの店に面接に来て その日にもめてた女の子は どうやらバンドのドラマーの彼女だったらしい。その日以来 ドラムはなし。それと関係があるのかないのか、ベースの人もあれから来ていない。唯一来て 彼を説得しようとしていたキーボードの女の子は たった今 

「もう、本当に知らないからね!!」

と 去って行ったばかりだった。 

「ねえ、どうなると思う??」

と 俺に聞いてくるオーナーに

「いや、、、それは、、」

どう答えろって言うんだろう、、、、、

ただ、どう考えても ライブなんか無理だってのはわかるから
「その日のライブ、キャンセルにしたほうがいいんじゃないですか?」
と、俺がオーナーに口を挟んだときだった。

「お前、何者?」

それは ここに来て2週間目にして はじめて俺に向けられた言葉だった。


ガンッ・・

オーナーの後ろから 思い切り不機嫌そうに椅子が倒れる音がして 見ると 彼が立っていた。

「さて、俺のライブを中止してくれようって話は どこからきとんねん」

黒い不機嫌そうなオーラを纏って俺を見るその眼に 思わず直立不動になる。

「えっと、、、でもね、譲。十瑠くんの意見は 別におかしいことじゃないと思うわよ??ほら、今は メンバーさえままならないわけで、、、、ねえ、、、」

間に入ろうとしてくれるオーナーを避けてわざわざ俺の前まで来て 彼はこういった。

「十瑠か。。お前 来週のライブ 一番前でみとけよ?」

なぜか 笑いながらそう言い放つと

「オーナー ってなわけで、ライブはやりますから。
チケットもはけてるし、文句ないっしょ??」

という言葉を最後に 彼は出かけて行った。

「なんだ??」

という俺に オーナーが大笑いしながら 確かにこういったんだ

「気に入られたわねえ、、譲に」

そのときの俺には 何がどうなったらそんな言葉が出てくるのかも見当がつかず、ただ 何が起こったのかを判断することさえ できずにいた。

涯孤独って 案外簡単になれるんだなあ、、、と知ったのは 18の春。
両親がともに事故でこの世からいなくなり、親戚の家にとも言われたが、そんな環境に身をおくのも中途半端な18歳の春。
高校の席だけは 親父の妹さんがどうしてもというので置いたまま、俺は何の目的もなく さまようようにして生きていた。

「ん???」

一人暮らしの狭すぎるアパートへ向かう帰り道。
 
いつもなら立ち寄るコンビニを通り過ぎて 足を止めたのは

バイト募集

の紙だった。

「バイト・・・かあ。。。」

そうだ。そんな単純なことすら思いつかなかった。

俺って結構傷ついてたのね、、、、

と 今更ながら 一応の不幸な環境を振り返ると、その紙を引きちぎってドアをノックした

「すみません!あの~・・」

「もう!!最低!!!」

「へ???あ・・・??」

ドアを開けると「いらっしゃい」といわれるはずが、大喧嘩の真っ最中だった。泣いてる女の人。バンドのメンバーらしき仲裁をしてる人。どうやらこの騒ぎの中心らしい男の人。

「あの・・」

「あ~。バイト??ごめんごめん。いや~いきなり最低なところに入ってきちゃったね。ま、これも うちの店のよくある風景だから みなれといて。」

って、、、へ???

パンッ!!

あ・・・・

思い切り良く女の人が男の人を平手打ちして 泣きながらおれのそばを通っていった。

「はい終了~。おまたせ。で??バイト??」

お店のオーナーなのだろうか??今の騒ぎもどうやら慣れているらしく、俺に話しかけてきた

「えっと。。。木村十瑠です。バイト募集の紙 みて・・・」
「あ!採用」
「へ??えっと、、、あの・・」
「イケメンは採用って決まってんの。採用 よろしくね。」
「はあ・・・・」
「じゃ、仕事 説明するわね。」

そんな感じで あっさり採用が決まってしまった。