年若い父親は、出産を無事済ませた恋人と娘のため、
アパートを借りることにした。
質素で小さな部屋だったが、母親にとっては十分すぎる
住まいだった。
--愛する夫と、娘を加えた新婚生活が始まる・・
彼女は幸せの只中に居た。
が--始めのうちこそ家事を手伝い、買い物にも出かけ
生活費を渡してくれていた夫の足は、徐々に遠のいて
いくことになる。
不安に陥る母は、疑問を投げかけるが、釈然としない
説明しか返ってこない・・
そこでふと、夫は笑顔でいるけれど、目が笑っていない
ことに気付く。
やがて彼の外泊が始まり、さらに帰宅する間隔も開いて
いった・・
最終的に姿を消した夫――母は夫の実家の連絡先すら
聞かされていない・・・
不安と恐怖に満ちた瞳で、娘を抱きしめたまま近所を
尋ねて歩く母--夫を見なかったか?居場所を知ら
ないか、と・・そんな母の姿は哀れで、住人達もできる
ことなら見つけてあげたいが、どうにもならないことは、
誰しもが感じていた・・
ある日、何も手に付かなくなった母は、お腹を空かせて
泣きじゃくる娘を放り出したまま、床の上に茫然と座り
込んでいた。
激しい泣き声を聞きつけた住民は、虚ろな瞳の母を
目の当たりにし、彼女にはもう子供は育てられない、
と判断、やむを得ず警察を呼ぶのだった・・
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