★第3話 高校生活スタート《1.入学式》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

1.入学式

 

入学式当日。am7:00に起きて7:45に家を出れば8:30の登校時間には充分間に合うのに、2人は30分も早く悠一に叩き起こされた。高校生になったら目覚ましをかけて自分で起きるように言われていたので、7:00にアラームをセットしておいたのに、ピッピッピッという電子音ではなく、「起きろー!」の怒鳴り声とともに掛け布団をガバッとめくられた。

「すぐ下に下りて来い。」

無愛想に言われて、門出の日だというのに最悪な目覚めの朝を迎えた。

 

2人は寝ぼけ眼でリビングに行くと、すでに朝ごはんはテーブルに並べられ、トースターには食パンがセットされていた。

「顔洗って来い。」

またもやいつもより低音ボイスの命令口調で指示された。順番に洗面を済ませると、空も海も徐々に頭が働いて自分たちが置かれている状況を理解することができた。

 

“朝からおしおき!?そうだよね、そうなるよね・・・”

海は先手を打って、

「お兄ちゃん、昨日はごめんなさい。恒先生にはすごく迷惑かけちゃって、海めちゃくちゃ反省した。ちゃんと必要な物を準備しておかなかったのがいけなかったし、夜1人で買い物に行っちゃったのも悪かったって思ってる。」

・・・「だから朝からおしおきはやめて。」

という本音の部分をつけ加えたかったが、それは言わない方が無難だろうと言葉を飲み込んだ。

 

「空は?」

悠一はとりあえず海は怒られる理由が分かっていると判断し、大あくびをして人ごとのように突っ立っている空に向かって尋ねた。

「オレも。」

「オレも何だ?」

「オレもちゃんと反省してるから。」

「何を?」

「宿題やってなかったこと。」

「それだけか?」

「海を夜中に外出させたことも。」

「海を見張ってろ、っていつも言ってるよな。」

 

“海が悪いことをすると、結局オレがとばっちりを受けるんだ。そういうの、もううんざりだ”

空は不満そうに心の中で文句を言った。

「時間がないからさっさと済ますぞ。いいな?」

“朝から最悪だ・・・”

と思ったが、

“朝だから早く終わる!”

という利点を見つけて、空はしぶしぶながらコクンとうなずいた。

 

一方、海は張本人のくせに、「えー」とか「やだな」とか「ちょっと待って」とか往生際の悪いことを言い、悠一をイラつかせ空をも敵に回した。

「そこに両手ついてケツ突き出せ。」

悠一はソファの背もたれを指さした。

「えーーー!!」

2人が同時に叫ぶと、

「本当ならじっくりとひざの上で叩きたいところを、これで勘弁してやるんだから早くしろ。」

 

空はこの体勢に嫌な記憶がよみがえり、悠一を逆上させないように素直に指示に従った。以前幼なじみの航希が夜中に家に忍び込んで来たとき、ものさしで厳しくおしおきされたときの痛みが脳裏に浮かんだ。

“兄ちゃん、頼むから物さし出さないでくれ”

祈るような気持ちで悠一の動きを目で追った。

 

その横で海は、

「えー、恥ずかしいよ。」

今さら何がどう恥ずかしいのか?と思うのだが、いつもとは違う体勢に抵抗があるようだ。

「早くしないと回数増やすぞ。」

海が慌ててソファの背もたれに両手をつくと、

「ケツ突き出せ。」

というどこかで聞いたフレーズが。悠一がわざとたかやんのまねをして言ったのか、こういう体勢にはお決まりの言い回しなのか、海は強烈な竹刀の痛みを思い出し、全身にブルッと悪寒が走るのを感じた。

 

悠一は空のパジャマとパンツを下ろし、左手を腰に当てて体が逃げないように固定すると、右手を高く振り上げた。

バッシーン、バッシーン、バッシーン、バッシーン、バッシーン・・・・・

目が覚めるようなビシッ!とした痛みがお尻に衝撃を与えた。

「よし。先に食べてろ。」

空はパンツとパジャマを上げて、逃げるようにその場を離れた。

 

隣で両手をついて待っていた海は、次は自分の番だと緊張しているかと思いきや、睡魔と格闘しながらコクンコクンと舟を漕いでいた。昨夜なかなか寝つくことができず、外が白み始めるころやっと就寝したのだから2時間ほどしか眠っていないのだろう。

 

悠一は海の頭を軽くコツンと叩くと、

「ほら、おまえの番だ。」

と言って、パジャマとパンツを一緒に下ろしてお尻を出した。今日から高校生。朝からお尻丸出しでおしおきを受けている女子高生がいったい世の中にはどのくらい存在するのだろうか?皆無ではないにせよ、果てしなく0に近いことは間違いない。

 

腰をギュッと押さえられ、

バッチン、バッチン、バッチィーン、バッチィーン、バッチィーン・・・・・

バッチン、バッチン、バッチィーン、バッチィーン、バッチィーン・・・・・

空は10発だったのに、海は50発も叩かれた。

 

解放されて悠一の手が届かないところまで行くと、

「ずるいなぁ・・・。」

とほっぺたを膨らませた。

「何か言ったか?」

悠一に聞かれ、ここで文句でも言えば追加のおしおきが始まってしまいそうな空気を読んで、

「ううん。」

と首を横に振った。

 

2人は朝ごはんを食べ終わると慌ただしく支度を整え、

「行ってきまーす。」

と海は元気に玄関を飛び出し、空はクールに

「じゃあ。」

と声をかけて家を出た。

「やれやれ、まったく朝から一苦労だな・・・。」

悠一はため息をついた。

 

 

空と海が入学する『ぐんじょう高校』は、あまめま駅から5駅。通学時間は約30分。真新しい制服を着て、海はいわくつきの紺のソックスを履いて、先生方から出迎えを受け正門をくぐった。一生懸命受験勉強をして手に入れた憧れのぐんじょう高校。今日から花の高校生活が幕を開ける。海は学校の敷地内に入ると胸が高鳴り、嬉しくて飛び跳ねたい気持ちを一緒に歩いている空には気づかれないようにグッと抑えて、掲示板に貼り出されたクラス発表を見に行った。

 

空1年8組、海1年9組

例年8クラス編成なのだが、今年は1クラス増設して9クラスになるという話は事前に知らされていた。海はその特設クラスだった。クラスメイトの名前を順に見ていったが、知っている名前は1人もいなかった。不安そうな顔をしている海に追い打ちをかけるように、

「9組だって、だっせ。」

こういうときの空はまじでムカつく!海の心情を察して、もう少し同情するような言葉をかけてくれてもいいのに・・・

 

入学式が行われる体育館に集合すると、同じ中学出身の女友達を見つけ海の不安はいくらか和らいだが、みんな別々のクラスだった。そもそもあおいろ中学からぐんじょう高校へ進学した女子は4人だけで、中学時代には顔は知っていたが特別接点はなく、受験のとき一緒に行動した程度の仲だった。ラインやメールの交換もしていなかった。はっきり言ってしまえば、海とは違うタイプのまじめな優等生で、先生からおしおきなんてされたことのないような女子たちだった。男子は10人いて、空は交友関係が広かったので全員と仲が良く、海も男友達といる方が気を遣わず話も盛り上がった。

 

入学式。

校長先生やPTA会長の長い話は退屈であくびが出たけれど、担任がどの先生なのかはしっかりとチェックした。ブラスバンド部の演奏で先生方と合唱部の先輩が校歌斉唱し、今まで小学校や中学校で聞いたり歌ったりした中で一番美しい校歌だと思った。学校紹介のビデオ上映を組み込んだ生徒会長のあいさつは、中学と違って高校って自由なんだ!と思えるような生徒主体のイベントの数々に胸を躍らせる思いだった。

 

入学式が終わると、1組から順に担任に誘導されて各教室に移動した。1組から8組までは体育館を出て右側にある本館へ。海たち9組だけは左側に進み、渡り廊下を通ってさらに奥地にある離れのような旧館へと向かった。海のまわりからは、

「えっ?」「どここれ?」「何で?」「やだー」

と口々に不安を訴える声が上がったが、担任は何も反応せずスタスタと列の先頭を歩いた。

 

創立50年のぐんじょう高校において始めて設けられた9組。例年通りのクラス配置では1クラス分教室が足りずに、やむを得ず旧館の空いている教室を使用することになった。旧館というだけあって建物はぼろいし、まわりの教室は使われていなかったので、2階の角部屋にある1年9組だけがひっそりと孤立していた。

 

ガヤガヤと不平不満を口にしながら全員が自分の席に着くと、教室がもさっと重たい空気に包まれた。学ランの黒がやたらと多く、教室全体を見渡すと女子がポツンとしかいなかった。男子40名、女子8名というバランスの悪い比率だった。みんなまだ初日で緊張しているのか、教室内はすぐに静かになった。

 

今までひと言も話をしていなかった担任が教壇に立ち口を開いた。その第一声は、

「よっ!」

右手を軽く上げ、道端で知り合いにでも会ったかのような軽いノリに生徒たちは拍子抜けし、張りつめていた空気が一気に緩んだ。そういえばこの担任、髪も茶色いしネクタイも派手なピンクのペーズリー柄、左手の薬指には結婚指輪なのかファッションリングなのか存在感のある貴金属が光っている。いくら自由な校風だとはいえ、教師がこんな風に群を抜いて目立っていていいのだろうか?今まで関わりのあった先生にはいないタイプだった。高校教師のイメージにはほど遠い担任に、クラスのあちこちから奇異の目が向けられた。

 

海は

“ひょっとしてピアスも?”

と思って耳元を見てみたが、さすがにそれはしていなかった。

“きっと穴は開いてるんだろうな”

と目を凝らして耳たぶをチェックしていると、

「はい、そこのえっと、窓側の前から4番目の女子!いくらオレがかっこいいからって、そんなに食い入るように見つめないで。」

クラス中の目線が海に集まった。

 

「えっ、違う!かっこよくない!」

海が首をブンブンと横に振って必死に否定すると、

「ん?じゃあどうしてそんなにとろけるような眼差しで、オレのこと見つめていたのかな?」

「とろけてないからっ!」

ムッとして威勢よく答える海をからかうように、

「オレは生徒には手を出さない主義だから、残念だけどその恋心は封印しといてくれ。」

海は口をポカンと開けて、何も言い返すことができなかった。

 

“何なのこの人?頭おかしいんじゃない?”

 

「えっと、君、名前は?」

本当ならプイッと横を向いて無視してやりたかったけれど、高校初日から問題児のレッテルを貼られるのはさすがの海も避けたかったので、

「蓮ケ谷海です。」

とぶっきらぼうに答えた。

 

担任は持っていた名簿と照らし合わせながら、

「海かぁ、いい名前だな。」

しんみりと言ったかと思うと、

「9月15日生まれ、おとめ座。」

いきなり誕生日、おまけになぜか星座まで公表され、

「えっ?」

と顔をしかめた。

“それ、個人情報だし。それになんで名簿にそんなこと書いてあるの?”

 

1人の男子生徒が、

「先生、みんなの誕生日チェックしてるの?」

「ああ。調査書から抜き出してここに書いてある。」

「何で?それ必要?」

「異性を口説くとき、誕生日は必須項目だからな。」

「えー、生徒には手を出さないって言ってたじゃん。」

「バーカ、オレじゃなくて、君たちの手助けをするためだよ。恋愛相談、常時受付中だからな。」

 

みんなが呆れた顔をして担任を見ると、追い打ちをかけるように、

「28才、教師歴5年、今までオレがくっつけたカップル10組。すごいだろ。自称『恋のキューピットティーチャー』だ。そのうちの半分は破滅しちゃったけどな。ハハハハハ。まあ別れたのはオレのせいじゃなくて、当人同士の問題だから仕方ない。」

 

クラス中がドン引きして静まりかえっているのも気にせず、

「それから、男子諸君。君たち40人は今日からオレの同志だ!男には男にしか分からない悶々とした欲望っていうのがあるだろ。特にこの思春期っていうのは厄介だからな。いつでもオレを頼って来てくれ。全面的に協力してやるからな。」

男子はキョトンとしながらも、うんうんとうなずきながら話を聞いている。

 

「あっ、それから女子。恋愛対象じゃない女性の心情は分かり兼ねるので、あまり面倒くさい問題には巻き込まないでくれ。大人の女性の扱いには慣れてるけど、どうもお子ちゃまは苦手なんだよな・・・。相談には乗るけどな。」

女子もまたキョトンとして、「は?どういう意味?」と首をかしげた。

 

“この担任、大丈夫なのか?”

と思いつつも、

“まあよく分かんないけど、何だか楽しそうじゃん”

教室のどこからともなく拍手が沸き起こった。


海は教壇に立っているチャラくていい加減で得体の知れない人物を気だるそうに見つめた。また「そこの君」と名指しされると迷惑だったので、顔ではなくボールペンを器用にクルクルと回す指先を見つめて。

 

 

つづく