--シモーネが覚えているのは、『お兄ちゃん』
に連れられて、夜道を走っていたこと。
つないだ手を、決して離すなと言われ、必死に駆けた--
けれど、逃げるように走る理由を、彼女はよく理解できない
でいる--ただ、その『お兄ちゃん』が、自分にとても優し
かったこと、手を離さなければ、苦しみから救われる--
と感じていたことは記憶している。
『お兄ちゃん』は、その当時、12、3歳ぐらいで、シモーネは、
5歳ぐらいだったと、後年になって聞かされた。
彼女達が辿り着いたのは、廃墟のような建物。
--蜘蛛の巣に覆われたキリスト像、ドーム型の天井・・
そこは、老朽化し、打ち捨てられた教会跡だった。
『お兄ちゃん』が言う
今日からここが僕達の家になるんだ
と・・・
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