「爺、もうアノ板捨ててもいい?」
「何を言う!使えるかもしれんじゃろ?」
「でもさ、でかいし邪魔じゃない?倉庫の入り口に20年も放置されていて汚いよ?いき送れにもほどがあるし。」
「いや、いつか使い道があるはずじゃ!」
「板ばかりさ、置いてあるけどこの板だけいつまで経っても使うとこないよ。薪にでもしようか?」
「勿体無い!こんなに良い木なのに!!」
元大工の爺さんは、工具や板を大切に家の倉庫に保管している。
現役を退き20年。昔はよくポチの犬小屋や、タンスなどをこまめに作っていたらしいが
今じゃもう年で機を扱う事もなくなっていた。
そんな爺さんの大切にしている板はいつも倉庫で眠っていたのだけど、
それらは別に使いどころがありそうで良い。
問題の板は厚みが2,3cmと、人の腕よりも少し長そうでかなり大きめ。
その上、倉庫の奥に収めるには大きすぎて入り口に置くしかない。
今じゃ、日曜大工をする人もいないから邪魔で仕方がない。
私が知る限り、ずっと倉庫の入り口に立てかけてあり、倉庫への出入りの邪魔ばかりしていた。
多分今後も使う予定はない。
ある日、爺さんの家にエアコンがやってきた。
そんな取り付け作業の日。
電気屋さんは言うのだ。
「これはハリの下が余ってしまうから取り付けするために何か要りそうだね。」
すると
爺さんは電気屋さんに言った。
「裏の倉庫に使えそうな材料があるから使ってくれ」
と。
すると電気屋さんが持ってきたのは
アノ板だった。
トントントンとリズミカルに打ち付けられていくその板の様子を見て
爺さんのホレ見たことか!と言わんばかりの笑みが脳裏をよぎった。
エアコンの設置も終わり、まじまじと眺めた。
「エアコンの後ろには爺さんのいたがある」
板は何の加工をする事もなく、エアコンに寄り添うように
自然にそのままの姿で打ち付けられている。
爺さんが大切にしてきた板。
板にも運命の出会いがあるんだなって感じた。