★第6話 ダイエット《1.明日から》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

1.明日から

 

海が部活を辞めて約3週間。放課後何もやることがない生活が嬉しくてたまらなかった。学校帰りに駅ビルでブラブラと洋服を眺めたり、本屋で雑誌を立ち読みしたり、コンビニに寄って今日のおやつを1つだけ買って、ソファでテレビを見ながら優雅にティータイムを楽しんだり。部活があるのとないのとでは、『ゆとり時間』に雲泥の差があった。

 

おやつを1日1つと制限したのは、おこづかいを考慮した経済的な事情から、プラス過去の苦い経験を教訓としたものだった。中学3年生のころ部活をズル休みして数日間引きこもっていたとき、過食症状態に陥ってしまったというエピソード・・・そうならないための対策だった。

 

ところが実際は「今日は特別」と自分に言い訳をして、2つ多いときは3つ買って帰ることがしばしばあった。元々太りやすい体質のため、活動量が大幅に減少しストレスフリーの生活を続けているうちに、ほっぺにお肉がついてきて、ウエストのくびれが徐々に不明瞭になり、体を動かす際に今までにない鈍さを感じた。

 

“このままじゃいけない”と当の本人も反省し、手遅れになる前に恐る恐る体重計に乗ってみると、なんと4月に身体測定で計ったときよりも3kgも増えていた。3か月で3kg。ぐうたらしたこんな生活をこの先も続けていたら、いったい何kgまで増加してしまうのか・・・。もうすぐ夏休み、少し大人っぽい新しい水着を買って、友達と海やプールに行きたいのに。

 

“やだ!やせなきゃ!!なんとかしないと・・・。エステに行って痩身してほっそりボディーに、ジムに通って筋トレして健康美に、りんごダイエット、おからダイエット、水だけダイエット、プチ断食してみるとか・・・”

いろいろな方法を考えてみたけれど、エステに行く高額なお金なんて持ってないし、ジムに毎日通うのは面倒くさいし、極端な食事制限や変なダイエットをしたら悠一に止められるのは分かりきったことだった。

 

“どうしよう・・・”

お金がかからず、苦労せずに、長続きするダイエット。ネットで検索したり、テレビの情報番組で紹介していたものを思い出したりして、海なりのダイエット計画を作り上げ、使い終わったカレンダーの裏側に黒のマジックで書き記した。

 

『海のダイエット計画2024!夏までに5kg絶対やせる!!』

①毎日ジョギングする

②おやつは1日1個

③炭水化物は摂らない

④夜ごはん抜き

⑤やせるサプリを飲む

 

始めはイスに座るとよく見えるように机の上の壁に貼ったけれど、ドアを開けたとき真っ先に目につくので、ベッドの横の壁に貼り変えた。別に悪いことではないのだから堂々としていればいいものを、悠一に何か言われそうな気がしてソワソワしていると、案の定ダイエット計画はその日の夜には発見され、

「海、その紙はがして下に持って来い。」

と言われてしまった。

「何で?別にいいでしょ。」

海が強気に言い返すと、

「ちょっと話し合ってからな。」

怒っている感じではなかったので、海は悠一の機嫌を損ねないように

「はーい。」

と返事をして計画書を持ってリビングに下りた。

 

テーブルに向かい合って座ると、

「そうだよな。真剣に考えた方がよさそうだな。」

悠一は海の顔を見てそう言った。

「お兄ちゃん、ひどーい!どうせ海はデブだよー!」

「いや、そんなことはないが、自覚してるのか?」

笑いながら言われたので何だか余計にムカついて、

「自覚してるからダイエットするんじゃん。」

と口を尖らせた。

 

「今体重kgなんだ?」

「やだ、教えない。」

「そんなに太ったのか?」

海はほっぺを膨らませてコクンとうなずいた。

「そうだよな、今みたいなだらけた生活を続けてたら、どんどん太っていくよな。オレも協力するから、しっかりと取り組んでみるか?」

海は悠一が反対しないと分かると、

「うん。」

と嬉しそうに返事をした。

 

「何kg太ったんだ?」

悠一はさっきとは聞き方を変えて尋ねてみた。今体重が何kgあるのかは言いたくなくても、何kg増えたのかなら答えてくれることを職場で何度も経験していた。女性にとって体重というのは、それだけデリケートな問題なのだろう。海も世の女性たちと同じらしく、その質問にはすんなりと応じてくれた。

 

「3kgも増えちゃった。」

「いつから?」

「4月から。」

「それならとりあえず、目標は-3kgだな。」

「えー、5kg減らしたい。」

「まあそれは様子を見ながらな。」

「・・・うん。」

「それからこの③④⑤は却下だ。」

「えー何で?」

 

「糖質ダイエットは良し悪しだからな。炭水化物は体内で糖に分解されてエネルギー源になる。それをまったく摂らなければ身体を動かす原動力が低下して、もちろん脳の活動も鈍くなる。ダイエットのせいで生活に支障をきたすなんて、あってはならないことだからな。」

「・・・・・」

「朝と昼はきちんと主食を摂って、夜だけ炭水化物抜きにしてみるか?」

「うん。」

「それから、夜ごはんは食べないじゃなくて、夜はタンパク質や野菜を中心にして食べ過ぎないように気をつければいいんじゃないか?」

「うん。」

「ただ空は育ち盛りだから隣でバクバク食べるだろうけど、それを見ても我慢できるのか?」

「うん、全然大丈夫!」

 

「それから、やせるサプリは絶対に禁止だからな。」

「えー、どうして?」

「そういうものに頼らず、まずは努力して食事管理、運動、規則正しい生活を心がけてみろ。」

「・・・うん、分かった。」

“あーあ、サプリでやせれたら一番楽なのになぁ”

今ここで本音を言うのは止めておいた。せっかく悠一が協力してくれると言っているのだから、それを台無しにしたくはなかった。

 

「あっそうだ。便秘には気をつけろよ。3日出なかったらきちんと報告しろ。それなりの対応をしないといけないからな。」

「えっ?」

海が首をブンブンと振るので、悠一はニヤッと笑いながら、

「海藻サラダとかひじきの煮物とかきんぴらごぼうとか、食物繊維たっぷりの食事を作ってやるからな。」

「なーんだ、びっくりした。」

海がホッとするのを見て、

「それでもダメなら、そのときは分かってるよな?」

「やだってば。」

「じゃあ自分でも水分をたっぷり摂って、お腹のマッサージをしたり腹筋を鍛えたりして気をつけるんだぞ。ダイエットに便秘はつきものだから気を抜かないように。おまえは元々そういう体質なんだからな。」

「うん、ちゃんとする。」

 

海は今までに何回か浣腸された経験がある。お腹は痛くなるし、にゅるっとしたお尻の感触は気持ち悪いし、なによりその行為は乙女にとって恥ずかし過ぎるものだった。自分でやらせてくれればまだマシなのだろうが、悠一が許可するはずがない。もう2度とあんな思いをしないよう、本当に本当に気をつけなきゃと心に誓った。

 

「じゃあ海、頑張れよ。」

「はぁーい。」

「でも無理は禁物だからな。」

「うん。ねぇお兄ちゃん、明日の夜ごはん、ハンバーグとエビフライにして。」

「は?両方か?」

「うん。ダイエットする前に好きな物お腹いっぱい食べたいの。あと、食後のデザートはマンゴープリンと抹茶のアイスね。」

「おまえ本気でやせる気あるのか?」

「だから、本気でやせるために思いっきり食べて準備万端にしておくんだってば。」

「はいはい、じゃあ明日の夜は海の大好物メニューにしておくな。」

「やったぁ!」

 

「オレ海に甘過ぎるよな。言いなりだもんな。」

「お兄ちゃんだって、海にやせてきれいになってほしいでしょ?」

「いやいや、今ぐらいがちょうどいいんじゃないか?」

「そんなこと言って、本当はデブだって思ってるくせに!」

「いやいや全然太ってないだろ。」

「ううん、体重聞いたら絶対にびっくりすると思うよ。」

海はそう言ってから後悔した。

“うまくごまかせていたのに、自分から体重の話題を振ってどうすんのよ・・・“

 

「今のままでポッチャリしてて可愛いぞ。これ以上太り続けたら、ちょっとアレだけどな。」

「アレって何よ!」

「心配だけどなって意味で。」

「どうせ海はポッチャリですよ。あおい先生みたいにやせててきれいじゃないですよーだ。もういいっ!お兄ちゃんなんて嫌いだから、おやすみ。」

海は一方的に話を打ち切って階段を駆け上った。

 

悠一はそのうしろ姿を見て、パジャマの上からでもお尻のあたりがムッチリしているのを感じた。それは最近、おしおきでお尻を叩くときにも感じていた。お尻がひとまわり大きくなったような、肉付きがよくなったような、叩いたときのお肉の揺れがボリュームを増したような・・・。

 

“やれやれ、女性とダイエット論を語るのは本当に厄介だ。医学的な指導はできても、女性の主観と男性の評価はかけ離れていることが多く一向に話がかみ合わない。気まぐれな海のことだから、いつものように長続きはしないだろう。できる範囲で協力はするが、オレが躍起となってやらせることでもない。様子を観察しつつ、変な方向に走らないようにだけ注意しておこう。とりあえず明日はご所望のハンバーグとエビフライでお腹を満たせて、次の日からダイエットスタートだな。”

 

翌日海は学校帰りにお菓子を袋いっぱい買い込んで、夜ごはんまでの間に全部平らげた。

“こんなことしてちゃいけない”というのは自分でも分かっていたけれど、“今日だけだから”と言い訳をして罪悪感を追い払った。

 

ソファに寝転んでテレビを見ていると悠一が仕事から帰って来て、

「おまえ、これ全部食べたのか?」

取っ散らかったお菓子のゴミの山を見て、呆然としながら聞いてきた。

「うん。今日で最後だから、好きな物全部食べておこうと思って。」

「何考えてるんだ?やせようと思ってるヤツのする行為じゃないだろ?」

「でも我慢しすぎるのはかえってよくないから。」

「ふぅ・・・」

悠一は大きなため息をついた。それ以上海と論議を交わすのは止め、夜ごはんの準備を始めた。

 

「海も手伝え。」

ケラケラと屈託のない笑顔でテレビを見ている海に向かって言うと、

「えー、今いいところなのに。」

能天気な返事が聞こえてきたので、

「先にケツ叩いとくか?」

シャツの袖をまくり上げる悠一の姿を見ると、海は慌ててソファから飛び起きた。

「やだやだ、手伝うから。」

名残惜しそうにテレビを見ながら台所にやって来た。

「まったく・・・。」

悠一が海のお尻をバシン!と叩くと、

「キャッ」

と小さな悲鳴をあげて、

「お尻ぶたないでよ。」

と口を尖らせた。

 

そこに空が帰って来て、

「あー腹減った。何2人でイチャついてんの?」

端から見たら、そんな微笑ましい光景に見えるのだろうか?海があのままダラダラとテレビを見続けていたら、きっと今ごろお尻丸出しにされてギャーギャー泣き叫んでいただろうに。

 

空は部活で汗びっしょりだったので先にシャワーを浴び、その間に悠一と海は食事の支度を進めた。エビフライの衣をつけるのを海に任せて、悠一はハンバーグを手際よく作り、フライパンでこんがり焼き目をつけてからオーブンで調理し、その間にエビフライを揚げた。

 

今までは部活で疲れて帰って来たり、受験生だったりという理由から、空や海には手伝わせずに悠一1人で食事の支度をしていた。本音を言えば、それほど広くない台所で2人で作業をするのは効率が悪かったし、指示を出したり教えながらというのはかなり面倒くさかった。夕方の忙しい時間帯には、1人でテキパキとやってしまった方が楽だった。

 

海が料理ができないのは自分のせいだ。母親と一緒に暮らしていたら、我が子の将来を思って小さいころからお手伝いをさせていただろう。そんな思いから悠一は、最近なるべく海と一緒に台所に立つように心がけた。まだ1人で作れるレシピは少ないけれど、悠一がメインの料理を担当し、海はサラダやスープを作ったり、悠一が炒め物や揚げ物をしている間に流しの食器を洗ったりとアシスタントとしての腕前は以前よりも上がってきた。


空に特別料理を教えたことはないのだが何でも器用にこなすし、悠一自身も親から教わった記憶はない。それがセンスというものなのか。海には失礼だが、料理のセンスは皆無のようだ。それでも経験値を積むことで克服できるはずだし、彼氏でもできれば何か手作りしてあげたいと思うようになるかもしれない。

 

海に彼氏?例えばバレンタインにチョコなんて作ったりしたら、オレそれを手伝うのか?いやいやさすがにそれはないよな。そのくらい自分でやるよな。いつか彼氏ができて結婚してこの家を出て行く・・・ここでこうして一緒に暮らせるのは、きっとあと数年だろう。先のことを考えれば考えるほど複雑な心境になってしまうのは、娘を持つ父親的な感性なのだろうか。

 

3人で食卓を囲み、いつもなら夕方あんなに大量の間食をしたら夜ごはんは食欲が湧かないのに、今日は大好きなメニューだからか、作るのを手伝ったからか、明日からダイエットするぞという決意からなのか、ペロッと1人前を食べ終えた。さらにハンバーグの小さいのを2つおかわりして、もちろんエビフライも取り置きしておいた分まで食べた。空と競うようにごはんまでおかわりしている海を見て、悠一は「大丈夫か?」と心配そうに尋ねた。

 

「うん。すごくおいしい。お兄ちゃんのハンバーグ大好き。」

屈託もなくニコニコと答える海を見て、悠一も

「まあ明日から頑張ろうな。」

と納得するようにうなずいた。

 

「何?明日からって?」

空が首をかしげると、

「海、明日からダイエット始めるんだって。」

「無理だろ。」

空は即座に否定した。

「無理じゃないもん。」

海が言い返すと、

「絶対3日坊主か2日坊主か、すぐに投げ出すに決まってる。」

「空ひどい。私そんなに意志弱くないもん。」

「はあ?どう見ても弱いだろ。」

 

ケンカになりそうな2人を仲裁するように、

「毎日ジョギングするって言うから、空も一緒に走ってやれ。」

「やだよ、海遅いから。」

現役陸上部員の空にとっては、足手まといなのは間違いない。

「兄ちゃんがつき合ってやればいいじゃん。」

空に言われて、

「そうだな、オレも運動不足だから体なまってるんだろうな。よし海、明日から一緒に走るぞ。」

「いい。1人で走るから大丈夫。」

海は悠一とジョギングする光景を思い浮かべた。仲良く並んで走るというシチュエーションに憧れる一方で、そのうち絶対に煩わしくなるという確信もあったので、悠一の提案をきっぱり断った。

 

「そうか。まあ自分のペースでやるのが一番いいもんな。でもたまには一緒に走ろうな。」

悠一も夕食のあとはテレビを見ながら一杯飲んでくつろぎたかったので、すんなり引き下がった。30代半ばまだまだ若いしバリバリ働ける世代だが、20代のころと比べるとそれなりにオジサン化現象が進んでいるのは否めなかった。かっこいい役どころの悠一なのでビール腹にはならないが、ついつい自分を甘やかしてしまう傾向が見えつつある今日この頃。

 

 

さて、食後のデザートにマンゴープリンと抹茶アイスも堪能し、お腹いっぱい大満足の海ですが、明日から始まるダイエット生活・・・目標達成してポッチャリ海ちゃんとお別れできるのか、はたまた空が言うように3日いや2日坊主で投げ出してしまうのか。

お尻叩かれながら、頑張れ海っ!! 乞うご期待(*‘∀‘)

 

 

つづく