流氷の海 ある軍司令官の決断 | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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書名、表紙のイラストを見て海軍の誰か提督のはなしだろうと思った。パラパラ中身を見ると、ムム、陸軍の人とな。よく見ると帯には‘陸軍人物伝’とある。光人社文庫はとりあえず買うことにしている(\100棚限定)ので、とにかく購入。

 

主人公は樋口季一郎。帯には‘ユダヤ難民救出とキスカの奇蹟’とあるが、諜報、外交畑に知悉した‘いいもん’の将軍だ。陸軍では悪役面々の絶対的数が多すぎて、こういう良識派は名が売れていない。著者の相良さんは大正9年生まれの戦中派で、樋口さん本人を始め周囲の人多くへの取材を通して事実を積み上げてゆく。

 

大きなエピソードは、ハルピン特務機関長時代にドイツを追われたユダヤ人に対して陸軍中央の意図に反してビザを発給したこと、北方軍司令官としてアリューシャンのアッツ、キスカ両島への対策、そして玉音放送後のソ連軍の千島列島侵攻の三つ。バチバチドンドンやりあうばかりが軍人の仕事ではなく、軍事的勝利を目指すのは当然とはいえ進むべき正しい道を誤らぬことが最重要だと樋口は示してくれる。

 

平成6年 (原本は昭和48年)

光人社NF文庫

相良俊輔 著

 

購入価格 : \110