災害被害の賃貸人の責任 | 司法書士事務所尼崎リーガルオフィスのブログ

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今年は台風、大雨、地震による災害被害が相次いでいます(尋常ではなかった猛暑も災害に入れるべきかもです)。


このような自然災害により賃貸物件に被害が生じ、入居者の個人財産や身体に損害が発生した場合には賃貸人に責任が生じるでしょうか?


原則的には自然災害による損害は人為的なミスや過失ではないため、誰も損害賠償責任を問われません。しかしながら、例外的に賃貸人が損害賠償責任を問われる場合もあります。


■民法717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって、他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。


つまりは、占有者(=入居者)が共用部等に荷物を置いていて、強風でそれが飛ばされ通行者にケガをさせた、となれば共用部に荷物を置いてはいけない前提があれば占有者が損害賠償責任を負います。


しかし、占有者が注意を払って部屋のベランダに設置した洗濯機(洗濯機置き場がベランダに置く設定とされている物件)の一部が強風で飛んで同様に損害を与えた場合には占有者の賠償責任は免除されます。ですが、所有者はこの責任を免れることはできず、無過失責任を負うことになります。


過去の判例では、平成7年の阪神大震災当時に賃貸人である所有者に1億円を超える賠償責任を命じたものもあります。建物倒壊により亡くなった賃借人の遺族らが原告となり争われたのですが、この建物は旧耐震基準時代に建てられたものでしたが、手抜き工事からその旧耐震基準さえ満たせていない状態であり、賃貸人である建物所有者の賠償責任が認定されました。


先日の大阪北部地震でも高槻市で小学生が倒れてきたブロック塀で死亡する痛ましい事件がありました。

建築基準法施行令で定められた基準(ブロック塀の高さを2.2メートル以下とすること、鉄筋を使用し一定間隔で控壁を設置すること等)を満たしておらず、自治体の責任が問われています。


「大丈夫だと思ってた」結果、建物の所有者に大きな賠償責任が生じることがあります。

人が住む建物に被害があれば、人命にかかわります。


今一度建物やその周囲の構造物の安全点検をして、賃借人に安心してもらえるような賃貸物件にする意識が重要と言えます。