新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』米沢唯×井澤駿 | てるみん ~エンターテインメントな日々~

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 今回はなんと17回公演! 集客を勝手に心配していましたが、三階席後方に若干の空きが見られるくらいで、他フロアはほぼ満席。これって「観たい人は観られるし、劇場としては盛り上がるし、観客としてはベストな状態」ではないでしょうか。今年は、海外からのお客様も目立つ客層ですが、途中退席されてないのが嬉しい(そんなバレエ団もありました)。ファミリーやおデートカップル、観光客たちがお酒やドルチェを片手に談笑しながらロビーをウロウロしているのを眺めているだけで嬉しくなってしまいます。客席はクリスマスの装飾でキラキラ、舞台はゴージャスでキラキラ、客席もいつも以上にキラキラ。新国の客層は舞台の静寂もちゃんと楽しめる集中力の高さが特徴的で、このあたりも他バレエ団と違うところ。

 

 クララ役は6人、くるみ割り人形役は5人。ベテランから若手まで、個性豊かな陣営。日本のバレエ界において、これまでの公演回数、充実したカンパニーは歴史的なことではないでしょうか。幕開きは東フィルの音がまろやか。東京文化会館がYAMAHAピアノの響きだとしたら、オペラパレスってKAWAIピアノの響きみたいだといつも思ってます。柔らかい響きが印象的。第一幕が観ていて飽きない『くるみ割り人形』なのがこのプロダクションの特徴で、音楽と芝居と踊りのバランスが絶妙。子役と大人の使い分けがベストなんです。ミュージカルのようにつぎつぎに場面が展開していくのもストーリーがわかりやすくて◎。初役が見当たらない公演日だったこともあってかダンサーのみなさんの進化を存分に楽しめたのも嬉しい限り。米沢×井澤コンビはいまが絶頂期。ゴージャスさにかけては今回の6パターンのキャスティングの中でもイチオシのお二人でキラキラしまくり。足さばきもリフトも素人目にも超絶技巧の連続なのに、最近は「難しそう」なんて思わせなくなっているのがアッパレ。激しい動きとそれがピタリと止まる時の力配分が絶妙で、力技で止まるのでなく、脱力でタイミングを合わせるのでもなく、音楽に合わせたブレーキぶりが何とも自然で気持ちの良い舞台。その他、セクシー担当、パワフル担当、コミカル担当と、主役級から脇役、はたまたゲスト出演の子役まで、全員か見せ場を過不足なく演じきっているので、目がいくつあっても足りない! コールドなんて「主役ですかいっ」とばかりに拍手が何度も湧き上がってました。神がかった集団プレイでした。

 

 ライブならではのハプニングもあって、ドロッセルマイヤー(今回は白塗りやめた?)の頭上に振り落としの幕が落ちてきた時はドキッとしましたが、澄ました顔で幕をかなぐり捨てているのが印象的でした。本人も同じ場面に出演中のダンサーの誰も笑うでなく、動揺するでなく、でも、内心色んな感情がよぎっているんだろうなと、生の公演ならではの勢いを感じました。生と言えば雪のワルツのコーラスがPAなしなのもお見事。

 

 

【キャスト】

クララ/こんぺい糖の精:米沢 唯
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:井澤 駿
ドロッセルマイヤー:中島駿野
ねずみの王様:小柴富久修
ルイーズ/蝶々:奥田花純
雪の結晶:飯野萌子、廣川みくり  
スペインの踊り:原田舞子、朝枝尚子、中島瑞生 
アラビアの踊り:直塚美穂
中国の踊り:広瀬 碧
ロシアの踊り:木下嘉人
花のワルツ:中島春菜、吉田朱里、渡邊拓朗、仲村 啓

 

【スタッフ】

振付:ウエイン・イーグリング
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術:川口直次
衣裳:前田文子
照明:沢田祐二
指揮:アレクセイ・バクラン
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京少年少女合唱隊

お土産にいただいたポストカード