小池修一郎の新作にして、現花組トップコンビのさよなら公演です。さよなら公演であると同時に、次期トップコンビの売り出しあり、同時退団者への餞ありと盛沢山。レビュー小屋のスターたちの話なのでレビューシーンがふんだんで、場面場面でさまざまな姿を見せてくれます。が、作品としての魅力よりも、宝塚という宗教における儀式的な構成を強く感じた作品でした。小池作品としては攻めの姿勢が感じられず、テンプレートに当てはめましたって感じが残念。大勢の生徒たちに役を割り振るためかいろんなエピソードが詰め込まれているんですが、それゆえに盛り上がりにかけてしまい、クライマックスもハラハラ・ドキドキがなくあっけなく終わってしまったので、途中船を漕いでしまったことを告白します（って、これ読んでたらぶっ殺されそうｗ）。台詞に内輪受けが多かったことも「ずっと応援してきてくれたファンのための公演」色を強く感じました。ある意味とってもサヨナラ作品。
トップの柚香光はショーダンサーなので、中途半端なレビューシーンではなく、芝居+ショーの二本立て公演にしてどっぷりショースターっぷりがみたかったのが正直なところ。いろんな魅力を見せようと幕の内弁当みたいな役になってしまったがゆえに、結局、どの場面も物足りない、という仕上がり。ファンは嬉しいのかなぁ、これ。星風まどかはミュージカル女優なので、歌にダンスに活躍、器用につかわれていました。とはいえ、トップコンビとしての安定感、スターとしてのきらめきと、「真ん中が似合う二人」なので、作品の出来をねじ伏せてしまうあたり「サヨナラにふさわしい充実期のトップコンビ」でした。
逆に不安を感じたのが次期トップの永遠輝せあ。前公演で二番手になったばかり、という場数の少なさが響いてか、中心のおさまりがまだ落ち着かず「次期トップです」色が薄かったなぁ。二番手としてトップと拮抗する何かを示す前のトップ就任になりますし、個人的には「声細っ、男役というより女の子だね」というのが苦手なので、余計に安定感を感じなかったのかもしれません。とはいえ、不安視されていた生徒がトップになったとたん大化けすることも珍しくない宝塚なので今後に期待です。
現在、公演中止が相次ぎ、スキャンダルまみれの宝塚なので、観ているこちらも「清く正しく美しく」な気分になれないのと、予算がないのがありありとわかる装置や衣装で、夢の世界が戻ってくるのにはまだまだ時間がかかりそうです。
