(過去記事1)などで言ってきたように,

R4(合格可能性80%)

の定義は不明です.

 

R4の定義には2つ説があります.

(1)R4偏差値ちょうどの人の合格率がちょうど80%(の近似値)

(2)R4偏差値以上の人の合格率がちょうど80%(の近似値)

 

(1)は私が(過去記事2)で書いた統計的処理による決め方です.

(2)は玄人思考さんのブログ記事(2024.4.8)の説です.

 

(過去記事1)(1)でも指摘した通り,成績分布を考慮していない点で,

本来(2)はおかしくて(1)であるべきなのですが,

大手塾勤務経験のある玄人思考さんがおっしゃっているのだから信ぴょう性はあります.

ブログで大手塾を批判するのは意味があると思いますが,受験生や民間の指導者の立場からすれば,

おかしな手法でR4一覧が作られているなら,こちらもそれを込みで考えなければなりません.

 

ただし,ここで注意.ここで想定しているのは地域のトップ校で,上に競合校がいない場合です.

なぜなら,もしも上に競合校がいると,R4よりだいぶ上の生徒はそちらに流れ,R4近辺の人とR4以上の人の母集団として変わらなくなり(1)(2)の差がなくなるからです.

玄人思考さんも最難関校を想定して,難関校以下の場合は合格率は高くなると言っていますので,整合性が取れます.

 

で,最難関校で(1)と(2)でどのくらいの差があるのか考察します.

 

その前に確認ですが,R4でなくR3(合格可能性50%)について,R4と同様に,

(3)R3偏差値ちょうどの人の合格率がちょうど50%(の近似値)

(4)R3偏差値以上の人の合格率がちょうど50%(の近似値)

の2解釈が一見ありえます.

 しかしこれはさすがに(4)はあり得ないでしょう.

玄人思考さんも(4)までは言っていません.

2024年麻布中学でも実質倍率2.26倍だから,1/2.26=44.2%

だから約半分が合格しています.

実質倍率が2.0倍だとすると,(4)の定義だとR3=-∞になってしまいます.

だから(3)を採用することにします.

(過去記事3)でも書いた通り,

 

R3値はR4値より信用できる

わけです.

 

学力偏差値は平均50,標準偏差10ですが,WolframAlphaで計算する時重くなるので,以下は平均0,標準偏差1の基準で計算します.

(過去記事3)より,

(*0) R4ーR3=0.37

と仮定します.

 学力偏差値表記なら

R4-R3=3.7.


(過去記事1)で使ったロジスティック関数

g(x,a,b):=1/(1+e^(-b(x-a)))

を考えます(b>0).

さて,

V(x,R3,b):=∫_x^∞ g(y,R3,b)f(y,0,1) dy / _x^∞f(y,0,1)dy

と定義します.

ここで,f(x,a,d)は(過去記事1)でも出た平均a,標準偏差dの正規分布曲線

f(x,a,d):=(1/(d*sqrt(2π))exp(-(x-a)^2/(2d^2))

です.

V(x,R3,b)は,偏差値x以上の人の合格率を示します.

 

(1)説を採用すると,

(*1) 0.8=g(R3+0.37,R3,b)

が成立し,


(*1)を解くと,R3の値に関係なく


b=3.74674.

 (これは学力偏差値1ポイント上がることで最大37%合格率が上昇することを表します)


(2)説を採用すると,

(*2) V(R3+0.37, R3,b)=0.8

が成立するわけです.
 

 

 

 R3=2 (R3学力偏差値70)の時.

このとき、

V(2.37,2,3.74674)=0.906582...

です.

つまり

(1)の解釈だと,R4以上の生徒全体の合格率は90.7%です

 

(*2)を解くと,(難しいので概算値として)

2.12895<b<2.12900

なので

b=2.1290

とします.(bの値がさっきより小さくなりました。ロジスティック関数の最大傾きが小さくなり、ゆっくり上昇するカーブになったわけです。だから80%合格ラインはR3から遠ざかります。)

そして、

g(2.37,2,2.1290)=0.6873...

となります.つまり,

(2)の解釈だと,R4偏差値ちょうどの合格率は68.7%です.

そして,

0.8=g(x,2,2.12900)

を解いて,

x=2.65115...(50+10x=76.5115)

つまり,

(2)の解釈だと合格率80%ちょうどの偏差値は73.7ではなく,76.5です.(2.8ポイントUP

 

 ここで一つ突込みをいれておくと,R3R4偏差値が70までいくような最難関校とその模試の組み合わせは悪いです.なぜなら合否は順位で決まりますが,偏差値70以上の順率(順位÷受験生数)は正規分布の2.3%から誤差が出ます.その誤差の大きさは偏差値70近辺の人ではなく,偏差値40-60のボリュームゾーンの人たちが決めます.よって,偏差値70近辺のひとがボリュームゾーンになるような模試と入試にあった問題をあたえる志望校別模試の方がより正確に出ます.

 

つづく

 



(過去記事1)

 

 

(過去記事2)

 

 

(過去記事3)

 

『R4偏差値一回よりR3確実に越せ』(過去記事1,2)をはじめとして80%合格可能性偏差値(R4)について話してきた。(過去記事1)ではR4の妥当な統計的導出方法を記載した。ただそれは私の推測で…リンクameblo.jp