新国立劇場『ドン・パスクワーレ』オペラパレス | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 ロシアン・オペラを聴いた直後だからか、イタリアの軽やかで伸びやかな声をタップリ堪能。今回のキャストは全員が美声で声量のバランスもちょうど良いのでアンサンブルが心地良いことといったらありゃしない♪ 歌だけでも芝居にも長けたカンパニーなので実に見ごたえがありました! たった3回公演なのが勿体ない!!

 

 若い娘と結婚しようとするドン・パスクワーレをとっちめるお話なので、実質的に舞台を動かしているのはノリーナ。貞淑なおぼこ娘が、結婚した途端にビッチになる変わり身が何とも楽しい。ノリーナの悪乗りが思惑通りトントン拍子に進む小気味良さと言ったら! ラヴィニア・ビーニはコロラチューラもコロコロ転がってて生き生きとしていました。チャーミングな歌役者です。

 

 それを受けて立つのがドン・パスクワーレ。オペラ歌手のコメディって結構ツライことが多いんですが、ミケーレ・ペルトゥージは見事なブッフォ役者。歌だけでなく、お芝居も、顔面に縦線が入ったり、目が飛び出したりする漫画みたいな表現がハンパなくて、思わず笑ってしまいます。台本以上の事をできるって歌役者として凄い才能。表情だけでコメディを成り立たせてしまうのって鳳蘭みたい!!! おかげで、悪者なのに愛らしくて、憎めない♪ いきなりエルネストとノリーナの結婚を認めるだけでなく「幸せになるんだよ!」って素敵なおじ様。ドン・パスクワーレとノリーナ、今後も丁々発止に嫁舅喧嘩を繰り広げてくれることでしょう!

 

 合唱の出番がなかなかなくて、第一幕なんて「来日公演ですか?」なカンパニーですが、マラテスタ:上江隼人が野暮ったくならずに、表現派手目な外来キャストに貼り合っていたし、エルネスト:フアン・フランシスコ・ガテルはトップ・テノールにふさわしい軽やかな美声を響かせまくり&長身でないと似合わない衣装を見事に着こなしていて◎。バス・バリトン・テノールとソプラノとの掛け合いがこれまた聴きどころ!

 

 りかちゃんハウスのような折り畳み式の装置は寓話性を引き立てていたし、通常2分割させてカミシモから登場するキッチンの長テーブル(チラシの写真参照)は、分割することなくシモテから登場。音楽に合わせるので、ミュージカルの舞台転換も真っ青なスピーディな出し入れ。舞台転換も音楽にフィットしているあたり「この演出家、コメディはリズム感が大切なのがわかってる!」と気持ち良かった~。

 

 

【スタッフ】
指揮:レナート・バルサドンナ
演出:ステファノ・ヴィツィオーリ
美術:スザンナ・ロッシ・ヨスト
衣裳:ロベルタ・グイディ・ディ・バーニョ
照明:フランコ・マッリ

【キャスト】
ドン・パスクワーレ:ミケーレ・ペルトゥージ
マラテスタ:上江隼人
エルネスト:フアン・フランシスコ・ガテル
ノリーナ:ラヴィニア・ビーニ

合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京交響楽団