中3の第10話 友情とは《1.空と航希》 | あまめま*じゅんのスパンキング・ブログ                        

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第1弾 『海の中のアタシ・空の中のアイツ』
双子の海と空のハラハラ・ドキドキの物語♪
第2弾 『星と月美のいい関係』
星と家庭教師の月美&トレーニングの日々!

    愛情たっぷりのおしおき満載(*'▽')

1.空と航希

 
空の部屋の窓に、何かがカツーン!と当たる音がした。
“ん?何の音だ?”
あまり気に留めず、そのまま携帯でゲームをしていると、再びカツーン!とさっきと同じ音が聞こえた。
“誰かが石でも投げてるのか?”
怖々とカーテンを少し開けて外を見ると、クラスメイトの村沢航希が申し訳なさそうに手を合わせて、空の方を見ていた。
 
“えっ?航希、何してんだよ。もうこんな時間だぞ。電話でもラインでもすればいいのに。”
pm11:00を少し過ぎ、閑静な住宅街に人影はなく、ライトを上目にした車がたまに通り過ぎていくぐらいだった。リビングではまだ悠一がテレビを見ているし、このまま親友を見過ごす訳にもいかずに、ベランダから入って来るうよう手招きをした。航希とは小さい頃からのいたずら仲間で、『探検ごっこ』と称してよく屋根づたいにこの部屋に侵入する遊びをしていた。
 
自分の背丈と同じくらいの塀をよじ登って物置きの屋根に渡り、そこから家の屋根へ飛び移って手すりを乗り越えればベランダにたどり着く。異例の経路ではあるが、そうして空の部屋への侵入が可能となる。さすが航希、もう何年もご無沙汰しているルートなのに、物音ひとつ立てずすんなりと部屋に入って来ることができた。
 
「空、悪いな。母親とケンカして何も持たないで飛び出して来た。」
「おまえ、何やってんだよ。もう11:00過ぎてるぞ。」
「あのくそばばあ、オレのかばんの中を勝手に見て、こんな物を学校に持って行ってるのかとか、プリントちゃんと出せとか、文句ブーブー言い出したから、その辺にあった物を投げつけて「うるせー!」って叫んだら、あっちも負けずに「出てけー!」って言いやがって。」
 
「それで本当に出て来たって訳か?まあガミガミ言われたらそうなる気持ちはよく分かるけど、後のことも考えて行動しろよ。」
「うん。空、本当にごめんな。」
「今ごろおまえの親、焦って探し回ってるんじゃないのか?」
「あんなヤツ、放っときゃいいんだよ。あっ、でもオレの行く所って言ったら、真っ先にここって分かっちゃうよな・・・。」
「ああ。時間の問題だな。万が一よわしとかたかやんに連絡入れてたら、もっとヤバイことになるぞ。」
「オレ、そんなことまで全然考えてなかった・・・。空、どうしよう・・・。」
 
このタイミングで、リビングの電話がけたたましく鳴り響いた。
「うちからだ・・・。」
2人はドアを少し開けて、聞き耳を立てた。
「何だ?こんな時間に。」
悠一は不機嫌そうに電話をとった。
 
「はい、蓮ケ谷です。」
「ああ、村沢さん。」
「えっ?そうなんですか?うちには来てないと思うけど、ちょっと待ってください。空に確認してきます。」
 
「ヤバッ!兄ちゃん上がって来るぞ。航希、クローゼットに隠れろ。」
空は慌ててベッドに横になり、携帯を見ているふりをした。
トントン
「空、起きてるか?」
「あっ、兄ちゃん。今ごろ誰から電話?」
「航希のお母さんからだ。ケンカして家を飛び出したらしい。空、何か知らないか?」
「ううん、知らないけど。オレ、航希の携帯に電話してみるよ。」
「ああ、そうしてくれ。お母さんすごく心配してるからな。」
 
“こいつ、分かりやすい。うそをつくとき、右の方に目をそらすんだよな。もちろん無意識なんだろうけど、おまえのその癖はオレとっくに見抜いてるんだけどな。”
悠一は部屋の中をグルーッと見回した。
“航希のヤツ、どこに隠れてる?この部屋で人が入れる所と言えば、クローゼットぐらいだけどな。”
 
「もし捕まえたら、航希にはとびっきりのおしおきが必要だな。ケツ真っ赤になって泣き叫ぶぐらいにな。」
狭いクローゼットの中で航希は顔を引きつらせ、空は同情して思わず苦笑いした。
「当然、手を貸したヤツも同罪だけどな。」
悠一はひとりごとのようにブツブツ言いながら、部屋から出て行った。空はその大きな背中に向かって、
「まじかよ・・・。」
声には出さず唇だけを動かした。
 
悠一は階段を下りて電話口で何か話していたが、2階にいる2人は血の気がサーッと引いて、その電話の内容を聞き取ることができなかった。
「村沢さん、お待たせしました。まだ発見はしてないですが、確実にうちに来てるので安心してください。後で送って行きます。」
 
航希の母親は悠一に、
「最近息子は、親が何を言ってもまったく言うことを聞かずに困っている。」
と相談を持ちかけた。蹴られたりぶたれたりすることもあって、ほとほと手を焼いていると助けを求めた。
 
「えっ?暴力ですか?それは許しがたいですね。そういうことでしたら、私の方できつめにおしおきさせてもらってもいいですか?お尻を叩かせてもらおうと思うのですが。」
「はい。先生にお任せするので、ぜひお願いします。」
母親の声がパァーッと明るくなり、おしおきの提案は快諾された。
 
“さて、どうするか?このまま逃亡されても困るから、早いとこ手を打つか。”
気配を感じさせないように静かに階段を上り、空の部屋のドアを勢いよく開けると、今まさに窓から逃げ出そうしている航希が目に入った。
 
「こらーっ!」
大声で怒鳴られて、航希は窓枠に足をかけたまま、ビビッて一歩も動けなかった。
「終わったな。」
空も直立不動でポツリとつぶやくと、悠一の顔を見ることができずに首をうなだれた。
 
「よお航希、ずいぶん久しぶりだな。よその家にお邪魔するときには、玄関から入って「こんばんは」ってあいさつしなきゃいけないんじゃないか?中学生ならそのくらいの常識はあるよな?」
「はあ・・・こんばんは・・・。」
航希は蚊の鳴くような声を出した。
 
「さあて、どういうことか説明してもらわないとな。」
口調は柔らかいが、こういうときの悠一は怒りを抑え込んでいてかなりヤバイ、ということを空は経験上知っていた。
「下にいるから、2人とも覚悟が決まったら下りて来い。」
と言って、悠一はさっさと部屋から出て行ってしまった。
 
「覚悟が決まったらなんて、そんなのいくら時間かけたって足りないよな。」
空が航希の方を振り向くと、航希の顔は真っ青で、ブルブルと全身で震えていた。
「おい、大丈夫か?」
「空の兄ちゃん、すげー怖いんだろ?オレ小学校のとき、夏休みの宿題を教えてもらったり、お菓子を買ってもらった優しいお兄ちゃんの印象しかないんだよな・・・。」
「ああ。あの頃は怒鳴ったり、ケツ叩いたりしなかったもんな。」
 
「オレ修学旅行のとき、よわしに何発か叩かれただけでギブだったのに、空の兄ちゃん迫力ありすぎて、あんなおっかない顔して怒られたら、絶対無理だ・・・。」
 
「航希、そんなにビビんなくて大丈夫だよ。そのときだけ目一杯気合い入れて、あとケツに思いっきり力を入れて我慢すれば乗り切れるから。よわしの痛さと兄ちゃんの痛さはちょっと違うっていうか、兄ちゃんが叩くのももちろん痛いけど、ああいう尖った痛みじゃないから耐えられると思う。」
 
「でもオレ、怖い・・・。」
「あまりにも厳しかったら、オレが助けてやるから頑張ろうぜ。それよりそろそろ行かないと、どんどん怒りが蓄積していくぞ。」
 
 
2人が恐る恐る1階に下りると、悠一はリビングのソファに座って、目をつぶって腕を組んでいた。怖いオーラをたっぷりと放出している悠一は、空でも震え上がるぐらいの貫禄だった。2人の方を振り向きもせずに、
「ここに来て、正座しろ!」
と指示され、言われた通り近くまで行って正座をして、緊迫した空気の中で次の言葉を待った。
 
「航希、何があったのか、オレに理解できるように説明しろ。」
航希は家での出来事を、ゆっくりと思い出しながら悠一に話した。しかしそれは、すべて母親を否定するような発言だった。
 
“そんなこと言って、兄ちゃんが許す訳ないだろ。航希、このヤバイ状況、分かってないのかよ。うそでもいいから、反省しているふりをしてくれ。”
祈るような気持ちで空が隣で聞いていると、
「航希自身、悪い所はなかったのか?」
悠一は小さい子供を諭すように聞き返した。
 
「オレも少しやり過ぎたけど。」
「少し?」
明らかに声のトーンが変わった。
「・・・。」
 
「航希!おまえいい加減にしろよっ!さっきから全部親のせいにして、自分はまったく悪くなかったような言いっぷりだよな。」
うつむいて震えている航希を、頭の上から怒鳴りつけた。
 
「そ、そんなことないです・・・。オレが悪かったから・・・。」
オドオドと動揺している航希に向かって、
「今さら遅いっ!」
テーブルをドンッと両手で叩きつけた。
 
「いつまでもガキみたいに反抗期してんなっ!お母さん、電話でものすごく心配してたし、すみませんってオレに何回も謝ってたぞ。親に頭下げさせて、おまえ情けなくないのかよ?その上、全部親が悪いって、どれだけ甘ったれたら気が済むんだっ!」
 
“兄ちゃん、ブチ切れてる。これはかなりの迫力だ”
今度は空の方を向き、
「どうせおまえは航希に同情して、良し悪しの判断ができずに、またいつものように流されて行動してるんだよな。友達を助けたつもりでいい気になってるんだろ?おまえがしたことは、航希にとって何の為にもならないってことが分かんないのかよ。このバカがっ!」
 
“オレの言い分は聞いてくれないようだ。まあ図星だから、反論の余地はないけれど・・・”
 
悠一は「はぁー」と大きく息を吐き出すと、ソファに深く座り直した。そして右手の袖を肘の所までまくり上げて、おしおきを宣告するように「よし」と気合いを入れた。それを見た航希は今にも泣き出しそうな顔をして、空に目線を送った。空は航希の不安な思いを理解し、悠一からは見えないように航希の背中をポンポンと叩いて励ました。
 
 
つづく
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