「ねぇS実ィ~いいかげん告白しないの?私も暇じゃないんだからアンタと一緒になっていつまでもアンタの彼見ていたくないんだけど?」

 
J子とS実は走り込みをしているA男の事を見ている。
 

「ゴメンゴメンJ子・・・もう少しだけネ?お願い!」
「全く・・・彼人気あるんだから他のやつに取られるかもよ?」

顔をしかめるS実。

 

「ハハハ・・・そんな顔しない!しない!冗談だってば」

「実はさ、今度告白しようと思っているの・・・、ほら、文化祭すぐじゃない?」

「ホント!?絶対にうまく行くからさ!がんばってよ!」

 

文化祭の当日、

私はA男を呼び出そうとしていた。

 
するとA男は
「ゴメン!T菜に呼ばれてるから後でな」

 

そう言って走り去っていった。

先を越された・・・。

 

そんな嫌な気持ちが一杯で・・・

行っちゃ行けないってのは分かっていたんだけど、こっそりと体育館の裏についていった。

 
私が、予定していた体育館裏で
隣クラスのT菜がA男に告白していた。

 

すごくショックだった。

T菜を見つめるA男。
少しうつむき加減に答える。
 

「返事・・・今度でいい?」

 

このまま、うやむやにするのかな?

それとも、付き合うって言うのかな?

あんな真剣な顔見たことない。

 

私がしても同じ結果だったかもしれない。

私はさらに私のことでA男につらい思いをさせたくなくて
その日告白するのをあきらめた。

 

「告白されて『返事後でいい?』ってのはさ?
それほどスキでないってことじゃないかな?


「私だったら~、スキでもない人に言われたらどう断ろうか悩むな~~~」

 

ホント慰めてくれているJ子は親友だ。


数日後。
T菜と彼が付き合っていると言う噂を聞いた。

 
「ねぇ~知ってる?隣のクラスのT子とA男付き合ってるらしいよ~?」
K子は情報通だ。誰よりも先にこんなことを言い出す。
情報はほぼ正しいと思っていい。

 

ショック・・・だった。多分、頭の血液を全て抜き取られるくらい血が引いた。

まるで魂でも抜けたかのような脱力感。
杭でも打たれたかと思うほどの胸の痛み。
重い空気。
息が上手く吸えない。

酸素ではなく
鉛で呼吸しているのではないかと思えた。

 
目には温かいものが走っているのが分かる。
涙は止まることを知らない。
グチャグチャになるまで泣いた。
 
K子は
「うそかもよ?」
と言う。

 
K子・・・・・あなたが言っていたことなのに・・・
 
「巻き返しきくかもよ?言ってみれば?」
 

J・・・子?
 

「うん・・・・・」
 

J子は慰めてくれた。

ホント頼りになる。

 
本当に告白するかどうかは悩んでいた
付き合っているのなら結果は見えている・・・
 

でも・・・
告白して今までの関係が崩れるのが怖い・・・

 
今なら友達として接することができる
でも、駄目ならもう声をかけれない・・・
 
そんな悩むとき
別の人から告白された。
同じクラスのB太。
 

「6年のときから時から好きだったんだ」
 

・・・小学校からの友人だ。
そんなこと言われても・・・困る。
B太は友達だもん。

 
友達だもん。
どうしようかと・・・

 

多分結果は決まっているんだ。どうやって断ろうかって。

でも。

 

K子は
「あの人で良いじゃん?かっこいいし、いい人だよ?人気もあるしさ!」
J子は
「断りなよ~、スキでもないのと付き合っても嬉しくないでしょ?」

なんていう。
 
そうだね・・・。
スキだって言うのは
一緒にいるだけで嬉しいってことだものね?

 

B太の告白は断った。
 
学校帰り・・・
彼に告白することにした。

本当に好きだった彼に。
 
「スキ・・・入学したときからずっと・・・」

 
シンプルだけど
今思っている想いを
素直に伝えました

 

すると彼は・・・
ボソッと
「・・・きに言われた」

「・・・え?」

 

「先に言われた~~~今日、言おうと思っていたのに~~~~」
「俺はさ、一年の頃家庭科の授業のとき話してたろ?そん時からかなぁ~」
 
嬉しくて嬉しくて
涙が・・・
 

「でも、あのT菜は?」

「ありゃアイツが流した噂だろ?ヘンタイだよアイツ。」

 

フラれた人は付き合いたいがために学校に噂を流すこともある。

彼はそんな被害者だった。って彼は言っていた。

 

「あの女は俺が困っているのを見て楽しんでんだよ!腹立つよなぁ!」

 

何日かして、またB太がやってきた。

どうしてもあきらめられないんだって。

 

「付きあうったってどう付き合うの?」

「そりゃ一緒に遊びにいったりとかさ・・・」

「じゃあ、友達のままで良いじゃない?」

「だってさ・・・。」

 

そんなやり取り。

私は関わりたくないのに。全く。

人間として嫌いではないけど

アイツと付き合ったってだらだらと友達関係が続くだけじゃない。

 
「オイ、S実にちょっかい出すんじゃねぇよ!!」
A男は
みんなの前でB太を殴り飛ばした。
 
「S実のことは俺が一生守る!あいつに近づく奴はゆるさねぇ」
A男はこんなことを言っていた
 
・・・・・。
 

一年経った頃だろうか?
A男はS実に冷たくなった。

 
会う回数も減り
別れることになった。

 
気持ちのすれ違い・・・
「別れようか?」
ずるずる付き合ったがいい加減に無理。
 
本当は知っていた。
A男に新しい好きな人ができたことくらい。
A男は
「U子が好きになったから別れて」
とは言わなかった。
 

U子と仲良くしているのはみんなが知っている。

なのに。

暗黙の分かるだろ?お前とは終わりさ。そう言いたそうだった。

 

B太が声をかけるようになってきた。
何か慰めてくれていたみたいだけど
そんな気分にはなれない。

 
彼とは付き合えない。

一回断っているんだモノ。
 
そんな時
いつもは意識しないC人君と話すことがあった。
彼は
私の悩みを聞いてくれ
「少し好きかも・・・?」
と、思えた。
 

相談の回数を重ねるごとに私はC人君のことが好きになっていった。
ある日
C人君が私に付き合わないか?と聞いて来た。
返事は一言
「うん!」
彼は最高の存在だ。

 

また、B太だ。

アイツもしつこい。

「アイツはやめとけ」

なんて言うけど、あいつと別れて俺とって言いたいだけでしょ?

全く、嫌なのに付き合えだなんてB太は、いつまでもわがまま言う小さな子どもと一緒よ。

 

受験という影が私たちを襲う。

C人とは同じ高校にはいけなかった。

そのせいか

お互いの気持ちは離れてゆく。

 

「もう終わったな」

 

なんか、別れ際C人も冷たかった。

私のほうがちょっと良い高校に行ったからって。

男なんて所詮裏切ってばかり。

気持ちなんてこれっぽっちも理解してくれない。

 

B太とは同じ高校だった。

全く、アイツは絶対にストーカーだ。

高校生活も、あいつのせいで嫌な思いをしそうなのは不安に思う。

金持ちになるコツはただひとつ。

 

貧乏人に対し、喪に服すべきなのだ。

 

そうだ。

 

わが財産は人々の恩恵のおかげで成り立っているのだから。

 

私は実践している。

 

休日と言う休日。

 

私は黒を身にまとい、日ごろの感謝を忘れない。

 

眼鏡まで黒くするくらいだ。

 

 

人々は私を理解しようとはしないが、

 

私がどれだけ皆様に対し、感謝しているか・・・

 

言葉にできないよ。

 

 

あぁ、また記者がやってきたぞ・・・。

 

私への取材か・・・。

 

これだから、彼らは困るよ。

 

私の言葉をちゃんと理解しているのかね?

 

 

「こんにちは、わらしべ長者の山田さん。今日もハワイですか?肌までしっかり焼いて!」

 

「えぇ、実は傷心旅行に来ているんですよ。」

舞台は昭和33年ごろって所だろうか。
あるところに少年がいた。
 

少年の名は一郎。

小学生になったばかりのわんぱく小僧だ。

 
一郎は両親と3人暮らしで、近所には祖母がひとりで住んでいる。
生計は父の安い給料の他に貸家から収入を得ていたため、
生活は豊かとは言えないが暮らしには困らなかった。
 
この頃、
一郎の父さんは少し贅沢をしてカメラを購入した。

 

真っ黒なデザインのカメラで

見た目よりもずっしりと重い。

 

子どもの成長を撮るのだと張り切り

よく子どもたちが遊んでいる風景や自分達の写真を撮り、
出来上がった写真やネガ(ネガフィルム)を子どもに見せていた。

  
一郎も珍しさからか
カメラを借り、何度も何度も友人達を激写した。
 
ネガはコマ割された透明な薄い膜に
写真の絵が白黒で写っている。
その形はフィルムを引き伸ばしたような姿だ。
 
このネガは子どもにとっては不思議な遊び道具で
幼い少年にとってネガを眺めることは楽しみの一つだった。
 
 
 
一郎の日課は学校が終わった後、
近所に住んでいるおばあちゃんの家に遊びに行くことだ。

 
この人はしわくちゃの笑顔で笑うとても、とてもやさしい人。
旦那も病気で死に
息子は戦いに行っていない。
そんな戦争中
何とかやりくりして家を守った人だ。

そのやさしさはかつて乗り越えてきたものがあるからこそできるやさしさなのかもしれない。

 

一郎からすれば
ばあちゃんの欠点と言えば

写真が嫌いという程度だったに違いない。
 
少年は、この笑うと
しわがよけいに増えるおばあちゃんのことが
大好きだった。
 
少年は
いつも、
二コニコニコニコしながら
「おばあちゃん」
「おばあちゃん」
言って通っていた。
 
おばあちゃんの手をにぎり買い物に行く
それが少年の心に残るおばあちゃんとの思い出のひとつ。
 
少年のわがままを受け止めてくれるおばあちゃん。
大好きなおばあちゃん。
 
あるとき
少年の父が家族3人そしておばあちゃんの
4人でハイキングに行こうと言い出した。
山に生えている野草採り。
 

夕食のおかずにするためだ。

 
父親は写真撮影をしようとしたが
おばあちゃんは

「写真は嫌い」
 

と、そう言い、カメラに収まろうとはしなかった。
 
けれど、その日は
おばあちゃん専属カメラマンに
一郎がついた。

 

「はい、ばっちゃん!こっち見て!こっち見て!!」

 
おばあちゃんの最高の笑顔を撮った主だ。

写真を撮った一郎の顔と言ったら表現できないくらいまぶしい充実感にあふれている。
 

ハイキングが終わった後、フィルムが少しあまった。

一郎は早く撮った写真を見たかったが、

 

「勿体無いからまた今度写真を撮ってからカメラ屋さんで現像してもらおう!」

 

と、一郎の父は言うその言葉に納得しハイキングを終えた。

 

 

野草採りから
ひと月もしないうちに
おばあちゃんは亡くなった。
 
寿命だったのだろう。
 
葬儀の中
『ポクポクポク・・・』
木魚の音が無性に少年の心に響く。
 

葬儀に掲げられる写真を見るものの
最近のものではなく、
少年にはピンと来ないくらいずいぶん昔のものだった。
 
「おばあちゃん・・・」
 
少年は泣いていた。

 

 
葬儀も終わり
数日後。
 

 
学校帰りの少年は物寂しさに気がつく。

 

少年はいつものようにおばあちゃんの家の前を歩いていた。

 
「・・・あの家には誰もいない。」
 

おばあちゃんの家は人が入れないように鍵が閉めてあった。

数日もしたらこの家は他人の手に渡ることが決まっている。

そう看板にも書いてある。

 
少年は大好きだったおばあちゃんが恋しくなった。
どうしてもどうしても会いたくなった。
 
でも、おばあちゃんはもういない。

 

「写真でも良いから見たいな・・・」

 

そのとき彼は思い出した。

 
「写真、写真を撮ったんだ!」
 

少年はおばあちゃんの最後の笑顔を収めたハイキングの写真のことを思い出した。
 

それが一番新しく、最近の写真

まだそのフィルムは・・・
カメラの中に納まったままで現像はされていない。
 
カメラを探しに一郎は急いで帰った。
カメラはいつも父の書斎にしまわれている。
 

部屋は暑くムシムシとしていて少年は汗だくになって探した。

 

「・・・あった。」 

 

汗だくになりながらの満面の笑み。

 
カメラを見つけると すぐに少年は蓋を開け
フィルムを取り出した。
 
『ビッ・・・』
 
フィルムを広げおばあちゃんの写真を探す。

おばあちゃん・・・
おばあちゃん・・・
 
「・・・何も写っていない」
 
何度も何度も
真っ白な欄の中おばあちゃんの写真を探すが

少年の目には見つけることはできなかった。
 
 
何度も何度も・・・探した。
 

 
ネガでもいい
おばあちゃんに会いたかった。
 
ネガでもいい
おばあちゃんに会いたかったのだ。
 
目を細めたり
日光に当ててみたり何度もフィルムを覗く。
 

 

数時間後、仕事帰りの父の言葉で一郎は真実を知った。

 

「お父さん、これ何にも写っていないんだ。絶対におばあちゃんを撮ったのに。」

 

一郎は泣きながら父に訴えていた。

父は何も言わず、一郎の頭をなでフィルムの収められていたフタを閉めた。

 

 

その日からいったい何年の時が経っただろう。

一郎はまた父となり、今ではその祖母と同じ年となった。

 

彼はその後も

いくつも写真を撮ったが

おばあちゃんの最後の写真のフィルムだけは

色あせる事はなく今もなお、心の中にしまわれている。