硫黄島 太平洋戦争死闘記 | 健全なVINYL中毒者ここにあり

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前回は日本側からの硫黄島戦だったので、今回はアメリカ側から。大量の積ん読本を見渡せば、たいてい関連する話題の本はある。著者のニューカム氏の名前をどこかで見たな、と思ったら、(★)以前紹介したこの本の著者であった方。戦時中から活躍するジャーナリストであったらしく、そのインディアナポリスの沈没‘事件’を最初にスクープした人だそうだ。訳者の田中さんは3500人もいた海軍兵学校76期生とのこと。76期は学校に10ヶ月いただけで終戦。

 

著者が記者として硫黄島にいたのかどうかは文章だけからは判然としない。体裁としては作戦や戦況がどうのという大局的なはなしにはたいして触れず、個々の将兵への取材から浮かび上がる激戦のもようを書き伝える。米軍万歳!のような筆致はなく、日本軍陣地の堅固さ、攻撃の巧妙さ、激烈さがきわだつ。登場人物がどんどん死ぬ。大学をでたばかりの初陣の指揮官は後方から赴任すればするだけ死ぬ。

 

そしてアメリカ側からの本らしいと思えるのが、一連の有名な表紙写真についての部分。写っている6人それぞれの出身地、所属なども明らかにし、その後もしっかりと書く。この写真が撮影されたのはまだまだ島全体の戦闘からみれば序盤も序盤。けっきょく多くは黒い袋に入れられて島を出ることになった。最後にある司令官の言葉が紹介されている。‘ここの土地はアメリカが買い取った地所の中で最も高い不動産だ’と。今から思うと、本当に日米双方にとってムダ以外のなにものでもない戦闘だった。米軍側死者7000名はほとんどが母国に帰れただろうが、日本の将兵20000名はいまだ島の砂に埋もれている。

 

平成8年 (原著は昭和41年)

光人社NF文庫

RICHARD F. NEWCOMB 著 (原題 : IWO JIMA)

 

購入価格 : \108